リン酸めぐる課題解決へ 国産「菌根菌」生産量拡大 松本微生物研究所2025年3月21日
微生物の受託培養や製剤化などを事業として手がける松本微生物研究所(長野県松本市)は、化学肥料の使用量削減や有機農業の拡大に貢献する微生物として注目される国産のアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の生産量を拡大する。
AM菌の共生模式図
持続可能な農業や環境保全の観点から、AM菌の需要が高まっている。特に、政府が掲げる「みどりの食料システム戦略」において、化学肥料の使用量30%削減や有機農業の拡大が目標とされており、AM菌はこれらの達成につながる微生物として注目されている。
AM菌は、植物の根に共生する菌類(カビ)で、その起源は4〜5億年前と推定される。海洋植物が陸に進出する際に根の代わりに養水分を供給して、その上陸を助けた微生物と言われ、現在も陸上植物の約80%以上と共生できる。植物の根に共生したAM菌は、土壌中に張り巡らした菌糸から植物の根では吸収しにくい土壌中の養水分(特にリン酸)を植物に供給。代わりに植物からは光合成産物由来の糖類をもらって共生関係を築いている。
AM菌を農業に活用することで、リン酸肥料の使用量削減や植物の乾燥耐性向上が期待され、気候変動対策や都市緑化、森林再生など、幅広い分野で活用が進んでいる。
AM菌資材形状
農業生産に欠かせない肥料であるリン酸が、資源の枯渇問題や、不安定な世界情勢による価格高騰が懸念されるなか、日本は国内で消費するリン酸資源を輸入に依存している。一方で、農業現場では過剰なリン酸施肥による環境負荷などが課題となっている。肥料を大量に投入しなくとも、国内の農耕地土壌中には未利用のリン酸資源が蓄積されていることが考えられる。
リン酸は、植物生育に欠かせない肥料三要素(窒素・リン酸・カリウム)の中でも、最も吸収がしにくく、根から3mm程度しか利用できない要素。土壌中に存在する未利用リン酸資源の利用や、土壌中に供給されたリン酸を効率的に利用するには、リン酸供給能力を高めるAM菌の活用が重要となる。
AM菌の培養から製剤化までを一貫して手がける同社は、需要の増加に応えるため、現在生産量を拡大。近年では新たな培養技術を用いて、AM菌の純粋培養品の実用化に向けた開発を進め、品質の高いAM菌の量産化を目指して、大学や研究機関と共同研究を行うなど、AM菌に関する新たな研究開発にも取り組んでいる。
同社は、高品質な国産AM菌を安定供給できる国内では希少なメーカーとして、信頼性の高い製品を提供。AM菌の供給・開発・分析等に関する質問や相談を受け付けている。
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