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【小松泰信・地方の眼力】"右の革命政権"と規制虫2017年5月17日

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【小松 泰信 (岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 厄介な害虫がはびこっている。カンワ、カンワと鳴きながら、規制という規制に寄生して、お毒味と称して私腹を肥やしたら、お待ちかねのグローバル企業に明け渡し、次の規制へと宿主を変える。その名もズバリ"規制虫"。人や社会にとって大切な堅固な規制ほど好む、まことに質の悪い害虫である。

◆今度は漁業の競争力強化プログラムですか

 日本農業新聞(4月29日)には、漁業関係の記事が二つ併記されていた。一つは、"意欲的漁業者重点支援策を 水産基本計画"という見出しで、今後10年間の漁業政策の指針となる水産基本計画が閣議決定されたことを伝えている。「外国人材の受け入れや、水産教育の底上げなど人手不足を視野に入れた政策」や、ここでもまた「これまでの幅広い漁業者を支援する政策から、競争力強化や経営拡大を目指す漁業者を重視する政策」への転換である。
 もう一つは、"漁業への参入を支援 農相、成長産業化に意欲"との見出しで、山本農相の閣議後会見を紹介している。農相は「若者が参入しやすいような漁業に変えていく必要がある」と述べ、既存の漁協や漁業者だけでなく、多様な人材や企業が参入できる仕組みを今後具体化するとともに、漁業についても「規制緩和する必要がある」と明言している。民間のノウハウを活用した漁業の成長産業化を例示し、「最先端の技術を駆使して、効果的に高品質な水産物を食卓に届ける産業への転換を、必ずできるようにする」と意欲満々のご様子。いずれも、聞き覚えのある言辞のオンパレード。
 
◆そして漁業と林業の規制緩和もすすむのか

 5月11日の日本農業新聞は、"漁業権緩和を検討 規制会議WG 民間への開放焦点"という見出しで、漁業と林業の規制緩和が着手されたことを伝えている。農業から始まって、漁業、林業と第一次産業全般の規制緩和という展開である。とくに注目すべきは、「現行の漁業法では、漁業権の免許を都道府県知事が与える際、利益を幅広く分け合うことなどを目的に、地元の漁協や漁業者グループを優先する仕組みとなっている。同WGでは、こうした仕組みが民間の新規参入を阻害しているとして、見直しを目指す」という、記事内容である。
 漁業権の民間企業への開放は改革の目玉として、「首相官邸も意欲を示している」そうである。もちろん、官邸からの指示か、阿吽の呼吸での行動であることは言うまでもない。
 当JAcom(5月11日)も、委員からの「日本の森林をいかすためにもターゲットを明確にして成長産業化のための議論を深めなければならない」という意見や、「林業も水産業もいかに資源管理していくかの視点、いかに競争力を高めていくかの視点からの改革を進めることが急務だ」とする、相も変わらぬ座長の姿勢などを紹介している。
 漁業権をはじめとする権利問題に加えて、漁業協同組合や森林組合のあり方についてもかなり踏み込んだ介入を行うことは容易に想定される。すでにその手口は、JAグループを相手に磨き上げている。
 
◆"規制の砂場"とは何か

 官邸HPは、5月12日開催の未来投資会議(座長:安倍晋三)において、「イノベーションはスピードが勝負です。...そこで、参加者や期間を限定し試行錯誤を認める。つまり、まずはやってみる。日本版レギュラトリー・サンドボックス(規制の砂場、小松注)の枠組みの御提言を頂きました。イノベーションの成果をいち早く社会に取り込めるよう新しい枠組みを創設します」 と、6月にまとめる成長戦略骨子において、この仕組みの創設を柱に据えたことを伝えている。
 小さな失敗を許容して試行錯誤が可能なことをめざしていることから、あの"砂場遊び"に由来したネーミングである。地区を限定する国家戦略特区とは異なり、全国一斉の社会実験が可能となる。該当事業については、所管省庁の審査で妥当と判断されたものに限ることや、社会的な損害の発生を回避するための監視体制の構築などが前提となっている。
 砂場遊びは、実験室だけにしてほしいところだが、規制虫を飼い慣らし、はびこらせて喜んでいる現政権下で、規制緩和が嬉々として進められることは間違いない。「成長戦略骨子(案)」の具体的施策例として"Ⅲ.ローカルアベノミクス-地域経済好循環システムの構築-"の第2項として、"「農業競争力強化プログラム」や「農林水産業の輸出力強化戦略」の実行"と"データ等を活用したスマート農林水産業の推進"による「攻めの農林水産業の展開」が書き込まれている。岩盤規制の緩和、解体、そして切り売りの可能性大。日本農業新聞(5月13日)も、「国家戦略特区に続く『岩盤規制の突破口』として、将来的農業の規制緩和の議論につながる可能性」に言及し、関係者に注意を喚起している。
 
◆「考えない」規制虫の絶滅に向けて「考える」

 石川五右衛門の辞世の句に倣えば、「石川や浜の真砂は尽きるとも、世に規制緩和の種は尽きまじ」である。
 「かねて安倍政権を保守とは縁遠い『右の革命政権』とみてきた」とは、東京新聞(5月16日)のデスクメモの書き出し。だとすれば、規制緩和をはじめ、安保法制や改憲メッセージ、現下の共謀罪法案、改革に名を借りた農業協同組合や農業への異常介入等々は、「権力者や支配者が反政府運動ないし革命運動に対して行う激しい弾圧」としての"白色テロ"の一環と位置づけられる。
 生気をうしなった閣僚、公認欲しさに矜恃を捨てた自民党議員、利権と名誉欲しさに白色テロの走狗となった規制虫、人事を餌につられた官僚、連中の姿は、「悪の凡庸さ」の象徴とされる、あのホロコーストの責任者"アイヒマン"そのものかもしれない。
 アイヒマンの裁判を傍聴したハンナ・アーレントは、「彼の罪は『考えない』ことにあると結論づけた」(高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』朝日新書167頁)。「考えない」こと、「考えようしないこと」は罪。
 自らがアイヒマンとならないために、考え抜いて己の剣筆を武器に闘う。あなたは、いかなる武器で闘いますか。
 「地方の眼力」なめんなよ

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