農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(45)【防除学習帖】第284回2025年2月8日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
なお前号(283号)の表記に間違いがあったので以下のとおり訂正してお詫びする。
(3)グループ名:コハク酸脱水素酵素[グループコード:7]と表記されていたのは正しくは次のとおり。
[正しい表記](3)グループ名:SDHI殺菌剤(コハク酸脱水素酵素阻害剤)[グループコード:7]
14.QoI殺菌剤(Qo阻害剤)
(1)作用機構:[C]呼吸
(2)作用点: 複合体Ⅲ ユビキノール酸化酵素Qo部位
(3)グループ名: QoI殺菌剤(Qo阻害剤)[グループコード:11]
(4)殺菌剤の耐性リスク:高
(5)耐性菌の発生状況:複数の耐性菌が発生
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]メトキシアクリレート/アゾキシストロビン(アミスター)
[2]メトキシアクリレート/ピコキシストロビン(メジャー)
[3]メトキシアセトアミド/マンデストロビン(スクレア)
[4]メトキシカーバメート/ピラクロストロビン(ナリア・シグナムの1成分)
[5]オキシイミノ酢酸/クレソキシムメチル(ストロビー)
[6]オキシイミノ酢酸/トリフロキシストロビン(フリント)
[7]オキシイミノアセトアミド/メトミノストロビン(オリブライト・イモチエース)
[8]オキサゾリジンジオン/ファモキサドン(ホライズンの1成分)
[9]ジヒドロジオキサジン/フルオキサストロビン(ディスアーム)
[10]ベンジルカーバメート/ピリベンカルブ(ファンタジスタ)
(7)グループの特性:
このグループも病原菌が生命活動エネルギーをつくるするために必須の呼吸に関わる反応を阻害する。このグループは、複雑な呼吸反応の中の複合体Ⅲのユビキノール酸化酵素Qo部位の働きを阻害し、その結果、胞子発芽や菌糸伸長など正常な生長をできなくして効果を発揮する。糸状菌であるうどんこ病をはじめとした子のう菌類やアルタナリア菌等各種不完全菌類、卵菌類など幅広い病害に優れた防除を発揮する。
このグループの耐性菌発生リスクは高く、既に多くの病源菌に耐性菌が発生しており、同じ[11]グループに属する有効成分のいずれかに耐性を示す病原菌は、同じグループに属する他の有効成分にも耐性、いわゆる交差耐性を示す。このため、1つの有効成分に対して耐性である病原菌には、異なる有効成分であっても同じグループに属していれば効果は無い。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属する有効成分は10あり、唯一リスク係数が1であるフェモキサドンが基準年出荷量11.4トンを除けば、リスク係数0.316のピリベンカルブが最大の出荷量8.6トンであり、他の有効成分はリスク係数もそう大きくなく、基準年出荷量も少ない。
農薬の再評価制度の導入で使用できる殺菌剤が少なくなっている中、耐性菌問題の無い分野ではまだ使用できるグループであることから、これらは耐性菌対策に留意しながら使用する方が得策と考える。
下表には、このグループに登録のある病害名を記載し、どのような菌に活性があるかを示した。
これらはあくまで参考とし、実際の使用の際には使用する剤の登録内容をよく確認して使用してほしい。
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