農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
22.PP(フェニルピロール)殺菌剤
(1)作用機構:[E]シグナル伝達
(2)作用点: 浸透圧シグナル伝達におけるMAP・ヒスチジンキナーゼ(os-2,HOG1)
(3)グループ名:PP(フェニルピロール)殺菌剤[グループコード:[12]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低~中
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]PP(フェニルピロール)殺菌剤/フルジオキソニル(セイビアー)
(7)グループの特性:
このグループ[12]は、病原菌が生命活動を行う際に必要なシグナル伝達経路の一部に作用して、細胞の正常な働きを阻害し、正常な生存や増殖をできなくさせる作用がある。
シグナル伝達とは、細胞が外部の刺激を感知して、細胞内の機能を調節する仕組みであり、これにより、細胞の機能変化や遺伝子の発現を制御したり、細胞の生存や分化を調整したり、細胞の増殖や成長、運動、生存などの細胞反応を誘発させて細胞の運命を決めさせたりする。このシグナル伝達系の機能や役割は生物種によって多種多様であり、それぞれの生活環境に応じて生存戦略を発揮する働きをする。
例えば、野菜など多種多様な作物に病害を起こす灰色かび病菌は、本グループによってHOG1ヒスチジンキナーゼの働きを阻害されると分生胞子を作れなくなって正常な増殖ができなくなるといった作用を示すことが知られている。
本グループに属するフルジオキソニルは、予防効果が強く、残効性や耐雨性に優れており、主として炭疽病や菌核病といった子のう菌類や灰色かび病など不完全菌類、担子菌類であるリゾクトニア菌を病原とする病害に高い効果を示す。
このグループの耐性菌発生リスクは低~中とされているが、現在のところ、実用上問題となる程度に耐性が発達した事例の報告はない。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するフルジオキソニルのリスク換算係数は 1 であり、その基準年出荷量は、17.8トンである。本剤は、他剤に耐性を示す灰色かび病菌にも効果を示す貴重な殺菌剤であり、灰色かび病のローテーション防除剤として重要な役割を果たしていることから、本剤は削減対象とせず、耐性菌発達対策を徹底しながら有効活用する方が得策と考えられる。
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