JAの活動:農協時論
【農協時論】「バック to ザベイシック」 小さな協同から我がJA意識を 田中均・JA松本ハイランド組合長2024年2月15日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は長野県のJA松本ハイランド田中均組合長に寄稿してもらった。
田中均 JA松本ハイランド組合長
「バック to ザベイシック」(全中経営ビジョンセミナー、奥村慶応大学名誉教授)という言葉が脳裏に焼き付いている。そこで、「JAの原点とは?」と自分に問うてみた。昭和22(1947)年の農協法、いやもっと遡った明治33(1900)年の産業組合法、それとも二宮尊徳の報徳社だろうか。法律は農民が作ったものではないし、二宮尊徳の言っていること、やっていることはすばらしいが、会ったことがないので実感がない。
私の中の原点は、宮脇朝男(1970年前後の全中会長)かもしれないと思った。「食管制度を守るには農民自ら生産調整をすべきだ」と、反対運動真っ盛りの中自らドロを被った人。
また、「農協は、いつの時代でも自助を土台とした共助の組織。自らを助け、自らが立っていくという決意の上にお互いが手を握って共に助け合っていく。そこに農協の協同組合たるゆえんがある」と言った人。では、自助を土台としない共助とは...と考えてみた。それは、「もたれあい」であり、その先は「共倒れ」。「もたれあい」の共助ではだめだということであり、自助の不足を補うのが共助であり協同であるとの教えと受けとめた。
ところで、JAグループでは盛んに(政府の「農協改革」に対して)「自己改革」という言葉を使う。ここでいう「自己」とは誰のことを言うのだろうか。「自己改革」は、(常勤の)役職員が組合員の声を聴き実践するものだとされている。ある意味正しいと思うが、構成員である組合員は声を上げるだけで良いのだろうか。
例えば、「自己改革」の一つとして支所(支店)の協同活動が大事であり、その中心になるのは支所長だと言われている。しかし、支所長が組合員を主役にしたシナリオを書くことはあってもいいが、自身がリーダーとなることは職務であり、組合員にとっては「お仕着せ」の協同活動になってしまわないだろうか。支所の協同活動のキーパーソンは地区選出の理事であるべきだと思う。なぜなら、地域に住み地域の課題、組合員の願いを一番知っているのが地域の組合員の代表である理事だから。また地域の理事は「議員」ではなく、非常勤ではあるが「執行者」の一員である。地域の課題への取組みはある程度理事の裁量に任せ、常勤役員は地域への支援と地域で解決できない課題解決に取り組むのが努めだと思っている。
JA松本ハイランドでは、こうした方針のもと2年前に支所担当理事が中心となって運営する「支所協同活動運営委員会」を立ち上げた。この委員会は、たんに「議論」する場ではなく、地域の「食と農」に関する課題解決のために「実践」することを目的とし、予算措置も講じた。また、現在JAの基盤組織である農家組合のあり方の見直しを進めている。その狙いは、JAからの情報伝達を主とする組織から、地域での自主的な活動をする組織へ衣替えを図ることにある。
JAには、「小さな協同と大きな協同がある」...と言ったのは亡くなった松岡公明さん。「小さな協同」は、地域での顔の見える協同であり、民主的運営・組織基盤強化に貢献する。「大きな協同」は、スケールメリットの追求であり、事業基盤・経営基盤強化に貢献する。どちらか一方だけではだめで、そのバランスが大事だと思う。「小さな協同」により「我がJA意識」をもった組合員が増えることは、さらなる経営基盤強化につながる。
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