クリの特性活かした加工品を 渋皮向ける「ぽろたん」・良食味「美玖里」2016年11月17日
農研機構は11月16日、クリ新品種「ぽろたん」「美玖里(みくり)」の品種マッチングミーティングを開いた。生産者やメーカー、流通関係者、研究関係者が約60人参加した。
農研機構果樹茶業研究部門品種育成研究領域の齋藤寿広氏がクリ「ぽろたん」と「美玖里」の説明を行った。
2007年に品種登録された「ぽろたん」は切れ目を入れてオーブンなどで加熱すると簡単に渋皮を剥くことができる。現在熊本県を中心に22都県で栽培されている。
「美玖里」は2011年に品種登録され、他のクリ「筑波」などより果肉食、ホクホク感、甘み、香りが優れた良食味。加工にも適しており、栗きんとんや甘露煮などにしたときも評価が高い。苗木の販売数は増加傾向にある。
神奈川県川崎市でウィーン菓子工房を営む横溝春雄シェフがぽろたんなどを使ったマドレーヌを製作。ぽろたん2kgの皮むきが10~15分でできると話し、「ぽろたんは食感が固めのため、薄くスライスして使う」などクリの特性を活かした使い方を述べた。
参加した石川県でクリの生産と焼き栗を販売する松尾栗園の松尾さんは「現在『筑波』を生産している。『ぽろたん』『美玖里』がどんなものなのか興味があって参加した。焼き栗の販売だけでなく、他の加工商品としても活用できれば」と参加のきっかけを話した。同2品種と「筑波」の試食が行われた際には「『ぽろたん』の食味が硬いなと感じた。『美玖里』は上品な味わいで導入を検討しようと思う」と話した。
埼玉県の日高市ぽろたん研究会は女性5人を中心に「ぽろたん」の生産を行い、年間3t収穫する。直売所やネット販売、イベントなどで「ぽろたん」を揚げた「揚げ栗」の販売も行う。「千葉県や神奈川県、茨城県から購入に訪れる人もいる。揚げ栗が好評で2時間待って購入する人もいた」と話した。
意見交換の場では、「ぽろたん」は収穫後冷凍保存した際に果肉食が黒くなるため、加工する場合はとれたての状態で行うのが良いのではないかといった意見があがった。
◆「ぽろたん」起爆剤に産地拡大狙う
新品種の生産に取り組む事例の発表も行われた。
岐阜県東美濃地域は栗きんとんで有名。しかしここ数年、クリ生産が減少傾向にあるため、産地全体で増産に努めているという。
7年前から20haの団地づくりに取り組み、現在は1~7年生のクリが植わっているが、収穫量はまだまだ足りないという。
栗きんとんに合うクリを生産するが、併せて「ぽろたん」の研究会も立ちあげた。焼き栗としてイベントなどで、渋川が簡単に剥けることを消費者に訴えながら販売する。また「ぽろたん」が高値で売れれば、生産も増えるとし、起爆剤として位置付け、産地拡大・強化に取り組んでいる。
茨城県工業技術センターでは、「ぽろたん」を使ったレトルト焼き栗の商品化を行った経緯を説明。
「美玖里」を「分かりやすい王道のクリの美味しさが伝わる品種」とし、「ぽろたん」はひと手間かけると渋川が剥けるという他のクリにはない性格があることが特徴だという。
そのうえで「ぽろたん」をシーズンの楽しみである焼き栗がいつでも味わえる商品として提案した。
(写真)3品種の甘露煮食べ比べ、クリ3品種、甘露煮左から「ぽろたん」「美玖里」「筑波」
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