JAの活動:農協時論
【農協時論】基本法の危うさ 論点をぼやかし至らなさを憂う JA福島中央会最高顧問・菅野孝志氏2024年5月9日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、JA福島中央会、JA福島厚生連最高顧問の菅野孝志氏に寄稿してもらった。
JA福島中央会、JA福島厚生連最高顧問 菅野孝志氏
4月19日、改正食料・農業・農村基本法は12付帯決議を添えて衆議院を通過し参議院に送付された。型通りの議論と公聴会が開催されパフォーマンスは整ったが、「国民理解」への議論と日本国の立ち位置方向感を明確にする深掘りは出来たのだろうか。
私は、法律は苦手であるが、改正食料・農業・農村基本法の全条文注釈を付けながら初めて読み解くこととなった。問題は、条文を実現する具体的な施策が、どれだけ議論され国・県・市町村・国民・農家の腑に落ちたかである。条文の中に国民理解を大上段に構えても見えてこない。日本国の食料・農業・農村にどう向き合ってほしいのかを体験や実践で感じたまま投げかけたい。
1977年リンゴ矮化栽培研修会で15日間ヨーロッパ5カ国を訪ねた。スイスゲッティンゲン試験場と周辺の農村にある昼食レストランは、山間の景観と牧草・酪農などのコントラストが最高であった。道路は、地域の老人が道路清掃要員として配置され役割を担いごみ一つない。子供たちもリンゴを頬張りながら歩いていた。リンゴの中芯をポケットに仕舞い込んだ。聞くとごみはポイ捨てしないで持ち帰るんだと言う。すごく清々しい思いになったことを思い起こした。スイスと言う国の立ち位置を子供もしっかり捉えている。なんて素晴らしいのだろうか。自らの国に対する誇りと愛は、継承の歴史と教育の何物でもないと思う。
私は10年近く早朝ウオーキングを続けているので、ポイ捨てごみの多いことに気付き心を痛めていた。4月早々に地域の主要幹線道路(農道)に水路に水田に、捨てられた栄養剤の瓶、コーヒーやジュースやビール缶、ペットボトル・蛍光灯・野外バーべキューに使用したであろう小型のガスボンベなど家内と2日掛けて拾い集めた。瓶缶の類は、ロータリーによって粉々に割られる。清らかな水田とは程遠く危険だらけの農地にしてはならない。また、知らず知らずのうちに環境汚染に加担するプラスチックコーティング肥料問題や幼稚園PTA会長時代に恒例になった田植えで子供たちが元気にはしゃぐ姿が脳裏をよぎった。軽トラック荷台に満載のポイ捨てごみ、日本国に対する配慮、他人への配慮さえも置き忘れて来た日本。6月と11月の全市一斉清掃の日も良いが、今の時期(春先)農地のごみが見えて拾いやすいので皆で拾いましょうよと町会総会にも提案した。エリア内の清掃ごみ拾い地図も作成して頂くことになった。隠れ場のない今の季節こそ、住民参加による清らかで豊かさのある美しい日本への一歩踏み出す日和である。
さらに、4月20日NHKの「新プロジェクトX」三鉄(三陸鉄道)を楽しみに視聴した。東日本大震災の直後にもかかわらず、今動かせる所から運行させるという決断と子供たちが通学する日のために草を刈り、少しでも三鉄の沿線を綺麗にしたいと頑張る地域の人。我が心の支えと感じ駅舎のベンチを綺麗に掃除し続ける人。軟弱土質に難航する工事、三鉄再開への熱き思いを工事現場の方々に一本のコーヒー缶を以て託す人。置き忘れ去られた日本の心、原点とも言うべき映像に涙腺が緩んだ。
改正食料・農業・農村基本法に環境保全への取り組みや農村振興に関する条項は多くなった。ヨーロッパからの直輸入のみどりの食料システム戦略やコロナ禍で芽生えた食料・農業・農村への回帰。本物にするには、日本における農業の立ち位置をわかりやすく組み立てることである。農業の持つ力は、底力である。美しい日本(耕された農地、治山治水の国土)世界に貢献する日本(他国の資源を収奪しない。自国の資源を最大限に活用した食料生産等)の礎である。食料自給率の明示も無く12の付帯決議は、論点をボヤカシ総花化させた。とりわけ人材育成(教育・倫理)への思いの至らなさを憂うるのである。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日