【コラム・ここがカンジん】開かれた運動展開を2015年9月2日
JA全中の体制が一新された。会長・副会長、専務が替わった。任期途中での体制一新は、異例のことである。背景には、全中の誕生以来、異例とも言える中央会制度の廃止(農協法第73条の全面削除)がある。
◆JA全中の意識転換
今回の農協法改正で、全中会長は、2月の段階で、政府から准組合員の事業利用制限か、中央会制度の廃止かの王手飛車取りの一手を打たれ、後者を選択せざるを得ない立場に追い込まれた。この瞬間、今次農協法改正は、国会審議を待たず、事実上決まってしまった。
言うまでもなく法改正は本来、国会審議を経て決まるのだが、全中は国会審議前の段階で政府・自民党の思惑にはまり、結果として、国会審議の道を自ら封殺してしまうという重大なミスを犯した。
現に国会審議では、民主党をはじめ野党から、JAが農業振興を通じて地域全体の底上げに果たしている役割を評価すべきとの意見が相次いだが、こうしたまっとうな意見を法改正に生かすことができなかった。萬歳全中会長は、中央会制度の廃止やむなしと判断をした段階で、自民党の先生方にはよく頑張ってもらったなどという文書を全JAに配布せざるを得なかった屈辱に、耐えられなかったと考えられる。
◆ ◇
かくして始まった会長の辞任劇は、全中会長選挙を経て主要役員の人事一新へと発展した。要するに組織は、今次農協改革・農協法改悪の責任の所在を明らかにすることを迫ったのである。
全中の執行体制は大幅に変わったが、今後問われるのは、その中身である。それには、何故このような事態に陥ったかの原因究明が不可欠である。原因は種々考えられるが、とりあえず、(1)農水省の極端な職能組合の考え方に対処できていないこと、(2)反対運動が、閉ざされた内向きの自民党対応に終始し、政府のJA改革についての争点が明らかにされず、組合員さらにはJA段階でさえ何が問題になっているかが不明で、全く運動展開にならなかったこと―などが挙げられる。
これらの反省の上で、全中が取り組むべき課題は、環境変化の下でのJA新ビジョンの確立と、組合員はもとより、国民・地域住民に開かれたJA運動の展開である。今回の農協法改正は、超高齢化・少子化のもとで、JAの准組合員が正組合員を上回るという構造的変化の下で行われており、JAは准組合員を含めて、徹底した討議のもと、将来にわたり自らの地域農協「地域・農村型農協」の姿を明確に打ち出す必要がある。
政府の農協改革の対案として全中が作成した「自己改革方策」は、法改正にあたって、中央会の教育や経営指導機能の否定など、都合のよい部分をつまみ食いされた挙句、農水省によって完全否定された。
新たな執行体制で全中が取り組むべき最初の課題は、これまでの延長線のような、多くの人にとって意味がよく解らない、今次全国JA大会議案「創造的自己改革への挑戦」の見直しからはじめなければならない。それには、新会長のリーダーシップのもと、まずはJA運動の司令塔を預かる全中テクノクラートの意識改革・転換が必須の条件である。
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