生乳部分委託 国が現状チェック2017年2月23日
酪農関連改正法案自民了承
加工原料乳に対する生産者補給金の交付を現在の暫定措置から恒久的な制度として法律に位置づけ、交付対象者を拡大するとともに、新たなに指定団体などに集送乳調整金を交付することなどを盛り込んだ畜産経営の安定に関する法律などの改正法案は2月22日、自民党の農林関係の合同部会で了承された。
法律の「目的」には生産者補給金等の交付などの措置により「畜産物の需給の安定」を図ることが加えられた。それによって▽畜産及びその関連産業の健全な発展を促進し、▽国民消費生活の安定に寄与する、とされた。
現在は指定団体以外に出荷している酪農家は補給金の対象になっていない。そのため生乳は飲用主体の仕向けとなり、一部は牛乳の不需要期には廉価販売をし価格引き下げの要因となっている。今回の改正では指定団体以外の酪農家や事業者も補給金の対象とすることによって、飲用牛乳一辺倒ではなく加工向けにも販売することを誘導する。
農林水産省は加工向けが増加することは▽需給の安定、▽飲用牛乳の廉価販売防止に役立つことから酪農家の所得の安定に寄与するとしている。 ただ、今回は酪農家に自由に販売先を確保する改革を求める規制改革推進会議などの意見も強かったことから、指定団体制度がなくなり需給調整機能が低下するのではないかとの懸念があった。
この点については指定団体(正式名称=指定生乳生産者団体)を法律に位置づけ、需給調整を実施するとともに補給金と集送乳調整金の交付を受けることができる。
法案では生産者補給金の交付対象者は以下のように規定される。
(1)生乳受託販売または生乳買取販売の事業を行う者(現行の指定団体)。
(2)自ら生産した生乳を乳業者に対し自ら販売する者。
(3)自ら生産した生乳を加工して自ら販売を行うもの。
ただし、補給金の交付を受けるには毎会計年度ごとに年間販売計画を策定し農林水産大臣に提出、▽年間を通じた用途別の需要に基づく安定取引であること、▽生産者補給金の交付業務を適正に行えること、▽用途別取引を行っていることを示さなければならない。
また、中山間地等からの集乳業務を支援する集送乳調整金の交付は▽1または2以上の都道府県の区域内で集乳を拒否しないという旨が定款等に定められていること、▽集送乳経費の算定方法が基準に従って定められていることが条件となり、この要件を満たさない者は集送乳調整金の対象としない。
ただし、正当な理由がある場合は集乳を拒否できるとする。
これは無条件の部分委託に歯止めをかけるもの。売り先がない場合にだけ指定団体に販売するなど、場当たり的で不公平を感じる取引になることを防ぐためで、いわゆる「いいとこ取り」を排除するための措置で農林水産省は省令で措置するとして以下のような場合を規定してはどうかとしている。
(1)生乳生産の季節変動を超えて変動する生乳取引を求められる場合。(2)短期間の生乳取引を求められる場合。
(3)特定の用途仕向けに販売することを条件とした生乳取引を求められる場合。
(4)生乳の品質が指定団体の定める統一的基準に満たない生乳取引を求められる場合。
(5)生産した生乳のうち売れ残ったものを持ち込むような取引を求められる場合。
これを生産局長通知の生乳受託契約例に明記する。
また、部分委託の現状については、国が指定団体等の計画をチェックする際に、▽年間を通じた用途別の需要に応じた安定的な取引かどうか、▽出荷する生産者の公平な取引であるかどうかなどを評価するとしている。
法案では国が年間販売計画等を認定したうえで補給金等の交付対象とすることや、農林水産大臣対象事業者に対して「酪農経営の安定を図る観点から、必要な指導及び助言を行うことができる」(第二十八条)という農相に指導と助言の権限を持たせる条項も入れた。 法案では施行日は平成30年4月1日とされている。
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