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農政:どうするのか? 崩壊寸前 食料安保

「令和の百姓一揆」へのエール "欧州並み"農業再生議論を 駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2025年5月2日

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3月30日、農民たちがトラクター30台を連ねて、東京で「令和の百姓一揆」に立ち上がった。思い返せば、欧州全域で農民たちが激しい抵抗運動を繰り広げた昨年冬から1年余り、ついに日本でも国民に現在の食料・農業の実情を訴えようと、農民たちが結集した。
日本と欧州の農業情勢は多く点で共通している。両者を比較しながら、日本の農民運動と農政の前途について駒澤大学名誉教授の溝手芳計氏に寄稿してもらった。

「令和の百姓一揆」、人のデモは静岡の米農家・藤松泰通さん(44)のトラクターが先導した(3月30日、東京都内)

農民たちが結集した「令和の百姓一揆」(3月30日、東京青山で)

社会問題化する日本の食・農・環境

今、日本の食・農・環境をめぐる様々な問題が社会の関心を集めている。

一昨年夏以来、米の入手難が起こり、米の小売価格は2倍近くに高騰している。米生産者の高齢化に伴い、将来的な食料確保もおぼつかないという。米ばかりではない。昨年秋には、レタスやキャベツが品薄になり、価格が上昇した。

その一方、農家の経営は悲惨な状況にある。ウクライナ戦争をきっかけにエネルギーや肥料等農業資材価格が急騰するなかで、それを販売価格に十分転嫁できず、この間、最低賃金でさえ1000円実現が議論されているのに、平均的稲作経営の所得はわずか時給10円まで落ち込んでいる(2021年度・2022年度)。こんな状況では、短期的にも長期的にも担い手は確保できない。

今ひとつ、気候災害の激発も見逃せない。能登、会津若松、山形での相次ぐ大雨や大雪が報じられる一方、大船渡(岩手県)、今治(愛媛県)、岡山で未曾有の大規模山火事が相次いだ。

欧州でも酷似の事態が進行

翻って欧州を見ると、ここでも同様の事態が進行している。

食料安全保障を見ると、英国では、2021~23年前半にトマト、ピーマン、キュウリなどが入手難となり45年ぶりという価格急騰が発生したり(「サラダ危機」)、2023~24年春先の長雨と洪水・冠水により2024年作は平年の70~80%に落ち込むと予想されている。欧州全体としても、ウクライナ情勢との関わりもあって、急速に食料安全保障への関心が高まってる。

資材価格の急騰に農産物価格が追いつかない事態は欧州でも共通しており、中小農家を中心に農業経営の急激な減少が続いている(EU全体:2005~20年で38%減少、仏国:31%減少、独国:33%減少。英国[イングランド]:2005~23年で23%減少)。英国では、野菜生産者の大半が赤字で、半数が1~2年で廃業するのではないかというショッキングな報道もある。

欧州は、気候変動による悪影響が最も深刻な大陸とされており、上述のような水害と並行して、スペインでの渇水被害、ギリシャでの大規模火災のといった深刻な水不足も問題となっている。ちなみに、欧州では、温室効果ガス排出の 11%が農業由来とされており、水質汚濁や生物多様性喪失の原因者としても、農業に厳しい視線が注がれている。

駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏

駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏

先行する欧州の運動と政策

だが、日本と欧州では違いもある。特にこうした問題に対する対応状況は大きく異なる。

日本では、農民たちの関心は生産コストの上昇と農産物価格の低迷に集中し、都市住民・消費者は食料の価格高騰や品不足に悲鳴を上げ、農政当局は、これら眼前の不満や批判への対応に追われている。また、農業団体にせよ、消費者運動にせよ、環境運動にせよ、個別の要求について当局と別々に交渉する傾向が強いように思われる。

日本の農政はこれまで欧州農政から様々学んできたが、そのほとんどは個別施策に関わるものであった。しかし、現下の運動や農政の重要な課題は、個別の対策にとどまるものでなく、むしろ農業や農政全体をどのようなものにしていくかという、戦略的、総体的な方向性が問われている。この点で、欧州の農政が大きく先行している。

たとえば、日本農政が見習おうとしている欧州連合(EU)の「農場から食卓まで(Farm to Fork)」は、2030年までに気候中立を達成するとする経済成長戦略である「欧州グリーンディール」戦略を農業分野で担うものとして、環境や安全・安心な食料確保に資する農業への転換(transformations)を目指して政策体系全体を組み換えようというものである。アクション・プランでは、持続可能な食料安全保障や持続可能な食料生産の確保と並んで、食品の持続可能な加工・流通・食のサービスの奨励、持続可能な食品消費や健康的で持続可能な食生活の促進、フードロスの削減、フードチェーン内での不公正取引対策などについて、27項目もの課題が列挙されている。

これだけの多方面にわたる施策を並行して進めるとなると、利害関係者の抵抗や対立も起こりやすい。昨年冬・春の農民の抗議活動炎上やそれに対する環境団体などの批判の声はその現れであった。とはいえ、そうした事態に対して、EUは、EU委員会と農業、食品部門、市民社会、農村コミュニティー、学界から 29 の主要関係者が参加する「EU農業の将来に関する戦略対話」を立ち上げ、同年9月には全会一致で報告書をまとめ上げた。そして、EU当局は、この報告書を踏まえて、今後の政策を進めると表明している。当局の努力もさることながら、共通の将来像を描こうと各方面の関係者が一堂に会し、それなりの結論を得たことに注目したい。

日本の課題と「令和の百姓一揆」

先には、欧州との共通性を強調したが、将来の食・農・環境について全体像を描く機運が希薄で、立場を超えた事実認識の共有が進んでいない点で、残念ながら日本の運動や農政は欧州の到達点に及ばない。

こうしたなかで起こった「令和の百姓一揆」は大きな一歩である。「令和の百姓一揆実行委員会」のネットページを見ると、この運動は、一回きりのトラクターデモに終わることなく、継続的に国民に農業の現状と課題を訴えていくという。問題認識の共有から、立場を超えた建設的な議論、そして国民的合意に基づく日本農業再構築のプログラムづくりへと発展していくことを願ってやまない。

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