JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」
家族経営で農地を守る 福岡県糸島稲作経営研究会を訪ねて(2)稲作と酪農 二人三脚で2025年2月4日
全国稲作経営者協議会に参加する福岡県稲作経営者協議会の主力である「糸島稲作経営研究会」はJA糸島との緊密な協力関係のもと、後継者育成に成功し、稲作農家33戸(会員43人)で、糸島市の水田総面積3900haのうち1518haの経営を担っている。昨年夏以来の市場米価の高騰にともなって、米業者が、主食米生産農家から農協の概算払い1万8000円を超える価格での買い付けに走ってきた。糸島稲作経営研究会の井田磯和会長によれば、研究会メンバーは米業者の買い付けには応じず、JAへの出荷を続けているという。2025年産米の価格の再度の大幅低落が予想されるなか、研究会の中心メンバーでるある井田会長(62)、鳥巣貴之副会長(50)、岩崎博道会計担当(44)とJA糸島の相田敏郎常務(63)に集まってもらった。座談会の司会は元福岡県農協中央会農政部長の髙武孝充氏にお願いした。座談会には井田磯弘研究会顧問と九州大学名著教授の村田武氏(本紙特別編集委員)も参加した。
稲作と酪農 二人三脚で
宮崎悟さん・弘子さん
酪農と耕畜連携
村田 糸島には酪農・畜産経営がしっかり残っています。糸島市の西端の二丈地区の酪農経営「宮崎牧場」の宮崎悟さん(50)、弘子さん(49)夫妻に話を聞きました。
宮崎牧場は乳牛飼育頭数70頭、うち搾乳牛43頭という糸島市ではトップクラスの経営です。自作地1ha・借地29haで、WCS稲や牧草(イタリアンライグラス)を栽培し、自給飼料率を35%まで引き上げることで、経営の安定を確保しています。地区の酪農・畜産経営のなかには、家畜ふん尿の処理に苦労している経営もあるといいます。宮崎さんは、糸島市内3、4カ所に堆肥舎を配置してもらうことで、農地への堆肥撒布はずっと楽になるといいます。すでに堆肥と稲わらの交換、飼料作の稲作農家への委託などの耕畜連携の取り組みがあるので、これを地域としてシステム化することについて、耕種農家との協議を期待したいということです。宮崎さんは、「酪農経営は生乳生産だけで生き残れる時代ではない」と言っています。地域農業の耕畜連携化、オーガニック化が糸島地域農業の今後の展開方向だろうと考えられます。創立40年を迎えた「糸島稲作経営研究会」がそうした農法転換を運動方針に取り込んでほしいというのは私の願いです。
JAは農政再生を
髙武 最後に、研究会名誉顧問の井田磯弘さん(87)に発言してもらいます。
井田 糸島稲作経営研究会の2代目の皆さんががんばっていることに喜んでいます。そうした皆さんの頑張りに対して、政府はしっかり応えてもらわねばなりません。食料自給率のアップに言を左右する政府ですが、主穀・米の需給の安定的管理は国の責任であることから政府は逃れられません。JAグループは今こそ農政連活動を再生させ、生産者が期待する生産者米価1万8000円を確保するための直接支払い(ゲタ)の農業予算への上乗せを実現させようではありませんか。
【座談会を終えて】
JA糸島の基本理念は「わたしたちは、生命産業である農業の振興を図り、豊かな地域社会の実現に貢献します」とある。「生命産業である農業」を言い換えるならば、農家・農協の遺伝子であり、「食の安全性・おいしさ」「農業の尊さ・在り方」を後世に伝えていくことではないだろうか。座談会では、土地利用型農業の専業農家とJA糸島営農経済担当常務に本音を語っていただいた。水田農業のあくなき追求、生産現場からの声を随所に伝え、地域社会に貢献する内容を含んでいると感じることができた座談会であった。なお、関係資料の整備や座談会の設定などで、JA糸島営農部部長補佐の中村勝浩さん、同営農部農畜産課普通作担当の青木桂一さんのお世話になった。(髙武孝充)
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