食品流通 シリーズ詳細

シリーズ:激変する食品スーパー

2016.03.30 
【第12回】消費を起点とした需要拡大一覧へ

激変の先に何が待つ…?!

 これまで11回にわたって、食品スーパーの様々な取り組みや今後の方向性について説明してきた。大きな視座で食品スーパーの将来について考えてみたい。

◆二極化するスーパーの競争

 食品スーパー各社の業績は、一昨年の消費増税をモノともせず堅調である。衣料品や雑貨なども扱うGMS(総合スーパー)が赤字に苦しみ、店舗閉鎖や業界再編に向かっているのとは対照的である。しかし、業界内は安泰といった慢心は見えない。それどころか、競争は激しさを増している。
 地方では特に、その動きが顕著である。新規出店を積極的に進めるチェーンがある一方で、スクラップ&ビルド(※)でエリア内の店舗戦略を見直しながら競争力の強化に努めているチェーンもある。マーケットの寡占化(少ない競争相手でマーケットを取り合う構図)は進みつづけ、中小・零細企業は、その波にのまれる可能性が高い。
 しかしながらその全てが淘汰されるわけではなく、個性的な魅力を創出する地域密着型のチェーンは顧客の支持を集め、規模の拡大を進めるチェーンとは異なる形で存在感を発揮し、競争が二極化する可能性がある。
 また、競争軸では、依然として価格志向に対応したディスカウント型業態と健康や安心・安全志向に対応したグルメ型業態の2軸を中心として取り組みが進むだろう。お互いの軸が対立するのではなく、融合しながら、新たなスタイルでの店づくりが次々に生まれていくと考える。
 さて、供給面からは、食品スーパーにどのような影響が及ぶだろうか。一番の課題は生産者の高齢化と後継者不足であろう。


◆組織をあげた戦略的な農産物づくりを

 「農業センサス」によると、平成27年2月の概数値で、農業に就業する人の平均年齢は67.1歳で、その内65歳以上が65%を占めるとされる。あと5年この状態が続けば、間違いなく日本国内で生産された農産物の流通は激変する。欲しくても手に入らない状態が現実になる。
 一部報道では、ロボットやITを利用した生産の機械化や効率化が進み、農業就業人口が減っても生産量を確保できる可能性が指摘されている。さらに、合意されたTPPによって、価格競争力のある輸入農産物が入ってくる。
 これらを踏まえると、高齢化と後継者不足が個々の生産者に有利に働くかと言えば、そうとは言えないのはお分かりであろう。
 また、食品スーパーからの農産物に対する要求は厳しく、場合によってはこれまで以上に高度化する可能性が十分考えられる。
 競争に打ち勝つ品質や付加価値強化、ブランディングといった戦略的な農産物作りがこれからの生産者には欠かせない要素の一つになる。食品メーカーであれば、当たり前のようにこれらの戦略を立て、取り組んでいるのだが、こと農産物生産においては遅れていると言わざるを得ない。
 もちろん個人の取組みだけではどうしても限界があり、組織を挙げてどのように方向付けを行っていくか、組合ごとの戦略が大きなカギを握る。


◆農産物販売が不採算事業になる?

 また、消費面の動向も深刻である。日本は既に人口減少局面に突入している。東北のある都市では、1年間に1.5%の人口減少が起きている。このままのペースで考えれば5年間で7.5%減少する計算になる。
 先程も述べたが、このような状況下でも食品スーパーは出店攻勢を止める気配はない。つまり、1店舗当たりの売上が縮小するスピードは加速し、既存店舗では、昨年比で5~10%客数が減少しているところも少なくない。
 さらに1人当たりの食べる量も減っているので、農産物の需要そのものが減少傾向にある。野菜ではピーク時と比較して、年間30kg近く減少した。
 サラダの購買量は増えているが、野菜全体の消費増加まではカバーできていない。果物に至っては、消費量が世界最低水準レベルまで落ちている。その上、高齢化で胃袋が小さくなり、食べる量がさらに減る負の循環が生まれつつあることもまた、青果売場にとってのマイナス要素となっている。
 つまり、このままの状況が続けば、農産物の販売が不採算事業となる可能性もあるのだ。
 極論かもしれないが、青果売場自体の収益性の低迷は一部で発生しており、供給面だけでなく、消費面からも業界全体で問題を共有しなければならない。
 日本農業全体で消費を起点とした需要拡大が大きな課題と言える。


◆革新的な取組みに期待

 アメリカでは、1980年代から野菜の消費量は増加傾向にあり、その理由として5つのポイントを上げている(表)。

【日米における1人1年当たりの野菜消費量の推移】

日米における1人1年当たりの野菜消費量の推移

【米国において野菜消費量が増加した理由(1980年~2000年)】

米国において野菜消費量が増加した理由(1980年~2000年)

(3)と(4)については、以前詳しく説明したので割愛する。また、(5)については既に日本でもプログラム導入されている。ここでは特に(1)と(2)について、日本の実情に置き換えてみたい。
 (1)では、現状の日本において所得向上による消費増加は考えにくい。
 視点を変えて、顧客対象(ターゲット)の明確化について検討したい。つまり、ターゲットを絞り込むことで、商品の差別化をしっかり行い、食への支出を厭わない人や安心・安全志向への対応として品質や機能の強化、商品化への工夫といったアプローチが考えられる。これは個人的な取り組みで十分対応可能だが、近年では単組、農業法人、有志グループで取り組みが拡がっている。
 やはり目指すは高付加価値化である。小売からの販売データは多様に入手できる時代になっている。販売動向を踏まえた規格・商品づくりが期待できる。
 (2)の規模拡大による生産量の増加は、大規模化と価格競争力の向上を目指す動きとなる。一長一短あるが、農産物の国際流通が進めば、日本でも選択する生産者や団体が現れるだろう。抵抗感の強い部分ではあるが、農業団体として啓発普及や育成支援など組織的な取り組みが拡がれば、新たなチャンスが生み出される。規模の拡大を図る食品スーパーチェーンにとってもメリットが大きい。
革新的な取り組みを期待する。それを売る舞台に食品スーパーを有効に活用してほしい。

 (※)スクラップアンドビルド:築年数の経過した店舗を閉鎖・撤退させ、新たな店舗を構え、売上拡大や効率化を図る手法。同じ場所で行う場合もあるが、場所を移転して店舗網を集中させる、または集客力の強化を目指す場合もある。

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