果樹改植や米浸水で支援営農再開を後押し-政府2019年11月8日
政府は11月7日、台風19号など農林水産関係被害への支援対策を決めた。同日決めたのは19号台風被害への追加対策で果樹農家への支援策や、水に浸かってしまった米への支援対策などだ。
被災した稲作農家への特別対策では、農家が自分の倉庫で保管していた米が浸水し出荷できなくなった被害に対し、営農を再開するための土づくりや土壌診断、種苗等の資材の準備などの経費を支援する。単価は10aあたり7万円。
また、地域が大規模な浸水被害を受けて土壌浸食、表土流出等の被害を受けた稲作農業の継続に向けて土づくりを10aあたり1万円で支援するほか、作業受託や機会レンタルなどの経費を2分の1補助する。いずれも今後、収入保険や農作物共済に加入することが要件となる。
台風19号では果樹園が浸水し樹体そのものが衰弱する被害が広範囲に発生している。
泥水被害を受け改植を行う園地に対しては、改植経費(抜根、苗木の植栽など)を慣行樹形では10a17万円を支援する。加えて省力樹形としてリンゴの新わい化栽培(低樹高密植栽培)を導入する場合には10a53万円を支援する。また、幼木の管理経費も10a22万円支援する。
経営面積の過半を改植する場合は、当然未収穫期間が出る。その支援策として、今回は(1)果実が実るまでの年数を短縮する大苗育成の取り組み(10a20万円)、(2)改植から成園化までの間の収入を確保するための代替農地での営農(10a52万円)、(3)省力技術の研修(10a3万円)を実施する。
被害を受け、リンゴの大規模改植で新わい化栽培を導入し、(1)~(3)までのすべてに取り組んだ場合は10a150万円の助成が受けられる。
一方、改植を免れた園地で次期作に取り組む場合は、樹体洗浄と樹勢回復のための摘果、せん定などの作業に10a7.4万円、罹病した枝の除去や地域ぐるみでの薬剤散布など病害まん延防止に10a2万円を助成する。
そのほか、被災した農業用機械や畜舎などの復旧に「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」を発動して支援する。初期投資の軽減のための中古農機の取得も支援対象とする。また、台風19号は特定非常災害に指定されたことをふまえ補助率を2分の1に引き上げる。それに自治体が上乗せする。対象は被災後も営農をやめることなく再開しようとする農業者で、農地の永続的な利用を担い市町村が認める経営体となっている。
また、ほ場等に堆積した稲わら等の処理については環境省との事業連携で支援する。集積所まで農家が自ら持ち込むか、JAなどに依頼して持ち込むことに対して、1立方メートルあたり5000円を支援する。市町村はそれを災害等廃棄物処理事業費補助金を活用して処理する。
被災した農業用ハウスのガラス片等が混入した農地については災害復旧事業で除去を支援する。
一方、農地やハウスに流入した土砂やがれきなど災害復旧事業の対象でないものの撤去にも、すでに経費を助成することが決まっている(強い農業・担い手づくり総合支援交付金)。
被災を機に新たに産地で共同利用する耐候性ハウスの導入も支援する。被災したり高齢化で離農した人の農地を活用してJAやJA出資法人が主体となり耐候性ハウスを整備することで農業者の初期投資の軽減が可能となる。JAやJA出資法人が整備して農業者が賃借すれば、リース期間中に分割して料金を払うため農業者の初年度の負担は大幅に軽減することになる。
【関連記事】
・【JA長野中央会・雨宮勇会長に聞く】営農継続の意欲支援を 泥の堆積50センチ(19.11.08)
・台風19号とその後の大雨の農林水産被害額2000億円を突破(2019.11.05)
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