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特集:創ろう食と農 地域とくらしを

2014.10.31 
【対談】多様性を生かし農業振興 三好幹二・愛媛県西予市長、村田武・愛媛大学特任教授一覧へ

・まずミカン販売力強化
・集落崩壊は地域消滅
・「国土守る」誇りを
・「脱原発」をめざして

 愛媛県西予市は、四国山塊に発する肱川の細長い流域にあり、多様な地形でミカン、米、畜産など多様な農業がおこなわれている。この多様性を生かした農業、地域づくりが特徴で、集落や旧小学校単位の住民の自立を促すため、自主的な活動を支援。そのため人と金を集中的に投入している。三好幹二市長に地域づくりの考え、施策について村田武・愛媛大学特任教授と話し合ってもらった。

集落支援隊
生き活き集落支援事業も

 

 村田 西予市は5つの町が合併した市で、中心となる大きな市や町があったわけではありませんね。

 三好 5つの町は対等で、まちづくりでどこかを中心にしようとは考えていません。この点、増田寛也・元総務相が唱える、拠点都市に機能を集中するという考えではありません。そうしたら地方でも東京一極集中と同じようになってしまうでしょう。

 

◆まずミカン販売力強化

村田武・愛媛大学特任教授 村田 重要なのは住民主体のまちづくりをどう進めるかですね。西予市を事業エリアとする東宇和農協の第2期農業振興計画づくりにかかわっていますが、まず温州ミカンの販売で重要な機能を持つ明浜共選場をどうするかが課題です。市長のお考えはどうですか。

 三好 明浜共選はロット(量)が少ないという問題があります。かつて宇和青果という広域の柑きつ販売専門農協があったのですが、これが総合農協に統合され、共選場はそれぞれの農協に属すことになりました。このため西予市唯一の明浜共選は量が減り、東京の太田市場での価格形成が弱くなったのです。
 しかし有機農業をめざして共選場から離れたミカン農家のグループでは、東京の生協などと取引きしてます。この違いは何でしょうか。市場原理からいえば明浜共選は負け組ですがミカンはいいものが取れます。販売力を高めるため、共選場単位で生産法人にするという発想があってもいいのではないかと考えています。

 村田 共選場が販売力を強化すべきだという要望は共選の組合員からも出ていますね。

 三好 隣の西宇和農協ではUターンや新規就農などで、柑きつ栽培に挑戦する人が増えています。いま柑きつは農家数が減ったことで生活できる規模が実現できる環境になりつつあります。農協はこれを受け止め、若い人を受け入れる体制をつくる必要があります。

 村田 共選場に対する総合農協の指導力について期待が高まっています。農協がしっかりして産地ブランド力をつけなければなりません。そうしないと農家が生産に意欲をなくし、ミカン園の管理も疎かになります。

 三好 そうです。価格面で刺激を与えなければなりません。農協は協同の意識があり、互助によって強い力を発揮しています。大いに期待しています。

(写真)
村田武・愛媛大学特任教授

 

◆集落崩壊は地域消滅

三好幹二・愛媛県西予市長 村田 市長は西予市の農業についてどのようなイメージを持ち、実現しようと思っていますか。

 三好 柑きつ、米、酪農、肉用牛、さらにクリ、シイタケなどがあり、西予市は多品目の産地です。しかし、どれもロットが小さく分散しています。これをどう組み立て、それを西予のブランドにするかが課題です。
 それにもうひとつ、戦後、西予市では米、柑きつ、そして宇和海での真珠養殖が基幹農水産物に育ちました。ところが輸入自由化と米の生産調整・減反、さらに円高で真珠の輸出が困難になりました。この結果、地域経済の、経済成長とのギャップが年々大きくなったという特徴があります。それを、食を根本にした取り組みで、いかにして埋めるか。地域農林水産業の課題だと思います。

 村田 そうした影響は、いつごろから大きくなりましたか。

 三好 減反の始まった昭和46年ごろでしょうか、、米が1俵(60kg)1万8000円前後のときです。それがいま、1万2000円を割り、今年のように農協が1万円以下の仮払いしかできないとなっては、生産者はもう米は作れないといっています。こうした事情を国や消費者にも理解してもらいたいものです。
 政府は経営規模拡大をといっていますが、これは失敗すると思います。規模拡大には土地を購入するなり、借地するなりしなければなりませんが、その減価償却を計算すると潰れてしまいます。

 村田 稲作面積3〜5haだと、米生産費は1俵(60kg)約1万4000円、愛媛県は全国一高く2万1000円台です。1万円以下の米価では生産は大赤字ですね。いま集落営農はどうなっていますか。

 三好 農業と地域の維持は集落営農が基本です。農協の協同の精神もそこに根本があります。農協は集落から、代表である総代を選出しており、集落営農がなくなると地域が崩壊し、農協が消滅します。

(写真)
三好幹二・愛媛県西予市長

 

◆「国土守る」誇りを

 村田 市長のいわれるように、西予市の農業振興は多様な作目を生かし、西予のブランドを確立することです。幸い西予市はジオパークの認定を受けました。海岸の急傾斜地の段畑から四国カルストまで、多様な地形と、多様な歴史文化と住民のくらしがあります。これと連携した産業興しという点で、それはまさに環境にやさしい農業の構築でしょう。いま四国カルストの大野ヶ原開拓農地で計画している牛糞を原料にしたバイオガス発電は新たな耕畜連携につながります。

 三好 畜産が盛んなので耕畜連携には期待しています。畜産農家と飼料栽培をつなぐコントラクター事業も始めました。西予市には珍しい地質の自然に加え、文楽や「乙亥大相撲」、どろんこ祭りなど多様な文化があります。それに藩政時代からの歴史的な街並みも有名です。これら「多様性」な自然や文化をPRしていこうと思っています。

 村田 西予はまず、農業で総合産地をめざし、次は、多様性を生かしたジオパークづくりでいくべきではないでしょうか。
 三好 市長になったとき、一番問題だと思ったのは過疎が進んで限界集落が増えたこともありますが、住民の「心の空洞化」です。そこに住み、農業や林業を営むことで国土を守っているのです。もっと誇りを持ってもいいのではないでしょうか。
 西予市には「生き活き集落支援事業」があります。これはそれぞれの集落の自主的な活動を支援する事業です。また「せいよ地域づくり交付金」制度を設けました。旧小学校区単位で、地域の課題解決や次世代につなぐための事業が対象で、官主導でなく、自分たちのことは自分たちで行う精神を養うためのもので、ここに市の職員を地区ごとに張り付け、事務局として支援しています。
 さらに総務省の「集落支援隊」の事業で、5年前に若い支援員を採用しました。最初3人で、今は7人が集落で頑張り、特に高齢者に喜ばれています。何人かはそのまま定住しています。

 村田 高齢者が多いだけに、支援隊の意義があります。ほかにも全国にさまざまな情報を発信していますね。

「日本一の小さいキャンパスかまぼこ板の絵」コンクール 三好 山間部の城川地区で「日本一の小さいキャンパスかまぼこ板の絵」コンクール(=右写真参照)を行っています。毎年、全国から1万2000点前後の作品があります。これは「日本一短い手紙」で知られる福井県の坂井市とコラボで、全国で作品展を開いています。

 

◆「脱原発」をめざして

 村田 市長は脱原発をめざす首長会議の活動もされています。

 三好 伊方原発から30km以内に西予市人口の70%が入ります。原発は廃止しても完全な廃炉のためには何十年もかかり、その後も廃棄物の処理に時間がかかります。この間、雇用が発生するわけですが、これでは自治体は最後まで原発から抜け出せなくなります。これは自治体のあり方として、また住民の暮らしにとっても大きな問題です。


(特集目次は下記リンクより)
【特集 食と農、地域とくらしを守るために】農協が地域を創生する

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