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農政:薄井寛・20大統領選と米国農業

コロナ禍がもたらす地方有権者の変化~農務省OBらによる反トランプ運動も【薄井寛・20大統領選と米国農業】第8回2020年8月12日

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新型コロナ感染が全米各地に広がるなか、ツイッターなどのソーシャル・メディアを通じて農村部の有権者たちはどのような話題を交換し合っているのか。地方選挙区での党勢拡大を推進する野党民主党系の「ワン・カントリー」の依頼を受け、ネット研究所のソーシャル・インパクト社は3月から6月、大統領選で接戦が予想される中西部のミネソタ州や北東部のペンシルベニア州など6州の農村部において、有権者(約2~6万人)がソーシャル・メディアを通じて話し合った「政治的話題」の中身を調査し、その結果を1週間ごとに分析した。

ホワイトハウス

◆4カ月間で1.6倍も増えたトランプ批判 

調査結果の一部をまとめた別添の(表)を見ると、この4カ月間に農村部の有権者の政治意識に変化が生じたことを読み取ることができる。すなわち、政治的話題の全体に占める「トランプ批判」の割合が3月の30%台から4~6月には50%台へ増え、「トランプ支持」の割合は3月の18%から4~6月には4~5%へ低下したのだ。

(表) 米国「接戦州」の農村部有権者がソーシャル・メディアを通じて 話し合った主な「政治的話題」の占める割合(2020年3~6月)

(表) 米国「接戦州」の農村部有権者がソーシャル・メディアを通じて話し合った主な「政治的話題」の占める割合(2020年3~6月)(クリックで拡大)

最近の世論調査について米国の主要メディアは、大統領のコロナ対策に不満を募らせる都市郊外の保守層と無党派層がトランプ離れを起こしていると強調するが、農村部の有権者の間でもほぼ同様の動きが広まったことを前述の調査結果は明示している。

一方、7月に入ると新型コロナによる農村部での犠牲者が再び増加へ転じ、同30日に1万人を超えた(全米死者数の6.7%)。農村部での1日当たりの死者数は7月16日の77人から8月1日の171人へ2倍以上。この状況が続くなら、農村部でのトランプ支持率はさらに低下する可能性がある。

また、支持率低下を予感させるような別の出来事も5月初めに起きていた。農村部のトランプ岩盤支持層にくさびを入れようとする動きが中西部の農業界内部から生じたのだ。この動きを主導したのはオハイオ州の大豆農家クリストファー・ギブズ氏。2016年選挙でトランプへ投票した農務省の元職員で、共和党地区代表も務める農村のリーダーだ。

◆トランプ農政の失敗を農家へ伝えるラジオ広報

ラストベルト地帯のペンシルベニア州から中西部の穀倉地帯にかけた6州の農業関係者ら36名と連携し、ギブズ氏が起ち上げたのは超党派の政治団体「ルーラル・アメリカ2020」。トランプ再選阻止がその目的だ。
トランプ大統領がいかに農家経済を破壊し、地方のインフラ整備を放置して農村医療をも崩壊させてしまったのか。その実態を仲間の農家や地方の有権者へ直接知らせ、トランプへの投票を止めさせる。そのために、現政権の農政と地方政策を徹底的に批判するキャンペーンを11月の選挙にむけて展開する。これがギブズ氏らの運動方針。その最初の活動は6州でのラジオ広告の展開となった。

ミシガン州でのラジオ広告(30秒)では、一人の女性サクランボ農家が7月27日から8月末まで州内の農家へ繰り返し次のように語りかける。

「私たちミシガン州の農家にとって、つらいことが続いています。農産物価格はのきなみ下がりました。ワシントンでトランプが仕掛けた貿易戦争は私たちにとってまさに大災害。新型コロナが事態をさらに悪化させてしまいました。失敗ばかりのトランプ政権をさらに4年間も続けさせることなど有り得ない。私は農家としてそのことを十分承知しています。皆さんも『ルーラル・アメリカ2020』に参加し、農村再建のために私と一緒に闘っていきましょう!」

ラストベルト地帯から穀倉地帯へ連なる6州での「勝利の奪回」をめざし、農家や工場労働者たちの支持回復に力を入れる野党民主党。これに対し、トランプ大統領は農家に対する莫大なコロナ禍救済金のバラマキをはじめ、休校中の小中学生に対する給食提供(第二弾の7月には41州で約3000万食)や、農村医療体制の総合的な改善策の検討開始(8月3日)など、農業州へのテコ入れ策を次々と打ち出す。
他方、ワシントンでは現在、世論調査などに見られる劣勢に危機感を強めるトランプ大統領は"ワクチン開発の大成功"の発表によって最終盤での形勢大逆転を図るのではとの憶測が広まっている。さらに憶測は、台湾をめぐる中国との「軍事衝突」の危険性にさえ及んでいるようだ。

これに対し、農村部でのトランプ支持層の切り崩しをねらう民主党のバイデン前副大統領は、「自分が当選すれば、中国に対する報復関税を撤廃する」(フォーブス、8月6日)との考えを打ち出した。また、民主党予備選から降りたサンダース上院議員との政策協定(7月8日)でバイデンは、環境保全型農業や地域食料供給システムを強化するために中小の家族経営農家や新規参入農家に対する支援促進を強調し、接戦州の農家へ積極的に秋波を送っている。

ただし、トランプ・バイデンの本格的な政策論争はこれからだ。多くの農業州で接戦の可能性が高まるほど、両候補による農業・地方政策の議論がメディアの注目を集めることになる。

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