温室効果ガス削減効果を高めたダイズ・根粒菌共生系を開発 農研機構など研究グループ2025年9月8日
農研機構、東北大学、帯広畜産大学、理化学研究所の共同研究グループは、N2Oを分解する能力の高い根粒菌をダイズに優占的に共生させる技術を開発。この技術により、土壌中でダイズ根粒が崩壊する過程で放出されるN2Oの量が減少することを確認した。ダイズほ場からのN2O放出を抑えることで、地球温暖化の抑制に貢献することが期待される。
N2Oは二酸化炭素の265倍の温室効果を示す主要な温室効果ガスの1つ。人類の食を支える農業活動は人為的N2O排出量の約60%を占め(IPCC第5次評価報告書2013より)、その中でも農地からの放出が大きな割合を占めている。窒素は植物の生長に必須な栄養源だが、作物栽培のために農地に投入される大量の窒素肥料や、収穫されずに残る作物残さからN2Oが発生することが知られ、農地からのN2O放出量を削減する技術の開発は世界的に重要な課題となっている。
土壌微生物である根粒菌は、ダイズなどのマメ科植物が根に形成する根粒の内部に共生(根粒共生)して、大気中の窒素を栄養分として植物に供給する有用微生物。さらに、一部の根粒菌は、N2Oを窒素へと分解する能力をもつ。窒素は大気の主要成分で、温室効果に直接的な影響を与えることはない。
そこで、高いN2O分解能力をもつN2O削減根粒菌をダイズに接種して共生させることでダイズの収穫後、根粒が崩壊する過程で放出されるN2Oを削減する試みがなされてきた(図1)。しかし、ほ場の土壌中には多種多様な土着根粒菌が存在し、その多くはN2O分解能力をもたないか、弱い能力しかもっていない(図1)。
図1:N2O削減根粒菌と土着根粒菌
ほ場にダイズを植え、N2O削減根粒菌を接種すると、土着根粒菌との感染競合が起こり、大多数の根粒には土着根粒菌が共生する結果、N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合が低くなり、N2O削減能力を十分に発揮できなかった(図2左)。
図2:N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合を高めたダイズ根粒共生系の開発
そこで共同研究グループは、根粒共生にみられる「共生不和合性現象」を利用して、N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合を高めたダイズ共生系を開発した。
不和合性現象は、特定の「不和合性遺伝子」をもつダイズが、特定の根粒菌が分泌する「エフェクター」と呼ばれるタンパク質を認識して、その根粒菌の感染をブロックし、根粒の形成を阻止する現象。共同研究グループは、2種類の不和合性遺伝子をあわせもつダイズを作出するとともに、 自然変異によりエフェクターを作らなくなったN2O削減根粒菌を選抜し、両者を組み合わせた。この組み合わせにより、エフェクターを作らないN2O削減根粒菌は、不和合性遺伝子をもつダイズに優占的に共生することができる(図2右)。
その効果を実験室で調べたところ、不和合性遺伝子をもつダイズでは、N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合(根粒占有率)が90%以上となり、土壌から放出されるN2O放出量は、不和合性遺伝子をもたないダイズの15%にまで減少した。さらに、ほ場試験においてもN2O削減根粒菌の根粒占有率は64%となり、N2O放出量は、N2O削減根粒菌を接種していない試験区の26%にまで減少した。
ダイズは、食料や飼料、油糧作物として世界中で幅広く栽培されている。もともとダイズの栽培は温室効果ガスの放出が少ない食料生産システムだが、今回の研究で開発した技術によって、ダイズほ場から放出されるN2O量が大きく削減されることで、環境負荷の少ないダイズ生産が可能となり、地球温暖化の抑制に貢献できると考えられる。
同成果は9月4日、科学誌『Nature Communications』に発表された。
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