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農政:バイデン農政と中間選挙

【バイデン農政と中間選挙】食料増産支援へ転じたバイデン政権~二毛作奨励の実質効果不透明【エッセイスト 薄井寛】2022年5月25日

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「アメリカの農家は食料生産でコロナ禍の国民を支え、(ロシアのウクライナ侵攻によって食料不安に直面する)世界各国の人々へ食料を供給する。農家はまさに自由の根幹だ。・・民主主義のパン籠だ」

食料増産の支援策を内外にアピール

4月11日、イリノイ州カンカキー郡の家族経営農家をビルサック農務長官とともに訪れたバイデン大統領はこのように農家をたたえた。そのうえで、世界の食料不安を解消するため小麦などを増産する農家へ新たな支援を提供すると強調した。

同州の穀倉地帯で多くの農家に迎えられた大統領は、次のような増産支援策を公表したのだ。

① (小麦や大豆、米の)二毛作の奨励(融資単価の引き上げと作物保険料の値引き)、
② (二毛作の減収の危機に対応するため)二毛作用の作物保険が適用される郡の拡大(現行の681から1935へ)、
③ (GPSによるトラクター自動制御などの精密農業の技術を活用し、高騰する肥料の投入減と二毛作の反収増を実現するため、最新技術を使えない中小農家に対する)農務省の技術援助の強化、
④ 国産肥料の供給を増やして価格高騰を抑えるため、地方の肥料製造会社への補助金を(本年3月決定の2.5億ドルから)5億ドル(約640億円)へ倍増。

なお、二毛作の奨励等に必要な5億ドルと肥料会社への補助金増額は、ウクライナ支援の追加予算(400億ドル、約5兆1000億円、5月21日成立)から支出される。

バイデン政権は本年3月、穀物飼料協会や食品業界が求めた休耕地の部分的な生産復帰という増産対策の案を退けたが(本紙4月30日号参照)、今回なぜ食料増産へ方針を急転換したのか?

5月12~14日のG7外相会議とG7農相会議の直前にイリノイ州で発表された増産支援策に関する大統領府のプレスリリースは、食料不安を引き起こしたロシアの軍事侵攻を非難し、食料不足の途上国に対する援助へ向けた米国のリーダーシップに焦点を当てた。

だが、真の狙いは国内向けの政治的なメッセージにある。9.4%(4月)を超える食料インフレ高進(表参照)に不満を強める都市部の消費者に対し、増産によるインフレ抑制効果を訴える一方、生産コスト増に危機感を募らせる農家には国産肥料の供給増の取り組みを誇示したのだ。

米国の都市部における食料品の消費者物価指数(CPI)の変動率

冷ややかに反応する共和党系の団体

対ロ強硬姿勢を貫いてウクライナ支援を増強するバイデン政権は同時に、40%近くの世帯を対象にしたネット通信費の無料化計画を進めるなど、さまざまなインフレ対策にも取り組んできた。

しかし、世論は対ロ強硬策を支持するものの、大統領への支持率は回復どころか、低下傾向を脱していない。各種世論調査の平均値(FiveThirtyEight社)は5月23日現在、支持の41.0%に対し、不支持が54.6%だ。

こうしたなかで、増産支援策は政治的にプラスとなるのか。

中小の家族経営農家を組織する全米農民連盟は国産肥料の増産支援や二毛作に対する作物保険の適用地域の拡大を評価し、「農家の増産を支援するため、農務省との連携を強める」姿勢を強調した。

一方、野党共和党系とされる米国最大の農業団体(ファーム・ビューロー)は、「(増産の支援策は)二毛作が適した地域では効果を発揮するかもしれないが、・・(国産肥料の供給増などの実現も)時間がかかる」との認識を示し、「食料インフレの解決に特効薬はない。(燃料、資材、供給網などの問題をすべて解決するための)総合的な対策が必要なのだ」と、反応は冷ややかだ。

二毛作への支援は今秋作付けの冬小麦と来春の大豆などとの組み合わせから始まる。実質的な増産は来年の秋以降となるが、その増産効果を疑問視する見方も少なくない。

小麦などの二毛作の面積は全米で1200万~1500万エーカー。全耕地面積の2~3%だ。ビルサック農務長官は、「(今回の支援措置で)面積の倍増」を見込むが、それでも約1000万トンと農務省が予測するウクライナの小麦輸出減(2022/23年度)を補うのは困難だ。

また、穀物相場が高値で推移すると予測されるなか、二毛作に挑戦する農家は少ないとの予測が支配的だ。二毛作用の作物保険料の値引きという補助金(エーカー当たり10ドル)が少な過ぎるからだ。

それに今回の措置は米を含めたが、トウモロコシは対象外とした。そのため、米地帯では二毛作用の新たな機械投資がネックとなり、トウモロコシの産地では二毛作の選択肢が限られてくる。

さらには、リスク対応の作物保険を増産に利用するのはそもそも間違いだとの批判も出ており、〝バイデン増産支援策″に対する米国内の評価は総じて低い。農家と市民は別の問題に関心を寄せているためだ。

資材高騰による農場経営の悪化を恐れる農家は増産ではなく、国内の干ばつとウクライナの輸出減などによる価格高騰に関心を集めていると伝えられる。

また、CBSニュースの世論調査(4月22日)によると、バイデン政権に期待する市民の関心事は1位が景気対策(76%)。これにインフレの抑制(73%)と治安対策(59%)が続き、ウクライナ問題は4位の58%に留まる。

とりわけ物価抑制で早期に成果を挙げない限り、バイデン支持率の回復は難しいかもしれない。

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