「ポリアミン産生技術を用いた機能性食品の開発」で農芸化学技術賞受賞 協同乳業2020年7月29日
協同乳業(株)の松本光晴主幹研究員が取り組んできた研究「腸内細菌叢の代謝制御によるポリアミン産生技術を用いた機能性食品の開発」が、日本農芸化学会の2020年度「農芸化学技術賞」を受賞した。
同賞は、農芸化学の分野において注目すべき技術的業績があり、かつ実用的価値のある業績をあげた会員に授与される。食品・バイオ産業界に従事する研究者を対象とした賞となっている。
今回の受賞は、複雑で個体差のある腸内細菌叢による生理活性物質(ポリアミン)の産生を誘導し生体に供給することで、健康増進効果を得るという先導的なコンセプトのもと、その技術を確立し機能性食品へ応用した20年間におよぶ研究が高く評価されたもの。
また、その過程で実施・発見した以下の点も評価された。
・2010年前後に、黎明期であったメタボロミクスを世界に先駆け腸内細菌叢の代謝産物解析へ応用し、食事の影響を除去する統一食摂取糞便解析法を確立。これらを用いて、ポリアミン産生誘導物質アルギニンの発見に成功した。
・アルギニンとビフィズス菌LKM512を用いた腸内細菌叢によるポリアミン産生技術を確立し、それを応用したヨーグルトを開発。合わせて、ポリアミン産生メカニズムとして「腸内ハイブリッド・ポリアミン生合成機構」を遺伝子レベルで明らかにした。
・マウス試験で、アルギニンとビフィズス菌LKM512の長期併用投与がポリアミン産生を誘導し、対照マウスと比べて寿命が伸長。また、高齢化した時の学習記憶力の成績がよくなることも明らかにした。
・ヒト臨床試験で、コンセプト通りに生理活性物質(ポリアミン)の腸内での安定的産生と生体(血液)への移行を確認し、増加したポリアミンの作用で動脈硬化発症プロセス初期に低下する血管内皮機能の改善効果が得られることを見出した。
・一連の研究成果の波及効果として、商品化による社会実装が評価されるとともに、腸内細菌叢の代謝産物の研究分野、ポリアミン研究分野、機能性食品分野へも強い影響を与え、これら分野の発展に貢献した。
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