【TPP】承認急げば米国利するだけ-横浜国大・田代名誉教授2016年10月28日
衆議院のTPP(環太平洋連携協定)特別委員会は10月27日に参考人質疑を行い、田代洋一横浜国大名誉教授が参考人として意見を述べた。田代教授は「TPPの早期国会承認は、米国の批准促進にも再交渉阻止にもつながらず百害あって一理なし。時間をかけて問題点の解明に意を尽くせ」と前のめりの政府・与党の姿勢を批判した。
田代教授は基本問題として「通商戦略の原点、国会決議、国際標準に立ち戻った検討を」と訴えた。
日本は2000年のWTO交渉日本提案で「行き過ぎた貿易至上主義へのアンチテーゼ」として「多様な農業の共存」を打ち出した。田代教授は「TPP協定はこの日本の21世紀通商戦略の原点に反する」と指摘した。
国会決議違反も訴えた。農産物の重要5品目については「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」との国会決議がある。しかし、「5品目の3割は関税撤廃となる」と指摘した。
また、「なぜ日本だけが農産品の7年後再協議を義務づけられるのか」も問題とした。
TPP交渉は日本が参加する前の2011年11月時点で「90~95%の品目を即時撤廃し残る品目も7年以内に段階的に関税撤廃すべきである」との方針が示されていた。これは安倍政権が交渉参加を決める2013年2月の参院予算委員会で当時の林農相も答弁で確認していた。
田代教授は、結局、「この"95%"は現に日本の関税撤廃水準となり、"7年以内に段階的に関撤廃"が付属書2-Dの『7年以後協議』につながる」と指摘し「7年後再協議は、関係諸国の根深く執拗な要求であり、日本の農産品は7年後に関税撤廃に追い込まれることが必定だ」と強調した。
そのほか食の安全が脅かされることや、農協改革のなかで全農も「株式会社化できる」とされたことについて「農協出資の株式会社なのだから外部資本の支配を免れる」という理屈を立てているが、訴訟大国アメリカを考えれば「外国投資家の投資機会を奪うものとしてISDSの訴訟対象になる」ことなど問題点を挙げている。
そのうえで「TPP協定の承認を急ぐべきではない」と訴えた。
安倍首相はわが国のTPP承認が「早期発効に弾みを与える」としているが、アメリカ大統領の本音は「再交渉でもっと多くを獲得すること」。
国会承認を焦れば焦るほど、その足下をみられ「再交渉に応じないとTPPを批准しないぞと脅しをかけられる」と田代教授は分析。「再交渉に応じてさらに譲歩すれば日本は主権国家としての存立条件を失う。国会承認をあせことなく、時間をかけて問題点を解明し、アメリカなどの出方をみて最終判断することが国益を守る賢明な態度だ」と訴えた。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(149)-改正食料・農業・農村基本法(35)-2025年7月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(66)【防除学習帖】第305回2025年7月5日
-
農薬の正しい使い方(39)【今さら聞けない営農情報】第305回2025年7月5日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日