稲わらを石灰処理後に高密度化 CaPPAプロセスを開発 農研機構2025年10月16日
農研機構と足立石灰工業は、石灰処理後に稲わらを圧縮し体積を抑える「CaPPAプロセス」を開発した。このプロセスによる高密度な加工物は、輸送・貯蔵性に加えて糖化特性も向上しており、地域のバイオエタノール製造原料として、より供給しやすく、備蓄しやすく、使いやすくなる。
稲わらは、発酵性の糖を含むことから、これを取り出してエタノールに変換することで、環境価値の高いバイオ燃料や化成品原料などとして利用できる。しかし、稲わらは空隙が多くかさばるため、梱包しても輸送・貯蔵の効率が悪く、現状では利用現場まで安定供給できずに多くがほ場に残されている。
この課題を解決するため、稲わらを梱包後に近隣地域内の原料加工拠点まで短距離輸送し、そこで一次加工・高密度化するシステムの構築が求められている。
農研機構と足立石灰工業は、稲わら裁断物が常温下での石灰処理により圧縮しやすくなることを見出し、この処理法を「CaPPA(Calcium hydroxide Pretreatment for Pressing Agricultural by-products:農業副産物を加圧するための消石灰前処理)プロセス」と名付けた。この方法で改質した稲わらを加熱加圧すると、改質前(見かけ密度0.1 g/cm3)に比べて密度が向上した(見かけ密度0.23 g/cm3)(図1)。
図1:石灰改質後の稲わら裁断物を加熱条件下で加圧した板状試料の外観
(上下方向からの加圧後の試料を横方向から撮影したもの)
CaPPAプロセスは高密度化特性に加え、稲わらの利用価値も大きく高める。まず、石灰改質によって稲わらが大幅に酵素糖化されやすくなる。安定な糖化特性をもつ高密度なペレットに加工することで、貯蔵性と計量性(安定した品質をもつ原料の計り取りやすさ)を備えた直接糖化可能な原料として、大規模バイオエタノール製造工場向けのみならず、自治体、中小規模事業所などでの多様なニーズに応じた供給が可能になる。
また、貯蔵性の高いペレットなどを長期間備蓄することで、現在、「炭素プール」としてカウントされている伐採木材製品と同様に、農業由来の新たな脱炭素メリットを訴求できると期待される。
今後は、原料加工拠点候補の石灰製造企業などとの連携を図りながら、CaPPAプロセス技術の高度化と実証に向けた検討を進める。さらに、小規模から導入可能な糖化・発酵技術およびその装置・設備開発をバイオ企業等と連携して加速し、地域発の脱・低炭素および日本型バイオエコノミーの新展開につなげていく。
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