農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者
【迫る食料危機】地域に張り付く農協 農業守る運動主導を 山田俊男参議院議員(自民党)2022年8月8日
農水省はこの秋から食料・農業・農村基本法の検証作業を本格化させる。食料安全保障の強化に向けて何を議論すべきか、谷口信和東大名誉教授が政治家に聞く。今回は自由民主党参議院議員の山田俊男氏と立憲民主党代表代行の逢坂誠二衆議院議員、日本共産党農林・漁民局長の紙智子参議院議員を訪ねた。1回目は山田議員へのインタビューを紹介する。
自民党 山田俊男参議院議員
実態議論しない規制改革推進会議はなくすべき
谷口 自民党の食料安全保障に関する検討委員会が、当面の対策だけでなく基本法にまで戻って考え直そうと提起したことは評価できると思います。私は2001年のBSE問題を契機に、現行基本法では単に「食料」としているのを「安全な食料」の「安定供給」が国の責務、と見直すべきだと言ってきました。新たな課題の登場に応じて基本法は柔軟に変えるべきだと思います。そこで今日は日本農業の根本的な課題をどう考えるかお話しいただきたいと思います。
山田 やはり高齢化が進み、離農が進んでいることです。これをしっかり認識しないと担い手はいなくなり農村は荒れるだけです。
しかし、規模拡大すればいいという議論が相変わらず強く、自民党の議論ですら基幹的農業従事者が大事だという話になってしまう。
どうも規制改革推進会議の農業の大規模化、株式会社参入の意見に影響を受けてしまっているようですが、私は規制改革推進会議自体をなくすべきだと思っています。
今は、2008年以来の食料危機になっていますが、極論ですが、規制改革推進会議の主張だと日本に農業はなくてもいいのではないかといった雰囲気さえ感じます。しかしウクライナ問題で食料安全保障への関心が高まってきました。そのように揺り戻しが来るのであれば、政権党である自民党はどんなかたちでそれに対処するのか、方針を早く作らなればなりません。
そこで森山裕先生を中心として食料安全保障に関する検討委員会を作り、現地視察もして勉強もしながら議論を重ねてきました。ただ、連日のように議論するという雰囲気ではなく、とくに農林水産省が動かない。食料の安定供給を本当に考えているのか、と言わざるを得ません。
谷口 農協陣営も農協改革のときにはがんばりましたが、その後のがんばりが足りないのではないですか。大人しくなったと思います。もっと言うべきことは言う必要があります。
山田 確かにそうですね。規制改革会議は、農協改革、そして株式会社の農業参入、農業経営の規模拡大をまともに実態を議論もせずに言い続けている。それにきっちり反論しなければなりません。その意味では自民党がそれをやらなければなりませんから、食料安全保障に関する委員会も立ち上げたわけです。われわれも精力的にそれを動かすことが必要だし、そのためには農水省がもっと積極的に関わらなければなりません。しかし、それが見えてこない。
国民の主食である米について「政府は責任を放棄」
谷口 問題提起をするのは政治家の役割であり、それが今回は食料安全保障の強化です。それについて農水省はふさわしい情報と方向性についての柱を出すべきですが、それを示そうとしないというわけですね。
山田 政府の責任を明確にしないまま進んでいる農政の1つが生産調整の廃止です。正確に言えば「政府としては生産調整の目標を示さない。後は生産者やJA関係者が自主的に考えてください」ということです。
その結果、需給緩和が生じて米価が下がっても「それは生産者みなさんの判断でしょう。どうぞ受け止めて下さい」ということだと思います。
要は、需給や価格について政府として責任を持たないということです。これはどういうことか。言うなれば国民の主食である米について「政府の役割を放棄する」ということです。政府として最低限の責任として需給計画を示すとしていますが、実質的には価格の乱高下や、その責任を持つことを考えているわけではありません。何らかのかたちで需給計画を示せば計画の責任が問われかねないので、関与しないということなのでしょう。
国は一定の備蓄を持ち天候や豊凶による過不足の調整をするとしていますが、これとて最小限のものを準備するだけです。しかし、豊凶は毎年あるわけですから、主食たる米の需給変動による価格の騰落に国としてどう取り組むのかが問題になるわけです。当然、政府はどんな方策があり得るのか、何を準備しておかなければならないか、程度の問題はあるにしても、国民の理解を得られる政策を考えて実行に移すのが政権の責務です。
しかし、どうも可能な限り国内生産で食料の安定供給を実現していこうという強い意思が感じられません。いまだに、安上がり農政、つまり、海外から食料を輸入すればいいのであって、高コストの日本農業を補助する必要などないという考えがあるのではないのか。それを本当に変えなければならない。
地域に張り付く農協が力を発揮する運動が不可欠
谷口 結局、「安い」のがいいという考え方です。企業化して大規模にして、外国人労働者を雇う。この路線です。しかし、東北で日本最大規模の飼料用米倉庫を所有している養豚法人の経営者は、地域の他企業より高賃金にしたから優秀な労働力が確保できている、と言います。そのように経済の組み立てを変える必要があります。また、輸入飼料が高騰しているなか、国産飼料を使っているので助かっているといいます。実際、国内で出回る飼料は何も高騰していないわけですから、こうした動きを拾い上げる必要があります。
山田 そういう動きを含め、農協組織はもっと確信を持った思想を打ち出していいと思います。つまり、地域全体の生産の絵をどう作るかということが問われているわけです。そこに農協の存在、役割があります。日本農業のあり方を考えていくには、地域に張り付いた農協組織が力を発揮する農協運動が改めて不可欠だと思います。
地域の中で農地と農業生産を守る運動を
谷口 今回の基本法の見直しの議論の論点は、10年程度にわたり持続的な農政の方向を決めるということだと思います。その典型が飼料用米の政策です。畜産農家にとっても安定した飼料が確保できるかという問題です。
山田 畜産農家が地域の耕種農家と連携して、地域農業を持続させていこうという動きを支援するという政策が必要ですね。
谷口 結局それが地球温暖化対策にもなる。そのように農業政策のあり方を大きな課題に結びつけていく。それを国民に問い、飼料用米政策も含め農政の基本を考えていくべきだと思います。
山田 そうすれば、畜産と結びついた山間地の農地の利用もできる。農地を荒らさずに済むということになります。
改めて国土をどう利用するか、環境保全をしながら食料生産をどう確保するか、という提起をすることが食料安全保障の議論に必要だと思います。そのために日本中をいきなり改造するなどということではなく、このままでは地域が崩れてしまうという危機感のもと、担い手を地域で支える仕組み、あるいは地域自身で農業を支える主体を作りあげて、日本に必要な農産物を作っていくことを支援する農政が必要です。
先日、私のふるさと富山県の景観に改めて感動しました。雪渓に包まれた山々から平野に向かって黄金に輝く大麦の地帯、そして緑の稲の地帯が広がり、そして海に向かう田んぼは長いうねが並び大豆が芽を出していました。JAの組合長らにその感動を伝えると、あらかじめ計画があったわけではなく、営農組合や自治体、JAが協議して取り組むなかでその見事な景観を作り上げてきたと聞きました。
基本法の条文をどうするかということよりも、このように地域のなかで農地と農業生産を守る運動を作り上げていくことが、これからの国のかたちにも関わることだという問題提起をしたいです。確かに農業経営のためには資金や基盤整備が必要ですから、そこは国が支援するという枠組みが必要ですが、同時に国民的な運動で農業を支えていくことがこれから重要なことだと思います。
谷口 政策の安定性と地域の自主性を重視することを次の基本法にどう盛り込むかが課題ですね。ありがとうございました。
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