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「施策」厚く「動向」薄く 田代洋一横浜国大名誉教授【令和2年度農業白書を読む】2021年5月25日

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コロナ禍のなかの令和2(2020)年度農業白書が、5月25日の閣議で了解され、6月中旬にも発表される。今回の白書について田代洋一横浜国立大学名誉教授に要点や見方を解説してもらった。

田代洋一横浜国立大学・大妻女子大学名誉教授田代洋一横浜国立大学名誉教授

コロナ「目玉」も乏しい経営分析

「戦略」・新技術が中心

冒頭にトピックスと特集、次に本来の食料、農業、農村を第1~3章で論じ、最後に災害復旧・復興の第4章がくる。

トピックスは、(1)輸出戦略(2)みどりの食料システム戦略(3)スマート農業、(4)デジタル変革(5)鳥インフル・豚熱(6)新品種の海外流出対策(7)フードテック(代替肉、健康食品、調理ロボット、昆虫利用等の新技術ビジネス)の七つと盛りだくさんで、「戦略」や新技術に集中している。トピックスというより、農水省が追求したい施策のリストアップである。

コロナ禍の影響と対策

「特集」は「新型コロナウイルス感染症による影響と対応」で、今年の白書の目玉だ。食料消費では、家庭内食、生鮮品(肉など)、調理品、スーパー売り上げ、テイクアウトなどが増え、外食が減った(図1)。米販売量は宣言下で中・外食を中心に減った。

農業現場への影響では、農業者の半数が売上高が減ったとし、また労働者確保への影響があった。半農半Xなど地方への関心が高まり、三大都市圏から地方への移住意向が増えた。政策面では、消費拡大、高収益作物の次期作・資金繰りなどへの支援等がなされている。

白書は、食料の安定供給ができたことを強調しつつ、感染症が不測時の食料供給リスクとして加わり、食料自給率や食料安全保障への期待が高まったとする。

記述は包括的だが、目新しい情報、農水省オリジナルデータはゼロで、他資料の加工・引用のみ。そのためか肝心の農業・農協経営などへの影響分析が乏しい。今年に入り食料消費そのものが減り、より厳しい状況になった。農業所得面では特に法人経営への打撃が大きい。

農村はこれまでのところは過密都市に対して「適疎」状況だったが、コロナは地方でも猛威を振るいだし、農村部に及ぶ危険性がある。国の行政なら可能なはずの、ビビッドな農業・農村把握の続報を望む。

みどりの食料システム戦略

「トピックス」の目玉は「みどり戦略」。菅義偉首相の2050年温室効果ガスゼロ宣言、9月の国連食料システムサミットをにらんだ促成「戦略」のようで、2050年に向け、農林水産業のCO2ゼロ、化学農薬50%減、化学肥料30%減を目標にする。

これを「アジアモンスーン地域の持続的食料システム」として、先行するEU等の国際ルール作りに対抗するという。しかし例えば有機農業面積について、EUは2030年の目標を25%としているが、対して日本は現状2.4万ha(0.5%)、2030年目標6.3万ha。それを2050年には一挙に100万ha(25%)にするという。

「みどり戦略」は極めて技術主義的で、EUが「欧州グリーンディール」という社会経済変革の一環としているのと対照的だ。現実から出発するのではなく、あるべき目標から逆算して計画を立てる「バックキャスティング」という手法に基づくので、どうしても「上から目線」の過大な目標になってしまう。

「持続」と「自給」 着地点に課題

みどり戦略と食料自給率

そもそも白書には、食料・農業・農村基本計画の進捗(しんちょく)チェックという法的義務があるが、カロリー自給率、生産額自給率ともに足踏み状態だ(第1章)。とくに自給力が低下傾向にあることが危惧される。

例えば有機農業100万ha化と自給率目標クリアは整合的かといった吟味をしなければ、自給率目標の達成困難を見越して、目標を「みどり戦略」にすり替えたと評されかねない。

日本は豪雨や台風などの自然災害が増えており、特に温暖化スピードが速く、地球温暖化対策が焦眉の課題となっている(第4章)。食料・飼料輸入大国の日本はフードマイレージ、輸送に伴うCO2排出が大きい。「みどり戦略」の前に、自給率を高めることこそがCO2排出削減に通じるのではないか。

白書はコロナ下のチーズなどの輸入増大を指摘しているが、通商関係では、日英EPAやRCEPを輸出拡大のチャンスとみるのみで(第1章)、TPPや日欧EPAの影響、牛肉のセーフガードについては触れていない。

要するに項目ごとのバラバラな指摘ではなく、<自然災害多発・コロナ―みどり戦略―基本計画―輸出入>といった関連分析が求められる。

持続的発展をめぐって(第2章)

農業総産出額、農業所得ともに減った。2020年センサス結果では、農業経営体も基幹的農業従事者も5年で各22%減り、前期5年よりスピードが高まっている。認定農業者数も減少している。いずれも高齢化と関連するが、新規就農者数も減少傾向なので、それだけではない。

担い手への農地集積率の上昇ポイントも年々落ちている。「人・農地プランの実質化」を法制化する動きもあるが、80%という集積目標、農地バンクへのルート一元化という政策自体に問題はないか。

米は、消費減少にコロナが拍車をかけ、6.7万haの作付け転換が必要とされる。白書は高収益作物への転換、輸出などに活路を求め、飼料用米については最後に「安定的な取引が重要」と指摘するのみで、現実にも飼料用米の作付け面積は減っている。白書は米問題が「正念場を迎えています」とするが、突破口を切り開くには飼料用米がポイントだ。

スマート農業が白書の影の主役になっている。実証プロジェクトでは、省力化効果は高いが、導入コスト増から利益は減少した。そこで白書は作業受託やサービス事業体の育成を掲げるが、集落営農などの協業促進を重視すべきだ。また未熟練若年労働力などにとってのメリットなど幅広に検討されるべきである。

新たな着目点など

女性の各方面への家族経営協定や収入保険への加入等の増加といった明るい面も指摘されている。また生産基盤整備関係に力を入れている。第3章では田園回帰が「節」に昇格した。地域おこし協力隊員の農村定着や「小さな拠点」などの紹介、コロナ禍の中で厚生連病院の活動など、新たな着目点もみられる。実践事例では農協のそれが多く取り上げられている。

第4章の大震災、原発事故、自然災害の復旧をトレースし続けることは、白書として極めて貴重である。

今年も400頁と分厚く、通して読むのはしんどい。ネットで「概要」をみてから、関心箇所を本体にあたるのも一つの手だろう。白書は年々、「これもやりました」という施策紹介に重点が移り「農政白書」化している。コロナの経営への影響分析や農業センサス分析を突破口に本来の「動向白書」を取り戻したい。

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