JAの活動:挑戦・地域と暮らしと命を守る農業協同組合 女性がつくる農協運動
【新春問答】変わろう!変えよう!農村女性が輝く社会へ 大金 義昭氏×姉歯 曉氏(3)2019年1月22日
女性が働ける環境を
参画でJAが変わる
JA改革というのであれば、それは、それまでの歴史の中でどこから踏み間違えが生じたのかを徹底的に検証すべきです。JAはこういう時期だからこそ、もっと細かく農家に入り込んで、そしてもっと闘う農協になってほしいと思います。これまで、なぜ農業も農家女性も守ってくることができなかったのかを反省する必要があるのではないでしょうか。
 大金 お話を聞きながら思い出したのですが、「農産物自給運動」が直売所の立ち上げに、さらにJAのファーマーズマーケットの事業展開へと発展してきた経過がありますね。6次産業化も、その延長線上に位置づけられる。これらの先鞭をつけたのが、みな女性でした。その過程で女性自身もマネジメントやリーダーシップを学んでいます。
 政権党との関係でJAグループがしんどい思いをしているのは、第三者から見れば「自業自得」じゃないかといった声もありますが、JAグループの中でもそれをよしとしている人は少ないでしょう。男女共同参画ではJAグループも努力を重ね、平成元年に女性で理事・監事を務めていた人が48人。それが現在は1300人を上回っています。
姉歯 30年弱で50人程から1300人というのでは、まだ少なすぎます。女性が農業の支え手として占める割合は5割ですから、本来は2人に一人は女性であるべきです。意思決定の段階に関わることができる女性の割合を5割程度まで早急に引き上げていくことを試しにやってみる必要があります。
大金 理事・監事などJAの役員に「女性枠」を設けるのは、それこそ差別だと唱える男性役員もいたんですが、私は、JA組合長の3割くらいが女性にならなければJAは変わらないと言い続けてきました。意識が変わり男女共同参画が進めば、JAの底力は間違いなく倍増する。ただ、そこに到るプロセスが見えてこない。だからと言って、断念したり放棄したりはできない。『農業協同組合新聞』もJA女性組織特集号を組み、重ね重ね男女共同参画を唱えてきました。
 姉歯 私も、そういうJAの取り組みに期待したいと思います。ただ、未だに女性の子育てと家事労働時間の負担は、農家に限らずとても大きいのです。その状態から解放されないと理事の仕事もできないですよね。
 家の中の制度を変えるには、どこから手をつければいいのか分かりませんが、まずは経済的な自立を図ることから始めるべきでしょうね。
 JAはここになんとか力を尽くしてもらいたいのですが。
大金 「家族経営協定」を結んだり、直売所での売り上げを自分の口座に入金したりと、緩慢ですが女性の地位は確実に向上している。それでも伝統的な女性観や家族観が壁になり、大胆な改革ができずにいるのが現状です。
戸から個へ意識改革
まず経済的自立から
姉歯 つまり、女性の自立には経済的自立が必要だけれども、それを実現するには意識改革が必要ということですね。そうであれば、やはり、JAには、農家の手取りをどう増やすかだけではなく、女性に育児や介護を押し付けようとする政府財界の意向に対しても、「農家の女性の自立をはかるためにもNOだ」と言ってもらいたいと思います。農業を守るために女性を守る、JAにもそういうパラダイムシフト(ある時代の集団を支配する考え方が非連続的・劇的に変化すること)が必要ですね。それは個々の農家にも必要とされるものですね。
大金 変革期の大切なキーワードであり発想ですが、容易にこれが実現できない。
 姉歯 みんな、暮らしが不安定になりすぎて守りに入っているんです。農家でも個人商店でも、自分の代だけ生きていけたらいいと考えるようになってきているところまで追い詰められているように思えます。でも、若い人たちは決して保守化しているわけではありません。学生たちに聞いても、皆、農業は大切だし、農業をなくしてはいけないと思っています。
 同時に、世界から孤立するのもよくないとも言っています。グローバル化は決して悪いことではありません。情報が行き来し、人権をめぐる問題も、地球環境の問題もわたしたちに地球ベースで考える機会を与えてくれました。でも、グローバル企業が利益を独占する状況には賛同できません。
 かつての農家女性がそうだったように、今の若い農家女性たちも、自分がやりたいことをみんなで実現させたいと思っているはずです。農協は協同組合です。「一緒に頑張っていきたい。連帯したい」と考える農家女性たちの間に細かく入っていって、みんなで勉強しながら課題はどこにあるのかと考え、行動につなげる中心軸にならなければならないと思います。
 大金 成長経済の限界が見え、定常経済への移行が語られ始めているなかで、このままではいけないと、何かオルタナティブな生き方を新たに探し求める人たちが増えてきています。こうした動向を協同組合としてしっかり受け止め、JAグループがいま取り組んでいる「自己改革」の一環として男女共同参画の流れをさらに加速させれば、明るい展望を切り開くことができるんじゃないか。
 JAが協同組合としての底力を発揮するためにはやはり、輝く女性が活躍できるような組織・事業・経営体にしていかなければならない。そのためにも、姉歯さんの新著をぜひ多くの人に読んでいただきたいと思います。
姉歯 ありがとうございます。
【略歴】
(あねは・あき)
駒澤大学経済学部教授。経済学博士。経済理論と経済学の解析手法を用いて消費・くらし・女性の問題、農村女性の歴史的分析。著書に『「豊かさ」という幻想―「消費社会」批判』(桜井書店)、『農村女性の戦後史』(こぶし書房)など。
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