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世界情勢激変のなかの安倍政権の今後を占う2016年10月28日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

「月満つれば虧(か)く」(史記)

◆いつまでつづく"わが世の春"

 最近NHKテレビの国会中継をよくみます。委員会審議で閣僚の答弁が混乱すると安倍総理が発言を取り長広舌を振うと審議が前に進みます。野党議員のなかに安倍総理にかみ付く議員がいると与党席から激しい野次が出ます。結局野党議員はおとなしくなります。本会議で安倍総理が自衛隊員らを激励しようと呼びかければスタンディングオベーションが起きます。いまや安倍総理は突出した大リーダーなのです。
 2012年12月に安倍政権が発足してから三年十ヵ月が経ちましたが、この間の国政選挙で安倍総理は全勝しました。統一地方選挙も勝ちました。安倍総理は常勝将軍です。与党内に安倍総理を批判する者はいません。すべての政治家が安倍総理をおそれているのです。
 安倍総理にとって今がわが世の春です。
 しかし、憂慮すべき事件が起き始めています。強大な政権内部で"たるみ""ゆるみ"が目立ち始めました。平然と"強行採決"を叫ぶ与党幹部が出ました。この時はその幹部の委員会理事辞職というトカゲのしっぽ切りで切り抜けましたが、次にはTPP審議の中心閣僚の山本農水大臣から不用意な発言がとび出しました。
 10月16日の新潟県知事選で優勢だとみられていた自公統一候補が敗北しました。原発再稼働慎重派の知名度の低い野党統一候補が、予想を上回る大差で当選しました。新潟県民の多くが原発再稼働に反対していることの結果ですが、それだけではありません。TPP受け入れを強引に進める安倍政権への批判が農村で拡大していることも大きな原因の一つでした。安倍総理の独裁的政治状況に対する新潟県民の反骨精神が刺激されたことも、無視できない自公敗因の一つです。安倍総理の"わが世の春"に暗雲が序々に広がり始めているのです。

◆パリ協定批准のおくれは安倍政権の大失態

 かつては日本は地球温暖化対策への先進国でした。しかし安倍政権になって温暖化対策の後進国に転落してしまいました。日本は11月7日からモロッコで始まる国連気候変動枠組み条約国際会議(COP22)に批准国として参加することが困難になったのです。安倍政権の大失態です。しかし、自民党内に批判の声は出ません。野党の追及は甘すぎます。マスコミはこの件にほとんど無関心で、沈黙しています。皆、安倍総理ににらまれることを恐れているのです。日本の政権の独裁化の弊害が出てきたのです。ほとんどの政治家が安倍総理の顔色ばかりうかがっているのです。

◆「日本の政治だけが安定している」との錯覚

 第二次大戦後世界政治の主導権をとってきた米国政府の指導力が揺らいでいます。米国のパートナーのEUの勢いも止まりました。欧米中心の時代にかげりが出てきています。
 日本政府は米国政府に追随してきましたが、日米関係は新大統領が登場すると変化せざるをえません。たとえ本命のヒラリー・クリントンが大統領に就任しても、米国政府の対日政策はきびしいものになると私は予想しています。第二次大戦後の日米関係の基礎にあった吉田ドクトリンの時代は終焉するのです。
 アジア情勢も激しく変わり始めています。安倍総理がオバマ米大統領の意向に倣って強行してきた中国孤立化、中国包囲網形成政策は失敗しました。
 安倍総理はロシアのプーチン大統領に接近し日露平和協約締結をめざしていますが、これは大きな賭けです。今年の12月15日の日露首脳会談の結果に安倍政権の将来がかかっているのです。
 安倍総理はTPP条約を、米国に先がけて批准することによってアジア太平洋地域における日本政府の主導権を固めようとしているようですが、強引な政局運営に対する国民レベルの不満は、とくに農村に広がっています。

◆2017年の世界の中の日本

 2017年に入ると、世界は大きく変わります。オバマ政権は終わり、新しい政権が出発しますが、誰が大統領になっても安定政権を築くのは容易ではないと思います。
 ヨーロッパでは、英国のEU離脱の手続きが始まります。かなりの混乱が予想されていますが、各国での右翼ナショナリズムの動きは拡大しています。
 中東でもアジアでも危険な状況がつづいています。
 日本は中国との関係を修復して、アジア共同体の一員としての地位を固めるべき時ですが、安倍総理のもとでの日中和解は容易でないと思います。
 いま安倍総理に求められていることは、新たな世界情勢を冷静に分析し、平和と調和の政治への方向転換をはかることです。

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