JAの活動:第44回農協人文化賞
【第44回農協人文化賞】試練乗り越え協同に敬意 営農経済部門 熊本県・JAかもと会長 大仁田勲氏2023年12月18日
多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞の表彰式が11月30日に開かれました。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載します。
JAかもと会長
大仁田勲氏
鹿本農業協同組合は、平成元(1989)年に管内6市町の農協が大同団結し発足しました。当JAは熊本県の北部に位置し、東部は阿蘇外輪山系を有する中山間地、西部並びに南部は菊池川・合志川流域に広がる平野部で自然豊かな地域です。中山間地では栗・タケノコなどの特産品、菊池川流域を中心とする水田地帯、平たん地ではウリ類・野菜を中心とした施設園芸、露地野菜、畜産と様々な農畜産物の供給基地となっています。
私は農業高等学校卒業後、1年間の農業研修を経て19歳で親元就農し、普通作を含め露地野菜、施設園芸を主に専業農家として農業に携わってきました。
平成20(2008)年から部会員794人のJA鹿本園芸部会の部会長に就き、当時、農協共販もしくは市場流通が主であった「農畜産物の販売・流通の選択肢を広げたい」また、「農家所得を向上させたい」との思いで、「地産地消の拠点」「消費者とのふれあいの場提供」として農畜産物直売所設立に向け、部会員共々汗をかきました。そこで直売所開設の鍵となる地元生産者に「協同組織の集結」と「消費者と生産者のかけはし」の趣旨について生産者集会等で説明し、平成22(2010)年地域の念願であった地産地消の拠点JAかもと「ファーマーズマーケット夢大地館」をオープンするに至りました。
さらに、これから深刻な問題を迎える農業者の高齢化とより安心・安全で高品質な農産物を消費者に届けるための対策としてウリ類選果場再編計画にも着手しました。
当JA管内の農業経営形態は、そのほとんどが家族経営で農産物の選果・こん包・出荷に労力が奪われるなど一部の農家は夜半まで出荷準備作業等に追われ、本来の肥培管理・耕作面積の維持に支障をきたしていました。平成26(2014)年に関係機関等のご支援も賜り、広域的に再編・集約し、糖度・空洞検査装置等を備えた省力かつ先進的な選果施設として二つのウリ類選果場(総工費23億6900万円)を整備することができ、現在は当JA販売高の過半をウリ類生産が占めるまでになりました。
地域担い手育成センターでのスイカ栽培研修
また、私がJA理事を経て組合長に就任する頃より、管内の新規就農者は年々減少の一途をたどり、歯止めがかからない状況にあります。これまで管内の自治体等と連携し、あらゆる対策を講じてまいりましたが決め手を欠いた状態が続いています。そこで、以前より計画していた、明日の農業経営者を育成するための研修施設の設置に向け当JAが主体となり事業に着手。研修用農地の確保から研修生募集など関係機関・JA役職員等からの絶大なる協力をいただき、平成30(2018)年にJA鹿本「地域担い手育成センター」(敷地面積6773平方m ビニールハウス面積4096平方m 座学研修施設66平方m 定員6人、研修期間原則1年、学費等無料)を発足するに至りました。
発足後、これまでの5年間(令和4(2022)年度まで)で22人の明日の農業経営者を輩出することができました。また、育成センター発足以来一人も欠けることなく営農を継続しており、この事が私自身のJA人生で誇りに思う代表的な一つになっています。
また、管内農家の高齢化が進行する中、家内労働を主として外国人技能実習生の受け入れや近隣地域に臨時的雇用を求め労働力の確保を図っておりますが、安定確保が喫緊の課題となっております。
そこで、高齢農業者には比較的困難とされる農作業の一部をJAが受託する農家支援組織(援農隊)を組織しました。この取り組みは、農家支援に自ら志望した比較的若年層のJA職員等で構成され、高齢農家等のビニールハウスの被覆資材展張を主な任務として令和元(2019)年より取り組みを開始しました。
この援農隊活動の目的は、後継者がいない概ね70歳以上または、被覆作業困難な農家に対してこの支援を実施することで、ビニールハウス展張が出来ないため作付けを見送る、または離農を決断される農家を減らし農業経営を継続していただくことにあります。今後も雇用確保の根本的対策にはつながりませんが、一戸でも1年でも末永く営農を継続していただく環境づくりを支援したいと考えております。
最後に私自身、多くの組織、関係者の皆様方に支えられ今日を迎えております。
未曽有の災害となりました熊本地震の折、全国各地のJAを含む各企業団体等の皆様よりの温かいご支援に対し心より感謝申し上げます。私も就農し、農協運動に携わって50年、幾多の気象災害にも遭遇、農協事業に於いても組織再編・自己改革など多くの試練を乗り越えることが出来たことも、多くの皆様のご支援ご協力があってこそだと思います。現在、農業・農村・JAを取り巻く環境はかつてない厳しい中にありますが、〝相互扶助〟の理念の下、この試練を共に乗り越えていくことを祈念いたします。
【略歴】
おおにた・いさお
1955年2月生まれ。73年就農。2008年鹿本農業協同組合園芸部会長。14年鹿本農業協同組合理事。17年6月鹿本農業協同組合代表理事組合長。21年6月〜23年熊本県農業協同組合中央会・連合会代表監事。23年6月鹿本農業協同組合会長理事、現在に至る。
【推薦の言葉】
未来の農業に「夢」
大仁田氏は就農後、鹿本地域における主力作物または特産品としてふさわしい作物は何かを探求。ウリ類の栽培技術を極め、とりわけスイカの安定生産と販売市場開拓に秀でた才能を発揮。2008年に鹿本農協園芸部会の部会長に就任し、10年のJAかもと「ファーマーズマーケット夢大地館」のオープンに貢献した。
14年にJAかもと理事、17年には代表理事組合長に就任した。また組合長職の傍ら熊本県農業協同組合中央会、熊本県経済農業協同組合連合会、熊本県厚生農業協同組合の代表監事、農協連合会の関連組織・会社等の役員としても農協運動の発展にリーダーシップを発揮した。14年の理事就任後、農業後継者を育成するため鹿本地域初の農業担い手育成施設の設立に尽力し、18年にJA鹿本「地域担い手育成センター」発足に貢献した。
当組合の主力作物であるウリ類、とりわけ大玉スイカの奨励対策を組合長に就任した2017年より実施した。農家労働力の支援に取り組み、農作業の一部を受託する農家支援組織(援農隊)を立ち上げた。
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