農業労災の「特別加入」拡充を 要件緩和、補償対象拡大が必要 農業労災学会がワークショップ2024年6月3日
日本農業労災学会(会長=北田紀久雄氏)は5月31日、農業者の労災保険の特別加入を進めるためには何が必要かについてのワークショップをオンラインで開いた。農作業事故率は高いにも関わらず、労災保険への加入率は依然低い水準にあり、加入要件の緩和や撤廃、補償対象の拡大などを訴えた。
事故が多い乗用トラクターの作業
労災保険特別加入とは、労働者以外で業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に、一定の条件で労災保険に特別加入できる制度。中小事業主、「ひとり親方」などが含まれる。
農作業従事者が加入できる特別加入は、特定農作業従事者と特定農業機械作業従事者、それに今年11月新設される特定業務受託事業者(フリーランス)があるが、加入には2メートル以上の高所での作業であることや、地域営農集団あるいは経営耕地面積が2ha以上、年間農畜産物販売金額300万円以上などの要件がある。
従って、動力を用いない農作業による事故や熱中症、ほ場や道路からの転落、鎌、鍬などの農具による負傷など、補償の対象にならない部分が多い。ワークショップで報告した東洋大学講師の田中建一氏は、この10年間、特定農作業従事者は横ばい、特定農作業機械従事者および加入団体数は減少傾向にあることを挙げ、「特定農作業従事者の加入制限を早急に撤廃し、一般農作業を補償する仕組みに改正するべきだ」と指摘した。
また「農業者は農業を維持し、環境を守り食料自給に貢献している。特別加入保険料の国庫負担を検討するべきではないか」と、韓国などの例を挙げ、国庫による負担を提案した。
このほか神奈川県JAはだのの宮永均組合長が、農業労災について、農業者やJAの農業労災に関する理解不足を指摘。福岡や広島県、鹿児島県、福岡県などJAグループを中心とする先進的取り組みを紹介し、農業労災と共済・保険の違いの理解促進や農業労災保険加入組合の設置などを呼び掛けた。
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