農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第40回 水稲の防除<8>2020年2月21日
稲作も出穂期を迎える頃になるといよいよ終盤となる。この時期に発生する病害虫雑草は、米の品質と収量に大きく影響を与えるので、十分な注意が必要だ。
この時期の防除は、複数の病害虫を同時防除できる殺虫殺菌混合の散布剤が主に使用されており、それぞれのほ場で発生していたり、被害が予想される病害虫にあわせて農薬を選択する必要がある。
この時期で一連の病害虫防除が終了することから、仕上げ防除とも呼ばれている。また、雑草種子の籾への混入を避けるため、後次発生や取りこぼし雑草(何らかの理由で除草剤の包囲網から逃れることに成功したもの)の防除も主に散布剤で行われる。
以降、この時期に問題となる病害虫雑草の防除ポイントについて紹介する。なお、各病害虫雑草別の防除薬剤については、効果のある有効成分を紹介しているが、混合剤については、散布手段も含めて別途紹介する。
1.穂いもち
いもち病は、苗から穂まで水稲の生育期間を通じて発生するが、特に穂いもちは、品質や収量に大きな影響を与えるので、徹底した防除が必要である。穂いもちとは、稲穂に発生するいもち病の総称で、籾いもち、穂首いもち、枝梗いもちなどと発生部位で呼び分けられている。
穂いもちは、葉いもちが多く発生した場合や、出穂時期に感染好適日(高湿度、長雨)が長く続いたような場合に発生が多くなるので、そのような年には、早めの防除が必要である。
穂いもち防除は、本田散布剤(粒剤、粉剤、微粒剤F、フロアブル、ジャンボ)など他の病害や害虫との同時防除を狙って行われるのが一般的である。
近年は、田植え期に、長期持続型の箱施用剤を使用するケースが増えているが、発生が多い年などでは、箱処理1回処理では防除の持続効果が足りず、穂いもち防除が必要になる場合も多いので、そのようなケースでもカメムシ対策と合わせて穂いもち病対象の仕上げ防除を行うようにした方がよい。
いもち病をはじめとした病害に有効な殺菌剤で本田で使用する有効成分別に適用病害、特性を一覧できるように整理したので参考にしてほしい。
ただし、水面施用で使用する場合、出穂前に防除適期があるものが多く、適期を逃すと、全く効果がない場合が多いので使用時期については、農薬のラベルをよく確認して間違いのないように使用してほしい。
また、ストロビルリン系薬剤については、耐性を示すいもち病菌が各地に発生しているので、発生地では指導機関の指導に従って、系統の異なる防除剤の使用をお願いしたい。
2.変色米
変色米とは、籾に何らかの菌が侵入し、籾が変色してしまったものの総称である。原因の多くは、カメムシなどの加害により籾表面にできた吸汁跡から菌が浸入して起こることが多く、主なものに腹黒米(アルタナリア・糸状菌)や褐色米(カーブラリア・糸状菌)がある。その他、ごま葉枯病や籾枯細菌病など病原菌が籾に侵入して被害を起こすものもある。
変色米の防除は、カメムシの防除を徹底するとともに、原因となる菌の繁殖を抑える働きのある薬剤、つまり変色米に適用のある薬剤を仕上げ散布に使用することにより、変色米の発生を抑え、きれいな籾に仕上げることができる。
変色米病原菌の侵入は、開花期に起こることが多いので、出穂期から開花期の防除が最も重要である。薬剤ごとに防除適期が異なるので、それを逃さず防除することが重要である。農薬ラベルをよく読んで防除の徹底を行ってほしい。
主な水稲殺菌成分の一覧(クリックで拡大)
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