【農林水産省 新3局長に聞く】(3)輸出・国際局 渡邉洋一局長 「攻め」と「守り」 一元化で相乗効果(上)2021年9月7日
輸出関連施策と国際交渉を一元的に担う「輸出・国際局」。初代となる渡邉局長は「攻めと守りの両面で国際対応することで相乗効果を発揮したい」と語る。
輸出・国際局 渡邉洋一局長
好調な輸出 規制撤廃が課題
--輸出と国際交渉など対外関係等を一元的に調整する輸出・国際局の狙いと就任の抱負を聞かせてください。
農林水産省の対外交渉はこれまで国際部が担当しWTO交渉やTPP交渉などの交渉にあたってきました。
一方、輸出は食料産業局が輸出目標の達成に向けて輸出促進の業務をやってきたわけです。これらを統合するかたちで輸出・国際局が設置されたということです。
これによって各国・地域との二国間の関係の処理や、国際機関、国際会議への対応、あるいは国際交渉の場でも輸出促進に資する取り組みをしっかり強化していこうということです。
言ってみれば輸出促進関係の業務と、国際交渉や国際会議対応の業務・組織の一体的な運営というなかで相乗効果を発揮できないかということです。
たとえば輸出先国の輸入規制の緩和撤廃を求めたりするような輸出機会を拡大していこうという「攻め」の観点と、一方で従来、国際交渉でやってきたわが国の食料安保を確保という「守り」の観点の両面で国際的な場に対応することで攻めと守りの両方をしっかりやっていこうということです。その初代の局長に就任したわけですから、組織のマネジメントも含めてしっかり相乗効果が発揮できるようにしたいと思っています。
--農林水産物・食品の輸出額は2030年に5兆円が目標です。とくに重視したい対策や、コロナ禍での輸出実績などをふまえた手ごたえはどうですか。
先日発表した今年上半期の輸出実績は5773億円で初めて5000億円を超え前年同期比では31.6%増となっています。6月だけをみると946億円で前年比24.7%で昨年の7月以来、12か月連続で前年を上回っている状況です。
新型コロナウイルスの影響もあって海外でも家庭食の需要が増大していることから、これに対応した産品の輸出が昨年の下半期から増加しその動きがまだ継続しているとみています。最近、ワクチンの接種が進んだこともあってか、米国などをみると外食のニーズも回復しつつあるということで引き続き好調に輸出が推移しているというだと思っています。
今後はさらなる輸出の拡大のために、まずは輸出先国の規制の撤廃の要請とその実現に取り組みますし、一方、事業者への支援ということで輸出先国のニーズに対応したマーケットインでの輸出の実現のため海外での販売力の強化と、国内での輸出産地形成の支援も進めます。
そのために品目団体を育成したり、関係事業者のみなさんに輸出促進法に基づく輸出事業計画の策定してもらいますが、その支援も図っていきます。
それから輸出向けの加工流通施設の整備が必要になる部分もありますが、そこにもしっかり対応していきたいと考えております。こうした支援策に向け予算をしっかり確保していきたいと考えています。
また、輸出関係閣僚会議で打ち出した輸出拡大実行戦略とそのフォローアップに即して、輸出促進法を改正してさらなる支援の拡充ができないかといったことも検討していきたいと考えています。
生産から輸出まで一貫体制を
--輸出拡大の主翼を担う牛肉の輸出の現状と課題をどう考えますか。それから中国への輸出解禁の見通しはどうでしょうか。
2020年をみるとやはり新型コロナの影響で輸出額は微減でした。ただ後半からは内食需要の高まりもあってeコマースでの販売など、新たな販路の開拓も進んできましたし、さらに外食店の再開もあって、大幅な増加に転じてきており、今年1月から6月までの累計では前年同期の2倍超の119%の増加となっています。
牛肉は輸出の中核的な品目だと思っており、目標額も意欲的に設定しています。このためオールジャパンのプロモーションという取り組みに加え、生産者、食肉処理業者、輸出事業者が連携してコンソーシアムをつくって生産から輸出まで一貫した輸出促進体制ができるような、いわゆる輸出産地の構築に努めているところです。
また、ハード面ではHACCPが必要ということもありますから、輸出施設の整備や施設の認定の迅速化に努めていきたいと思います。ソフト面ではマーケットインの発想で米国をはじめとして輸出先国での内食化の傾向に対応するようなeコマースのさらなる活用や、スライス肉や食肉加工品といった店頭に即座に陳列可能な製品の輸出に取り組むことが大事だと考えています。
中国向け 協議継続
中国本土向けの輸出ですが、わが国でのBSEの発生や口蹄疫の発生から止まっているわけですが、中国側と継続的に協議をしています。一昨年の12月には中国政府からわが国のBSEと口蹄疫に関する解禁令が公告され、輸出再開に向けて一歩進んだということです。
現在、中国側がわが国の食品安全システムを評価しているところです。早期に中国側の評価が終わって次のステップである輸出条件の設定や、具体的な輸出施設の認定と登録といった手続きに移ることができるように中国側に働きかけをしていきたいと考えています。
重要な記事
最新の記事
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日
-
全農 備蓄米 出荷済み16万5000t 進度率56%2025年6月16日
-
「農村破壊の政治、転換を」 新潟で「百姓一揆」デモ 雨ついて農家ら220人2025年6月16日
-
つながる!消費者と生産者 7月21日、浜松で「令和の百姓一揆」 トラクターで行進2025年6月16日
-
【人事異動】農水省(6月16日付)2025年6月16日
-
3-R循環野菜、広島県産野菜のマルシェでプレゼント 第3回ひろしまの旬を楽しむ野菜市~ベジミル測定~ JA全農ひろしま2025年6月16日
-
秋田県産青果物をPRする令和7年度「あきたフレッシュ大使」3人が決定 JA全農あきた2025年6月16日
-
JA全農ひろしまと広島大学の共同研究 田植え直後のメタンガス排出量調査を実施2025年6月16日
-
生協ひろしま×JA全農ひろしま 協働の米づくり活動、三原市高坂町で田植え2025年6月16日
-
JA職員のフードドライブ活動で(一社)フードバンクあきたに寄贈 JA全農あきた2025年6月16日
-
【地域を診る】「平成の大合併」の傷跡深く 過疎化進み自治体弱体化 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年6月16日
-
いちじく「博多とよみつひめ」特別価格で予約受付中 JAタウン2025年6月16日
-
日本生協連とコープ共済連がともに初の女性トップ、新井新会長と笹川新理事長を選任2025年6月16日
-
【役員人事】日本コープ共済生活協同組合連合会 新理事長に笹川博子氏(6月13日付)2025年6月16日
-
【役員人事】2027年国際園芸博覧会協会 新会長に筒井義信氏(6月18日付)2025年6月16日
-
農業分野で世界初のJCMクレジット発行へ前進 ヤンマー2025年6月16日
-
(一社)日本植物防疫協会 第14回総会開く2025年6月16日
-
農業にインパクト投資を アンドパブリックと実証実験で提携 AGRIST2025年6月16日
-
鳥取・道の駅ほうじょう「2025大大大スイカフェスティバル」22日まで開催中2025年6月16日