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農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で

農業新時代を拓く協同の力 JAは地域の母胎2016年10月5日

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星寛治

 今年は、お盆過ぎの夏台風から始まって、一カ月に4つの台風が襲来する異常事態に直面した。出穂後の稲や果樹などに深甚な被害を蒙るのではという心配と、強いストレスの続く日々を過ごした。九州、岩手、北海道など大雨、洪水の大被災を受けた農家の窮状に心が痛む。私の地域は、幸い直撃は免れたが、秋雨前線も加わって彼岸からの長雨が居座り、稲刈りができず嘆息の日々だった。

 星 寛治 漸く9月末日、久々の晴れ間が訪れる。朝露を宿した庭のコスモスがきれいだ。見れば奥羽の屋根を包む青空と雲の形は、すっかり秋の遠景に変っていた。足元から広がる黄金色の稲田に安堵し、私は朝日に誘われるように山裾の畑へと軽トラを走らせた。秋の野を行くほど、その風景の変貌にがく然とする。標高300mの中山間地の田んぼは、虫喰い状に放棄されて原野化が進む。葦、芒、柳、潅木へと一気に被われてしまう。ただ、牧草やそば畑で農用地を維持している所は、辛うじて救われる思いだ。けれど戦後の農地解放と食料増産の気概に燃えた往時の美観は消えてしまった。農家の高齢化と担い手不足が、風景の衰退につながったのである。路傍に立つ「熊出没中。注意」という幟(のぼり)が、人と野生動物の棲み分けがうまくいかない象徴のようにはためく。ちなみに、わが家の耕作地も一頃の半分(170a)に減らしていた。豪雪で潰れたぶどう園の跡地や、私の就農時に開田した所は、近くの2戸の酪農家に委託し、牧草地として活かされているのだが。
 一方、平場の美田地帯でも、ホールクロップサイレージの白い連なりが目につく。米の需要減で、飼料用米への転換が施策化され、高畠町内でも今年51㌶が実施された。飼料用稲作協議会で受委託を調整し、機械利用組合の設備を共同利用する方式で進展している。但し、30年度以降、転作助成金が無くなるとすれば、えさ米づくりは難しい。また、TPPで乳製品の大量輸入ともなれば、酪農経営は苦境に立たされ、自力での耕畜連携は困難である。そのとき、水田の耕作放棄は劇的に進むのではなかろうか。JAが受け皿となり、生産活動を担う場面かもしれない。

◆JAは、生産とくらし、地域の母胎

 猫の目農政といわれたように変転する政策に振り廻される中でも、地域農業と住民のくらしを護り通してきたのは農協の力だった。その大事な存在を安倍政権は既得権益の象徴のごとく岩盤と稱し、風穴を開け、解体を図る。
 まず、全中を反TPPの牙城と見なし、農協法を改定して社団法人化した。続いて全農を株式会社にし、総合商社化を図る。この大鉈(なた)は、国連の定める「国際協同組合年」(2013)、「国際家族農業年」(2014)、「国際土壌年」(2015)の世界的な流れと真逆の方向をめざすものだ。アベノミクスの「攻めの農業」は、グローバリズムの荒海で生き残るべく、経営体の大規模化とコストダウンを強要する。具体的には、法人化した大きな経営体に8割の農地を集積し、国内生産の大半を担わせる構造改革を推進する。まさに国家権力による「現代の囲い込み運動(エンクロージャー)」のようだ。そして、農業を成長産業に育成すべく農林水産物の輸出を増やし、2020年に1兆円達成をめざすという。けれど、榊田みどり氏によれば、世界のジャポニカ米貿易量は60万㌧程度で、さらに日本が期待する高級米は1割(6万㌧)未満に過ぎない。つまり、輸出による米市場の伸びしろは極めて小さい。
 「攻めの農政」の大きな欠陥は、農業の目的を経済価値の追求に特化し、新農基法の精神である多面的機能の役割を無視していることだ。国民の生存基盤である食料を生産しつつ、環境と美しい景観を保全し、ふるさとの伝統文化を継承してきた主役は、家族農業と協同組合の主体的な力である。新農政は、その家族農業を埓外に追いやり、財界の意向を体し、大胆な規制緩和で企業の参入を促す。はたして儲けの論理だけで、これまで住民が汗を流して護ってきた豊かな地域環境を維持できるだろうか。
 正念場に立たされた今日、圧力をはね返して、協同組合の総合力を発揮し、難局を打開する他に道はない。

 
◇   ◇

 私たちは日ごろ依存している購買事業の分野では、何より生産資材(種苗、農機具、肥料、農薬、作業衣など)を予約、直接購入するとき、確かな品質を保証し、安心して使える強みがある。プロの農家に限らず、自給農家、生きがい農業にも幅広く対応し、ニーズを充たしてくれる。ただ、有機農業、環境保全型農業分野の品揃えも充実して欲しい。農協の自己改革による資材価格の引下げも期待したいところだ。
 JAは、生協と共に生活面の充実に大きな役割を果してきた。家庭の生活必需品(食品、衣料、洗剤、介護、医薬品など)の宅配は実にありがたい。とりわけ、少子高齢化が進む山村僻地では、JAの移動販売車が唯一の頼りで、また楽しみだと語るお年寄が多い。また、JAやまがたでは、支店閉鎖地区に移動金融車"ふれあい号"が出張し、便宜を図る取組みを始めた。
 また、共済、保険の内容充実も、安心生活の支えである。建物、農機具、病気、事故、災害など、非常時の備えは当事者にとって身にしみる配慮である。
 もう一つ、直売所の魅力がある。生鮮野菜、魚介類、きのこ、手作りの加工品など、多品目少量生産の作品が所狭しと並ぶ。地産地消の拠点として、旬の風味を楽しみ、コミュニケーションの場にもなっている。

 
◇   ◇

 全国にすぐれた事例は多いが、訪れる度に新鮮な発見とヒントをもらえる所に、新潟県阿賀野市笹神地区がある。その中心に、元農協職員石塚美津夫氏の存在がある。まず、地域資源の循環システムを構成するため酵素水を用いた大規模な堆肥センターを造営した。続いて6次産業化の先駆けとして、最新の技術を取り入れた豆腐工場造り、無添加の製品を鮮度を保って消費地に届ける。加えて、餅、納豆、漬物など、多彩な加工品を作り出す。
 その背景に、パルシステムや新潟総合生協との協同組合間提携がある。年間を通した都市と農村の交流を実践し、コテージや民宿などの宿泊機能も整備している。加えて、温泉、保養、地ビールのレストランなど、癒しと楽しみの場にも事欠かない。さらに驚くのは、山の辺の路には句碑、歌碑などの文学碑や、著名人の人生訓を刻んだ石文(いしぶみ)まで数多く建立した。産業と福祉、観光と文化まで融合した村づくりが、JA主導で展開する姿に感銘を覚える。

◇   ◇

 近年、温暖化に起因する気象異変と生産環境の悪化は、留まるところを知らない。このままでは近未来に地球規模の食料危機が予見されよう。加えてTPPの大津波が押し寄せる気配だ。多国籍企業の触手をはね除け、ふるさとの荒廃を全力で阻止しなければと思う。置賜自給圏構想は、新たなローカリズムによって地域再興を計ろうとする。また、長く続けた生消提携を、さらに強靭な絆で結び直し、活路を拓きたい。その上に、協同組合間提携のダイナミズムに生協、漁協も合流し、公正取引きの推進軸になり、住民生活と地域社会の守護神になって欲しい。組合員こそ主役であるが、協同組合の理念は、ひとり構成員の福利増進にとどまらず、公正な社会の実現にあるとされる。市場原理一辺倒の新自由主義は、農業、農村には馴まない。格差と貧困の増大する状況を座視せずに、地域に密着した単協を砦に、県連、全国連の組織力を総動員して、歴史的な難局をのり越えて頂きたい。地方活性化の指標は、その地域にどれだけ多くの農家が残るかだと、私は考えてきた。本来、家族農業の組織体であるJAを基軸として、新たな農業の沃野を拓く時代が訪れた。

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