【コラム・ここがカンジん】JAバンクの行く末2014年8月5日
「バンクJA、バンクJA」のコマーシャルソングで、JAバンクの存在を知らない人は少ないだろう。JAバンクシステムは平成13年のJAバンク法の制定によって確立された。バンクシステムは一言でいえば、系統信用事業を一つの金融機関と見なし、JAから信用事業を独立させるという考えで成り立っている。従来の系統信用事業は「JAバンク」というまさに一つの銀行という考えなのだ。
事業譲渡で先細りに
全国のJA信用事業を一つの金融機関と見なすという考えは、JAの信用事業の改革にとって大変鋭い問題意識による提案であり、誰もがその斬新性に驚いた。今回の規制改革会議によるJAの信用事業の農林中金への事業譲渡論は、このJAバンクシステムによる信用事業独立の考え方を一層深化させたものである。では、事業譲渡の考え方は一体何を意味することなのか。
それは、[1]系統信用事業のPDCA(計画・実行・評価・改善)の主体をJAから農林中金に移すことであり、[2]JA事業から信用事業を分離することであり、[3]信用事業分野においてJAの協同活動を事業から切り離すことを意味する。
このように考えると、信用事業の事業譲渡は[1]協同組合しか持ちえないボトムアップ型のJA事業運営の否定、[2]JAしか持ちえない総合事業の否定、[3]事業から組織活動を切り離すことによる協同組合の否定の三つの否定を意味する。
◇
とくに総合事業を否定されれば、JAは農業振興について、一層困難な事態に陥ることは間違いない。あらゆる組織は、その組織が持つ組織の優位性を最大限に生かして競争社会を生き抜いていく。JAも協同組合としてその優位性を発揮すべく諸活動を行い、この結果、農林中金は貯金量90兆円を超える日本有数のメガバンクとなった。今回の事業譲渡の方向はその優位性をみすみす放棄するものである。
事業譲渡によって自らの組織の優位性を放棄して会社化の方向を取れば、「JAバンク」はいずれ先細りになることは目に見えている。JAバンクシステムは単位JAのサポート組織として機能して初めて意義ある存在なのだ。それにもかかわらずなぜこのような方向をめざすのか、理論的にも実際的にも理解困難である。
◇
それにしても、このような事態を招いているのは、JAにも大きな責任があるだろう。
JAで連合組織頼みの事業運営、総合事業の良さを自覚し、それを生かさない事業運営、組合員の協同活動を盛んにしない事業運営といった協同組合・JAの優位性を活用しようとせず、農林中金の代理店のような運営を続け、また連合組織にもそれを是とする意見があるとすれば、規制改革会議の議論もいたしかたない面がある。その意味では、今回は協同組合としてJA自らの本当の実力が試されているのである。
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