ウクライナ危機で小麦1000万t不足か FAOエコノミスト分析2022年4月4日
外務省が3月31日に開催したシンポジウム「ロシアのウクライナ侵攻に見る世界と日本の食料安全保障」でFAO(国連食糧農業機関)のチーフエコノミストのマキシモ・トレロ氏が基調報告をし、ウクライナ危機が世界の食料生産や貿易に与える影響などについての見通しを話した。
トレロ氏が強調したのは、新型コロナウイルスのパンデミックで世界の食料情勢が厳しくなっていなかでのウクライナ侵攻が起きたことだ。FAOが発表している食料価格指標は2014-2016年の平均価格を100としたものだが、2月には140.7ポイントと記録的な上昇を示した。
トレロ氏は、現在の状況として3月から6月にかけてロシアから輸出される小麦1400万tの代替をどう見つけるかや、ウクライナのトウモロコシの収穫が不透明なことなどを指摘するとともに、次のシーズンに向けた種子や肥料などの投入財の動向次第で、たとえばアフリカ諸国で作付けが大幅に支障をきたし3分の1程度の作付け減などが考えられることや、同様に米国や南米で何を生産するか作付計画に影響を与えると指摘した。
こうした状況のもと、2025年までに小麦の生産量は世界で1000万t不足するとの見通しを示した。ただ、厳しい予測では2500万t減の見通しもあるという。
こうした状況のもと現在、世界の栄養不足人口は8億1000万人水準だが、食料不足によって2023年にかけて栄養不足人口がさらに760万人から1300万人増えるとの懸念も示した。
ただ、アフリカ中部などキャッサバを主食としている地域や、米が十分に生産されているアジアでは影響は少ないとみる。
食料だけではなくエネルギー価格も上昇しており、トレロ氏はコロナ禍で人々の生活に悪影響が出ているが、今後、食料とエネルギー、水の確保のために消費者はプラス6%の負担増となる見通しも示した。
食料安全保障に向けてトレロ氏の提言は、食料、肥料、燃料などの貿易を続け、穀物等の輸出制限はしないことが大切だと話した。
また、経済制裁についても「影響を慎重に見るべきだ」と指摘したほか、肥料の効率的な使用と有機肥料の使用拡大、また、各国の輸入先の多角化の取り組みが求められるとしたほか、「ウクライナの食と農の復興シナリオ」を描くことも今後の課題になると強調した。
最新の記事
-
【令和5年度農薬危害防止運動】インタビュー・楠川雅史農水省農薬対策室長2023年5月31日
-
【令和5年度農薬危害防止運動】6月1日から3カ月 農薬安全に 保管や環境に配慮を2023年5月31日
-
令和4年産米 集荷、契約、販売数量減 価格横ばい 4月末 農水省2023年5月31日
-
5月の卵価 上昇止まるも高止まり続く 需要和らぐ6月に「価格の落ち着き」期待も2023年5月31日
-
東京都の米支給事業 対象世帯の35%が未申請 都は「申請期限後も柔軟対応」2023年5月31日
-
【人事異動】農水省(6月1日付)2023年5月31日
-
集落営農組織 227消滅 新規に173組織化 2023年調査 農水省2023年5月31日
-
花粉発生量を30年で半減へ 人工林10年で2割減 医薬品として「スギ花粉米」も 政府の花粉症対策2023年5月31日
-
女性地方議員は地方の希望【小松泰信・地方の眼力】2023年5月31日
-
雪平莉左の「ゆるふわたいむ」撮影のとある1日に密着 JAタウン2023年5月31日
-
「農業由来カーボンクレジット生成&販売」JAアクセラレーター第5期に採択 フェイガー2023年5月31日
-
企業年金残高80兆5006億円 JA共済連4379億円ほぼ横ばい2023年5月31日
-
企業価値創造と持続可能な社会の実現へ「サステナビリティサイト」更新 キユーピー2023年5月31日
-
フルーツ専門店の「搾りたて野菜ジュース」期間限定販売「果汁工房果琳」など2023年5月31日
-
「幻の卵屋さん」JR大森駅、さいたま新都心コクーンシティに出店 日本たまごかけごはん研究所2023年5月31日
-
G7広島サミットを「チア!ひろしま」農林水産物で応援 生産者の声を報告2023年5月31日
-
滋賀県に密着した農機具買い取りで地域貢献 6月1日で移転オープン10周年 農機具王滋賀店2023年5月31日
-
入手困難な「夏秋いちご」企業向けに販売開始 Japan Fruits2023年5月31日
-
「夜明け前 大吟醸酒」IWC2023で最高賞受賞 小野酒造店2023年5月31日
-
埼玉県のお気に入りスイーツを投稿「第2回埼玉県広報フォトコンテスト」開催2023年5月31日