沖縄向けサツマイモ基腐病抵抗性新品種「おぼろ紅」育成 農研機構2023年11月20日
農研機構は、サツマイモ基腐病に抵抗性のある、沖縄向け加工原料用新品種「おぼろ紅」(系統名:糸系1)を育成した。主な用途となる紅芋タルト等への加工にあたっては、主要品種「ちゅら恋紅」と混用することで、濃い紫色を保ちつつ風味や食味が改善される。サツマイモ基腐病の被害に悩まされている沖縄県内の産地において、生産者は安心して栽培でき、原料の安定確保に寄与すると期待される。
基腐病発生ほ場での「ちゅら恋紅」と新品種「おぼろ紅」。
「ちゅら恋紅」は基腐病の影響で多くの株が枯死しているが、「おぼろ紅」では被害がほぼ見られない
沖縄県で生産される「紅いも」と称される紫かんしょは、観光客から人気が高い紅芋タルトなどの加工土産品として利用されているが、2018年に沖縄県でサツマイモ基腐病が初めて確認された。現在、沖縄県で栽培される紫かんしょ品種は「ちゅら恋紅」が全体の80%以上を占めており、「ちゅら恋紅」は基腐病に対しての抵抗性が十分ではない。
最近では、紅いもタルトの品不足が話題となり、基腐病の発生による県産原料いもの供給不足について複数の新聞報道で取り上げられるなど、この病害に対する地域の関心も高まっている。
このほど農研機構は、基腐病に強い沖縄向け加工原料用新品種「おぼろ紅」を育成。基腐病に対して「ちゅら恋紅」より強い抵抗性を示し、「ちゅら恋紅」と同程度の収量性と加工適性を備える「おぼろ紅」は、紫肉色の濃さの指標であるアントシアニン色価は「ちゅら恋紅」より低いが、食味が優れている。そのため、「おぼろ紅」と「ちゅら恋紅」と混合したペーストを使うことで、紅芋タルトの特色である濃い紫色を保ちながらタルトの風味や食味を改善できる。
農研機構では、島尻マージ土壌に比べアントシアニン色価が比較的高い沖縄本島中南部のジャーガル土壌での普及を予定。「おぼろ紅」の普及により、沖縄県における基腐病による被害が軽減され、原料の安定確保に寄与することが期待される。種苗提供の申し込みは随時受け付けている。
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