信用譲渡のフォローアップ記述に反発-自民部会2017年6月8日
自民党の農林食料戦略調査会と農林部会の合同会議が6月6日に開かれた。政府が近く閣議決定する「骨太方針2017」(経済財政運営と改革の基本方針2017)、「未来投資戦略2017」と「規制改革実施計画」それぞれの案における農林水産関係部分について農水省が説明した。規制改革実施計画ではJAの信用事業譲渡も含めた自己改革を促すなどの記述があることについて「JAが自主的に決めることだと山本農相は何度も(国会等で)答弁している。なぜこんな言葉が出てくるのか。削除してもらいたい」などの意見が相次いだ。
規制改革実施計画は、5月23日に規制改革推進会議が安倍首相に提出した答申をもとに政府が策定するもの。23日、答申を受け取った安倍首相は「ただちに規制改革実施計画を策定し一刻も早く実施に移していく決意だ」と述べたが、実際には答申内容をそのまま実施計画として記述、「ただちに策定」したに過ぎない。
農協改革については答申に盛り込まれたとおり、「地域農協組織の信用事業の農林中金等への譲渡を始め、進捗状況をフォローアップする」と記述した。
また、生乳流通改革のなかで、条件不利地域の集送乳円滑化のために集送乳経費を助成するが、その運用について「新たな事業者の参画を可能としつつ」仕組みを構築すると記述し、生乳指定団体以外の新規参入を促すような記述もある。
会合では生乳改革について「なぜこの言葉が入ってきたのか。新たな事業者は改正法案に(規定が)ある。わざわざ新しい事業者を入れろという文言ではないか。腑に落ちない。カットしてほしい」(参議院・野村哲郎議員)、「この記述はアウトサイダーが調整金をもらえるということにならないか。条件不利地の集乳をするといって近いところからしか集めないのではないか。集乳の義務を負っていることが(認識に)入っていない」(衆議院・梁和生議員)、「党の議論が完全に無視されている。これは制度を崩す。これを受け入れる農水省の体制とは何か。多くの農業者の負託に応えるなら入れるべきではない」(参議院・山田俊男議員)など政府批判が相次いだ。
これに対して内閣府の規制改革推進室・刀禰俊哉次長は改正法案で、調整金の受給対象は指定団体以外に一般事業者も含めとなっていることや、農水省も新規参入を想定していることなどを指摘し、要件を定めて実施する方針に変わりがないことを説明した。農水省の枝元真徹生産局長は「新たな事業者を排除するものではないということ。それ以上ではない」と強調した。
また、JAの信用事業譲渡問題については昨年の規制改革推進会議農業WGが3年以内に信用事業を営むJAを半数とする目標を提起したことなどへの強い懸念が出て記述を「削除すべき」との意見があったほか、「フォローアップはだれがどのようなかたちでするのか」(参議院・藤木眞也議員)との指摘もあった。 農水省の大澤誠経営局長は「あくまで自己改革が重要であることは明確。新しいことではなく26年、27年の実施計画で示されたこと」などと説明するとともに、フォローアップについては所管省庁が農水省と明記されていることから「農水省が前面に出る」と強調した。
西川公也自民党農林・食料戦略調査会長は「文章の解釈で意見が出た。政府与党一体といっても国会が決定権者」との考えを示したほか、農協改革はあくまで自己改革が優先されることなどを強調した。ただ、この日の意見を整理するよう求めたものの、基本的には合同会議として了承した。
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