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特集:緊急特集:「小泉進次郎が挑む農政改革」批判

2016.03.30 
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現場からの批判3 インタビュー・JA愛知東 河合勝正代表理事組合長

 農業・農政改革はどうあるべきなのか、さまざまな立場から、さまざまな意見が出されているが、愛知県奥三河の農山村地帯で過疎とも戦いながら協同組合精神を貫いて地域の自立に全力をあげているJA愛知東の河合勝正組合長は、「目的は同じでも手段を間違えれば、この国の命取りになる」と考えている。そして改めて、農協とは協同組合とはどういう組織であるのかを考える必要があると強調した。

◆まず農村の実態を知ることから...

JA愛知東 河合勝正代表理事組合長 ――小泉進次郎自民党農林部会長の農政や農協改革についての発言をどう受け止めていますか。

 小泉さんが言っている「3つの公約」について、多くを否定するつもりはありません。しかし、目的は同じでも手段を誤るとこの国の命取りになります。
 生産農家や農協の実態をよく知ったうえで政策を実行しないと、上っ面だけでやると農家に「首をくくれ」ということになりますし、農協組織の自主性も失われることになります。。
 そうならないために、農業地帯や農協組織に足を踏み入れて、効率だけでは生きられない日本の農業や地域の実態を知っていただきたいと思います。
 日本の農業地帯の大半は中山間地域ですから、そんな地域では効率性を求めようもありません。そして南北に長い島国・日本の農村、農業のあり方は一律ではありませんから...。


◆地域のライフライン守る農協

 ――農協改革についてはどのように評価されていますか。

 農業協同組合が誕生して68年経ち、時の政治権力によって改正農協法が4月から施行されます。そして、農協運動の指南役であった全国農協中央会が、一般社団法人化されますが、農協法附則のなかで監査権を除く一定の権限は、概ね残されたものと理解しています。
 もともと協同組合は、自主・自立・互助の精神下に成り立ってきた組織です。いま全国に674の総合農協がありますが、いずれの農協も手段の違いはあっても、協同組合の理念を重視し、それぞれの地域に合った色を出しながら、地域や組合員とともに歩んできたことは間違いようのない事実です。とくに、中山間地をエリアとする私どものような農協は、農村地域の最重要インフラとして、その機能と役割を長年にわたって、それなりに果たしてきたと自負しています。
 地方創生といわれますが、JA愛知東の3分の1の事業所は赤字です。しかし、半径10km以内に店はない、ガソリンスタンドもない、交通手段もないなかで、独りくらしや二人くらしのお年寄りが役所に行こうにも80歳を超えれば運転免許も取り上げられるわけで、どうやって移動すればいいのか。そして国や行政のサービスもそういう地域にはどんどん薄っぺらくなっていく。そういう過疎地で、物資や年金を届けてあげたり、安否確認をするとかの役割を農協がになってきており、農協以外にライフラインがないという地域も増えてきています。
 そうした中にあって、戦後の農村や農業の姿といまは大きく様変わりしており、農協改革の必要性も十分に理解しなければいけないと私自身も感じています。しかし、安倍政権は「地方創生」を政策の大きな目玉としながらも、あまりにも経済成長や効率性に軸足を置き過ぎた改革路線を歩もうとしているのではないかと、不安に思います。
 強い者だけが勝ち残る国家覇権主義の惨憺たる結末は、過去の歴史が証明していることも承知されていると思いますが、自由・平等・博愛のフランス革命の3色旗のようにバランスを考慮した政治思想にも目を向けて欲しいものです。


◆一番の心配は「城は内から崩れる」こと

 ――これからの農協組織はどうあるべきだとお考えですか?

 すべての協同組合思想や組織を否定するような社会の到来は想像したくないのですが、組織の栄枯盛衰は、自らの意志や行動に起因するところが大きく「城は内から崩れる」といわれています。
 経営指標とか財務諸表も大事ですが、それに軸足を置き過ぎると、経済合理性、競争原理によって立つ株式会社と変わらない組織になってしまいます。経済合理性や競争原理だけでは、協同組合は成り立ちません。正組合員資格の無制限緩和など、気を付けないと「農業協同組合ってなんだ」ということになり、自分たちの城を自ら壊してしまう。
 これが私の一番心配していることです。そうならないために、いまはいい機会だから、農協も農業者目線、農村目線で、何ができるかということを、改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。もちろん現在は、農協が誕生した戦後直後とは状況が違いますが、日本の農業・農村をどうしたら守れるのか、そのために何ができるのかと考えながらやってきた農協協組織の生い立ちも含めて、どういう組織だったのか、よくよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 ――協同組合についての教育が大事になりますね。

 農協とは何かという教育を疎かにしてきた面はあると思います。職員教育が、経済とかコンプラに軸足を置いてしまって、協同組合論とか農協人を育てるという教育が薄くなってきているのではないでしょうか。農協のことを「会社」という農協職員が全国的にも多くいると聞きます。私はうちの職員に「サラリーマン化してはだめだよ」「農協人とは、地域や組合員の目線で考え、何ができるかを考える」ことが基本であって、役人化・サラリーマン化したところに、協同組合の精神は宿らない、と常にいっています。
 正直・誠実・他人への配慮の精神が大事であり、倫理観のないところに協同組合は成り立たないと思っています。また、目的のないところに手段は成り立たないことを常に意識しています。


◆いまこそ自信と誇り取り戻すとき

 ――農協人として、協同組合人として誇りと自信を持つことですね。

 いま進めている私たちの自己改革が、「亡国の農協改革」とならないためにも、いまこそ組織の主役である組合員と役職員が、組織の存続意義も含めて、しっかりとした自己点検を進めて、協同組合であることへの自信と誇りを取り戻すべき手だてが必要ではないかと感じています。
 同時に、行き過ぎた競争原理社会にあって、協同を尊ぶ社会概念の存在は、自然界や人間社会においても、普遍的真理に値する考え方であり、正しい歴史認識にたっての政治のあり方の一つとして、時の政権に訴え続けていく必要があると考えています。
 そして、農業は生命産業の源であり、農村はその創造の場です。その農村の人・組織・地域が元気になるために何ができるのか。何をしなければいけないのか。それを地域を思い愛する組合員と一緒に考え、一緒に実践すると同時に、行政や諸団体とも連帯連携し、内発的な真の地方創生に寄与していきたいと考えています。

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