農薬:防除学習帖
野菜の害虫防除8 ハモグリバエ類【防除学習帖】第73回2020年10月16日
ハモグリバエ類は、その名のとおり、野菜の葉などに幼虫が潜り込み、葉の内部をトンネルを掘るように食害し、葉の機能を大きく低下させる。その幼虫が食害したトンネルがすじ状に、縦横無尽に走り、絵を描いたようになることから、俗称で「絵描き虫」とも呼ばれる。今回は、野菜に発生する主なハモグリバエ類について紹介する。
1.野菜類に発生する主なハモグリバエ類
野菜に発生し被害の大きいハモグリバエ類は、ナスハモグリバエ、マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、ネギハモグリバエである。いずれも、ハエ目ハモグリバエ科に属する害虫で、体長2mm程度(成虫)と微小で、色も似かよっているかとから、目視での判別は難しい。見分ける方法も虫の細かい部分を比べなければならないことから、生産現場で種を特定することは難しい。
また、前3種は、マメ科、キク科、ナス科、アブラナ科を始め、多種の作物を加害するが、ウリ科についてはトマトハモグリバエの被害が特異的に大きく、他のハモグリバエの加害は少ない。それぞれの生態を下表に整理した。
2.被害
幼虫が葉肉内に潜入し、葉の内側から食害する。その食害痕が外観を大きく損ね、商品価値が低下する。幼虫が多く寄生すると光合成が阻害され生育不良、減収が起こる。
また、成虫の産卵管で葉に孔をあけて汁液を摂食したあとや産卵痕が傷口となって汚れが発生して品質が低下する。
3.防除法
ハモグリバエの若齢幼虫は、葉の中に潜り込んでいるので、一旦潜り込んでしまうと浸透性の少ない薬剤では有効成分が害虫の生息域まで届きにくくなり、効果が悪くなる。 浸透性のある殺虫剤でも限りがあるので、できるだけ潜り込む前を狙った定期的な予防散布が重要だ。
その上で、耕種的防除や化学的防除を組み合わせて行うと効果的である。
(1) 耕種的防除法
ア.防虫ネット:施設の場合は、側窓や出入口、天窓に防虫ネットを張り侵入を防ぐ。
イ.ほ場周辺の雑草が発生源となるので、除草を徹底する。
ウ.移植苗に食害痕:を見つけたらその苗は使用せずに処分する。
エ.被害残渣(幼虫が残っている)は、ほ場外に出し、土中に埋めるか、可能であれば焼却するなどして処分する。
(2)薬剤防除
茎葉散布では、効果に定評があるアファーム乳剤、カルホス乳剤、コロマイト乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トリガード液剤やパダンSG水溶剤、ベネビアODといった殺虫剤を、発生を確認したらできるだけ早く散布する。これらの優れた殺虫剤でも多発すると効果が劣ってくるので、早期散布、発生前の予防散布を心がける。
粒剤処理では、アクタラ粒剤5、スタークル粒剤、ダントツ粒剤、モスピラン粒剤といったネオニコチノイド系殺虫剤を植え付け時処理すると初期の発生を長期に抑えることができる。
なお、表2にハエ目に効果のある殺虫成分を整理してみたので参考にしてほしい。ただし、殺虫剤ごとに農薬登録の内容が異なるので、使用前に必ず登録内容を確認し、適正に使用するようにしてほしい。また、作物別登録農薬一覧も整理したので、選択の際の参考にしてほしい。
ハエ目に適用のある有効成分一覧(クリックでPDFをダウンロード)野菜の作物別ハモグリバエ類登録農薬一覧(クリックでPDFをダウンロード)
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