遺伝子組み換え議論における科学とは 映画上映とクロストーク開催 2019年11月20日
遺伝子組み換え作物(GM)の是非について賛成派と反対派双方の立場から描いたドキュメンタリー映画「Food Evolution(フードエボリューション)」の上映会が11月15日、東京・新橋のスペースFS汐留で開かれた。「遺伝子組み換え作物の議論における『科学』とは?」をテーマに遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会が主催し、上映後は映画の感想をふまえてクロストークが行われた。
左からファシリテーターの小島氏。全国消費者団体連絡会事務局長の浦郷氏、サイエンスライターの堀川氏
映画は、ハワイのレインボーパパイヤ、アフリカのGMバナナなどの事例とともに、GM作物に関する議論に「科学」はどのように用いられ、また「市民」はどうかかわってきたかを農家、科学者、消費者団体、環境活動家、ジャーナリストなど様々な立場の専門家を賛成、反対双方の立場から紹介しながら、今後どのように対処していくべきかを問うもの。
映画は、いわゆる活動家が作った作品ではなく、米国人ドキュメンタリー作家のスコット・ハミルトン・ケネディ監督が制作し、米国では一般の映画館で公開。ハミルトン監督は「賛成でも反対でもなく、科学を重視」して映画を作ったという。
この催しを企画した、遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会代表の小島正美氏は、上映前のあいさつで「GM問題の議論をするには最適な教材」と映画について説明した。
上映後のクロストークには、全国消費者団体連絡会事務局長の浦郷由季氏とサイエンスライターの堀川晃菜氏が登壇。映画について浦郷氏は、自身はGM作物を特に危険なものとは思っていないとした上で「GM作物を受け入れる人は受け入れ、反対の人は反対でどこまでも平行線が続く。科学者の中でも意見が分かれるのはなぜなのか」と感想を述べた。また、堀川氏は「展開が速く、ある程度GM作物について理解がないとついていくのが大変。確かに反対派と推進派の意見は出てきたが、反対派や中立、推進派が出てくる順番を入れ替えたら受け止め方が変わるのでは。同じ情報でも編集で文脈の受け止め方が変わることもありうる」と話した。また、科学を重視して制作された映画として成功しているか問われ「科学とは何かをつきつめて考えなければならないが、両方のエッセンスを入れたという意味では科学的だ」と述べた。
日本でGM作物はすでに大豆、トウモロコシ、ジャガイモなど8種類の作物が輸入され栽培も認められているが、国内で商業栽培の実績はない。1996年に米国で栽培が始まったGM作物は現在、世界約30か国で栽培されるようになったが、誰もが納得するような議論が尽くされたとは言い難い。
映画はGM作物推進派の対極に有機作物推進派が位置する構図で描かれており、それ自体がおかしいと堀川氏は指摘する。「善悪はトレードオフの関係で複雑であり、有機作物とGM作物も本来は対極に並べる必要はない。有機は有機、GMはGMで正しく使えばいいのになぜ、"GMを使わない=有機を買う"になるのか。対極において議論することから解きほぐすべきではないか」と述べた。
賛成派と反対派の共存の可能性について「消費者団体によって立場はいろいろ。みんなに受け入れられるかは疑問だ。そもそも栽培したい人がいるのか、流通して売ってくれる人がいるのか、購入したい人がいるのか」と浦郷氏。また、生協で扱うことの可能性について問われると「GM作物に関しては普通の人はよくわからないから不安になる。科学的な評価を誰でもわかるように説明してもらうことが必要。あとは、価格面で安ければ消費者は求めるのでは」と話した。
表示については、8種類の対象農産物がGM作物である場合は「GM作物である」と説明する義務はあるが、油や醤油など加工品は遺伝子作物を原料に使っていても「遺伝子組み換えである」と表示する義務はない。そのため、メーカーなどの任意で「遺伝子組み換えでない」と表示された商品が市場に出回っている状況について、浦郷氏は「GMは危険だという印象をかえって与える」。堀川氏は「食べたくない人は選ばない、という権利は守られるべき。シンプルにGM作物を使った商品には"遺伝子組み換えである"と表示するようにならないものか」と改めて疑問を投げかけた。
◎GM作物の日本における安全性審査の考え方と仕組み
日本で遺伝子組み換え作物を利用するには、環境に対する安全性、食品としての安全性、飼料としての安全性について、科学的な評価を行うことが法律で定められており、審査をクリアした遺伝子組み換え作物だけが輸入され、国内での流通、利用、栽培などを許される。(バイテク情報普及会HPより)
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