北国のメロン栽培で実証実験 最新の水耕栽培技術とIotを活用 青森県つがる市2022年3月16日
青森県つがる市と県、地元生産団体らでつくる「つがるブランド推進会議」は、2020年7月から同市内のガラス温室で、メロンの通年栽培を目指し水耕栽培の実証試験を実施。2020年度は試験栽培に取り組み、2021年度は、栽培方法の改良・品種による比較を行い、2022年度以降は実用化と栽培の普及を目指している。
収穫直前(種まきから3か月程度)
つがる市産のメロンは、「令和元年 市町村別農業産出額(推計)データベース」で鉾田市・熊本市に次ぐ全国3位(約26億円)。国内有数のメロン生産地だが、農業従事者の高齢化や後継者不足により生産量も減少傾向にある。また、メロンの栽培期間が夏期に限られることから、収益性が課題となっている。
実証試験は、東京都町田市の町田商工会議所と協力10企業が連携して取り組む、最新の水耕栽培技術「町田式新農法」を導入。ガラス温室に隣接する温泉施設の温泉熱を利用し、冬期間は温室内の室温を調節して行われる。また、NTT東日本のスマート農業技術を活用し、Iotセンサー装置とIotカメラを導入。温室内の温度、湿度、日射量、水温、二酸化炭素濃度などのデータを常時測定している。スマートフォンやパソコンで栽培環境や温室内のライブ映像を確認でき、データを蓄積することで、経験や勘だけに頼らない生産や見回り業務など負担軽減を図れる。
地面に温泉の配管が通るハウスを試験場所として利用
試験栽培は、年3回収穫を行う栽培サイクルで実施。一般的な土耕栽培メロンでは一株からの収穫量は4個程度で、これまでの実証試験では、1株当たりの収穫量は夏場が約20個、冬場が約15個だった。将来的には、施設内の作付環境を改善しながら1株から30個の収穫量を目指している。
日本海側に位置するつがる市では、冬場の日照不足が大きな課題。これを補うため、これまで蛍光灯、LED、メタルハライドランプの3種の照明を使って補光効果を検証した。その結果、メロンの生育状況やコスト面においてLEDが最も適していたことから、現在はLEDの照明数の違いによる試験を行なっている。
糖度については季節・条件に関係なく概ね平均15度を維持しているが、玉の大きさのバラツキが散見される。メロンの品種ごとの生育状況や収穫量の違いについても試験を実施。過去4回の試験栽培で蓄積したデータを基に今期(1月播種・4月収穫)は、「地元主力品種の冬期栽培試験」と「光合成促進剤による生育比較試験」を行い、大きなチャレンジとして位置付けている。
現在、約30坪の温室内の栽培槽が4槽(1槽1株)あるが、8月上旬には、栽培面積を約120坪増やし、栽培槽を22槽に増加。より多くの条件下でメロンを栽培し、詳細な試験データの蓄積と分析を重ねる。また、継続的な出荷体制を確立するために2系統で栽培し、収穫量を2022年度は900玉程度、2023年度以降は1900玉程度を目指す。
今後は、実証試験の結果をもとに栽培方法のマニュアルを確立し、冬期間における農業者の所得向上と、新規就農の機会創出に繋げる。また、同市が東京都新宿区で運営しているアンテナショップ「果房 メロンとロマン」を含む首都圏への供給を通じて、青森県つがる市産メロンの知名度向上・消費者ニーズに対応した商品の開発を図る。
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