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肥料危機に現実味 離農せざるを得ない農家も 資源リスク直撃 農中総研基礎研究部主任研究員 小針美和氏2022年6月22日

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ロシアのウクライナ侵攻を発端に世界秩序の崩壊や市場隔離、さらに日本では円安なども重なり生産資材価格の上昇が止まらない。先行きが不透明のなか、農家の危機感も募る。農林中金総合研究所基礎研究部主任研究員の小針美和氏に「肥料価格高騰と国内農業の課題」と題し寄稿してもらった。

過去最高水準の肥料価格 国際価格に連動、為替影響も

世界的な化学肥料価格の高騰は日本農業にも大きな影響を及ぼしている。2022年5月31日にJA全農が公表した令和4(2022)肥料年度秋肥(6月~10月)の肥料価格は、前期(春肥)比で尿素が94%、塩化カリウムが80%、複数成分を組み合わせた高度化成肥料が55%の引き上げとなり、いずれも過去最高水準に達した。

日本の化成肥料は原料のほとんどを輸入している。また、化成肥料は生産コストの6割以上を原材料費が占めるため、日本国内の肥料供給は国際的な肥料情勢の影響をダイレクトに受ける。

貿易統計により主な肥料原料の輸入量をみると、尿素では、日本の輸入量の3割強を占めていた中国からの輸入が、中国政府による輸出制限を受けて2021年11月以降大幅に減少している。また、塩化カリはその2割強がロシアおよびベラルーシから輸入されていた。しかし、22年に入り、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁を背景として両国からの輸入はほぼストップしている。これらの輸入制限に対し、JA全農等による資源国の鉱山会社(山元)との関係強化や輸出元の多元化といった肥料原料の安定供給の取り組みにより量的確保が図られているとみられ、尿素はマレーシアから、塩化カリはカナダや中東からの輸入に切り替えることで減少分がカバーされている。

肥料価格高騰と国内農業の課題1

一方で、輸入価格は国際価格に連動して大きく変動している。尿素は2021年10月から急激に上昇して21年11月に10万2891円/トンと10万円を超え、22年4月には11万7448円/トンと21年1月に比べて3・4倍となっている。リン鉱石、塩化カリも2022年に入り上昇傾向が続いており、2022年4月には2021年1月比でリン鉱石は2倍、塩化カリは2・4倍となっている。

肥料価格高騰と国内農業の課題

この価格には為替も影響を及ぼしている。2021年1月には1ドル102円台で推移していたドル円相場は、日米金融政策の相違を反映した金利差の拡大と資源高による日本の経常収支赤字の拡大を背景として急激に円安が進行し、足もとでは1ドル135円に突入している。さらに、肥料製造にかかる燃料費の増加や、コロナの影響等による海上運賃の高止まりなど、肥料の製造と流通にかかる全ての要素がコストアップしており、国内肥料価格の上昇は避けられないものとなっている。

採算合わず離農せざるを得ない農家も

人が食料を摂取しないと生きていけないのと同様、安定的な農業生産において肥料投入は不可欠であり、価格上昇は農業者のコストアップに直結する。稲作農家への肥料価格上昇の影響について米生産費調査をもとに推計すると(米価水準は2021年産並みで推移、肥料費は22年産で15%、23年産ではさらに60%肥料費が上昇するとし、その他の条件は一定と仮定して試算)、稲作収入で肥料価格上昇分を含んだ生産費をまかなえるのは22年産では5ha以上、23年産では15ha以上の経営面積をもつ農家のみとなっており、今後採算が合わす離農せざるを得ない農家も増えるとみられる。

また、自給率向上に向けて、輸入から国産への切り替えが期待される麦は、肥料投入量が多く生産コストの2割を肥料費が占める。特に、実需者からのニーズが高まっているパン用小麦などの強力系小麦は、たんぱく値を高めるために尿素等の窒素系肥料を多く使用する。水田園芸において作付けが多いネギやキャベツも肥料投入量が多い。そのため、肥料価格の上昇によるコスト増は、政策として推進している自給率向上や米からの作物転換を進めにくくする要因にもなりかねない。

肥料原料の安定供給脅かすリスクさらに大きく

現在日本農業が直面している肥料価格の高騰は、今回が初めてのことではない。1回目の高騰は1974年および1978年のオイルショック、2回目は2008年の世界食料危機時である。肥料の価格指数を長期的にみると、いずれの高騰時にも、大幅な上昇の後、事態の鎮静化を受けて低下するものの、高騰前の水準に戻ることはなく推移してきた。

今後、世界人口のさらなる増加が見込まれる一方、鉱物資源の有限性は一層高まる。これらを踏まえると、今回も情勢が落ち着いたとしても、肥料価格は一段高い水準にとどまることになるだろう。また、地政学リスクや投機マネーの流入による価格の乱高下など、肥料原料の安定供給を脅かすリスクはさらに大きくなることが予想される。

こうしたリスク軽減のために、JA全農や商社等による民間レベルの安定調達の取り組みに加えて、日本政府としても、資源国との友好関係の構築や海外における肥料生産プラント建設・運営支援への投資など、食料安全保障に資する肥料確保に向けた政策を一層強化する必要があろう。

一方で、農業現場においては輸入依存を減らすための努力も欠かせない。土壌診断にもとづく肥料散布の適正化に加え、耕畜連携の強化、国内未利用資源や家畜糞尿堆肥の肥料原料への活用など、循環型農業の確立に向けた取り組みのスピードアップが求められる。

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