(042)ザビエルと魚を食べる「頻度」2017年8月4日
「日本型食生活」という言葉が聞かれて久しい…が、それほど大上段に構えずとも、欧米人から見れば日本の食事は昔から非常にユニークであったことは想像に難くない。
イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルは、その書簡の中で「日本人は自分達が飼う家畜を屠殺することもせず、またこれをたべもしない。彼等は時々魚を食膳に供し、殆ど米麦飯のみをたべるが、これも意外に少量である。ただし彼等がたべる野草[野菜]は豊富にあり、また僅かではあるが果物もある。それでいて日本人はふしぎなほど達者であり、稀な高齢に達する者も多い」(以上、引用は安達巖、『新装 日本型食生活の歴史』、2004年、227頁。表記は引用元のママ)と記している。
1506年生まれのザビエルが日本に来たのは1549(天文18)年、43歳の時であり、その後、1552年に当時の明国へ渡り亡くなるまで約3年を日本で過ごしている。先の引用が厳密にいつ書かれた書簡かを確認する時間はなかったが、16世紀半ばのポルトガル人が、当時の日本の食生活と日本人を見た貴重な記録であることは間違いない。
※ ※ ※
さて、ザビエル来日から400年以上を経た1983年、農林水産省は「日本型食生活」を公式に提唱している。これは当時(昭和50年代)の食生活を基本としたものであり、米飯を中心に、さまざまな食品を主菜・副菜として摂ることを想定したものである。基本は一汁三菜であることもよく知られている。

(図)出典:農林水産省「食料需給表」
この当時、20代前半であった筆者には国が提唱する「日本型食生活」なるものが、どうにも物足りなかった記憶があるが、それは自分自身がまだ青年期であり肉食を欲していたからであろう。最近は歳のせいか肉食の頻度が急速に落ちている気がする。
※ ※ ※
さて、一般的イメージとしての「日本型食生活」の中身は人により異なるであろうが、ごはん、野菜、魚、味噌汁...といったところか。そこで魚の消費量に関する重要なポイントを紹介しておきたい。
食料需給表から1960(昭和35)年以降の日本人1人当たり年間魚介類消費量の推移を見ると、ピーク時の2001年の年間40.2kgが、2015年には25.8kgと14.4kg減少している。この水準は1964年の25.3kg以来、51年来の最低水準である。
つまり、現代日本人は、過去半世紀で最も魚介類消費量が少ない食生活を送っているということだ。高度成長期以前の人達よりも魚を食べていないと言い換えても良い。
仮に昭和50年代、つまり1970―80年代の食生活を理想とした場合、その当時の1人当たり年間魚介類消費量は35―37kg程度、現在の水準よりも約10kg多い。
一方、近年の「国民健康・栄養調査」が示す顕著な傾向は、40歳以上の魚介類摂取量が1日当たり概ね70―90gであるのに対し、40歳未満は60gにも満たないという形で、若い世代と中高年以降で大きな乖離を示している。
日常生活に置き換えて言えば、紅鮭の切り身一切れを80gとした場合、40歳以上は少なくとも1日1切れは食べていることになるが、40歳未満は魚介類を全く食べない日が少なくとも3日に1日はあるということになる。毎日100gの切り身を1回食べれば、年間では36.5kgの魚を食べることになるという簡単な計算で覚える方が早いかもしれない。
※ ※ ※
さて、かつて、ザビエルは日本人の食生活を見て「...時々魚を食膳に供し、...」と記しているが、ここで言う「時々」のポルトガル語表記は何であろう。frequentemente、as vezes、de vez em quando, occationalmente、英語で言えば、frequently、often、sometimes、occasionallyと中学英語の「頻度の副詞」のまさに「頻度」で悩むことになる。全くもって日本語の「時々」は幅が広く翻訳からの解釈は難しい。
(図)農林水産省「食料需給表」
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
米粉で地域振興 「ご当地米粉めん倶楽部」来年2月設立2025年12月15日 -
25年産米の収穫量746万8000t 前年より67万6000t増 農水省2025年12月15日 -
【年末年始の生乳廃棄回避】20日から農水省緊急支援 Jミルク業界挙げ臨戦態勢2025年12月15日 -
高温時代の米つくり 『現代農業』が32年ぶりに巻頭イネつくり特集 基本から再生二期作、多年草化まで2025年12月15日 -
「食品関連企業の海外展開に関するセミナー」開催 近畿地方発の取組を紹介 農水省2025年12月15日 -
食品関連企業の海外展開に関するセミナー 1月に名古屋市で開催 農水省2025年12月15日 -
【サステナ防除のすすめ】スマート農業の活用法(中)ドローン"功罪"見極め2025年12月15日 -
「虹コン」がクリスマスライブ配信 電話出演や年賀状など特典盛りだくさん JAタウン2025年12月15日 -
「ぬまづ茶 年末年始セール」JAふじ伊豆」で開催中 JAタウン2025年12月15日 -
「JA全農チビリンピック2025」横浜市で開催 アンガールズも登場2025年12月15日 -
【地域を診る】地域の農業・農村は誰が担っているのか 25年農林業センサスの読み方 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年12月15日 -
山梨県の民俗芸能「一之瀬高橋の春駒」東京で1回限りの特別公演 農協観光2025年12月15日 -
迫り来るインド起点の世界食糧危機【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月15日 -
「NARO生育・収量予測ツール」イチゴ対応品種を10品種に拡大 農研機構2025年12月15日 -
プロ農家向け一輪管理機「KSX3シリーズ」を新発売 操作性と安全性を向上した新モデル3機種を展開 井関農機2025年12月15日 -
飛翔昆虫、歩行昆虫の異物混入リスクを包括管理 新ブランド「AiPics」始動 日本農薬2025年12月15日 -
中型コンバインに直進アシスト仕様の新型機 井関農機2025年12月15日 -
大型コンバイン「HJシリーズ」の新型機 軽労化と使いやすさ、生産性を向上 井関農機2025年12月15日 -
女性活躍推進企業として「えるぼし認定 2段階目/2つ星」を取得 マルトモ2025年12月15日 -
農家がAIを「右腕」にするワークショップ 愛知県西尾市で開催 SHIFT AI2025年12月15日


































