JAの活動:第44回農協人文化賞
【第44回農協人文化賞】「幸せ満タンJA」追求 営農経済部門 愛媛県・JA愛媛たいき組合長 菊地秀明氏2023年12月19日
多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞の表彰式が11月30日に開かれました。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載します。
JA愛媛たいき組合長
菊地秀明氏
現在、日本農業は危急存亡の秋(とき)を迎えているといっても過言ではない。「いくら頑張っても、赤字が増えるだけ。何とかならないか。助けてもらえないか!」地元の国会・県議会議員・首長を招いて開催した農業振興懇談会で、日頃明るく話す青年農業者が訴えた悲痛な叫びに、胸が締め付けられる思いであった。
資材価格の高騰をはじめとする生産コストの大幅な上昇に反し、販売価格が低迷したままでは農業生産が継続できるはずがない。食料危機が現実の問題となるなかで、国民理解のもと抜本的な所得補償制度による健全な農業経営の確立を急がなければならない。若者が希望をもって農業にいそしめる社会の実現こそが、我々農協人に課せられた使命と考える。
国の支援に頼るだけでなく農協は? ということで、令和4(2022)年度3000万円の事業分量配当を実施した。5(23)年度も同額の助成を予定している。この財源は平成30(18)年西日本豪雨災害の経験から創設した「農業経営支援積立金」5億円から取り崩して支出している。この積立金は、近年多発する気象災害と農協経営の厳しさから、いざという時に備えて立ち上げたものであるが、早速役立てることができたのは不幸中の幸いであった。
農業振興懇談会で窮状を訴える青年農業者
さて、平成30(2018)年豪雨災害は管内を流れる肱川が氾濫し、流域の農地・農業施設・住宅・建物が水没、一帯は見るも無惨な状況となった。この時最も痛切に感じたことは、組織の有難さ素晴らしさであった。
女性部の皆さんが炊き出しで被災者支援をして頂く一方、復旧・復興にいち早く立ち上がったのは青壮年部の若者たちであった。自らも被災しながら仲間のハウスの片づけを手伝う等、我々は水害などには負けないぞ! その姿・言動に皆がどんなに勇気づけられたことか。また、被災を免れた地域の組合員からは農協支援の募金までして頂いた。そして、県内の農協・連合会はもとより全国の関係団体からたくさんの人的・物的支援を頂いた。改めて助けて頂いた全ての皆様に感謝申し上げるとともに、地域の農業を守り育てることが恩返しと信じ邁進しているところである。
組合長就任時、「原点回帰」を打ち出した。農協はもとより人の組織であり、組合員・役員・職員が合併時に掲げた目指す姿を再確認し、それぞれの役割をしっかり果たしていこうということだ。
農協マークを商標登録し、それを旗印に「食べ物と命の絆で幸せ満タンJA」を目指している。今、いろんなところで組合員に訴えている。「この危機を乗り越えれば必ず農業の時代がやってくる。先人を見習い、しぶとく・したたかに・しなやかに生き抜いていこう」──自分自身にも強く言い聞かせている。
【略歴】
きくち・ひであき
1953年10月生まれ。76年京都大学農学部卒業、就農。80年4月長浜青果農協入組。98年同農協参事。99年同農協が愛媛たいき農協に合併。06年代表理事専務。13年代表理事組合長、現在に至る。また、15年〜19年愛媛県農協中央会副会長。22年6月から愛媛県農業協同組合中央会代表監事。
【推薦の言葉】
圧倒的な熱意
菊地氏は、1980年に長浜青果農業協同組合に入組し、98年に参事に就任し、99年の大洲市と喜多郡の5JAによる広域合併を組合員の理解のもと実現した。
愛媛たいき農業協同組合の発足時には、長浜支所の基幹支所長となり、特産品であるミカンやキウイフルーツ等の振興に大きく貢献した。その後、総務部長、参事として役員を補佐し、2003年6月に常務理事、06年6月に代表理事専務に就任。この間、地域の組合員の期待と信望を受け卓越した知識と経営手腕を発揮し、組合発展のため健全経営、ガバナンスの強化に取り組むとともに、支所再編・経済事業改革により、経営基盤の強化と組合員や地域住民の利便性向上に取り組んだ。
13年6月に代表理事組合長就任後は、「食べ物と命の絆で幸せ満タンJA」を目指して、「生き生きたいき作り」の運動展開を行い、「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」を行動指針に、先を見通した経営判断と圧倒的な熱意で地域の農業振興と協同組合活動に取り組んでいる。
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