公明党の危険な火遊び2018年2月13日
先週行われた沖縄の名護市長選挙で、公明党と自民党、維新の会の推薦した渡具知武豊氏が、市内の辺野古への基地移転に反対した「オール沖縄」の稲嶺進氏に大差をつけて当選した。体制派のマスコミは、基地移転に対する反対運動の退潮をはやし立てているが、それは、彼らの叶わぬ願望にすぎない。
この基地移転の問題は同市にとって、今後を決める最重要な問題だが、渡具知氏は、選挙戦の最後まで基地移転についての賛否を言わなかった。しかし、米軍再編交付金は欲しい、といっていた。それに、自公維の3党の推薦で当選したのだから、就任後は3党の意向を忖度して、移転を推進するに違いない。
公明党はこの選挙で、基地移転の推進派の渡具知氏を推薦した。平和の党を名乗る公明党は、平和を願う市民を裏切って、戦争を誘う危険な火遊びを続けるようだ。
沖縄では、11月に知事選が予定されている。公明党は、こんどの知事選でも、平和主義を捨てて、基地に反対する県民を裏切るのだろうか。
上の表は、稲嶺、渡具知の両氏の実際の得票数と、公明党が渡具知氏を推薦せず、自主投票したばあいに予想された得票数である。
マスコミの出口調査によれば、公明党支持者の半数以上が基地移転に反対だった。だから、自主投票にすれば、半数以上が稲嶺氏に投票したと考えられる。それゆえ、この表では公明党支持者のうち、半数が稲嶺氏に投票し、半数が渡具知氏に投票した、と想定して試算した。
◇
そこで、公明党支持者が何人いるかを推計するのだが、過去3回の衆院選の比例区選挙で、実際に「公明党」と書いた人が何人いたかを見てみよう。それが、下半分の表である。
過去3回の平均は、4788人だった。公明党が自主投票にして、このうちの半数が稲嶺氏へ、半数が渡具知氏へ投票したら、どうなっただろうか。勝負は逆転して、稲嶺氏が1万9325票、渡具知氏が1万7995票になり、稲嶺氏が当選したはずである。それが、この表の上の2列目に書いてある。
念のため、公明党の衆院選比例区選挙での得票数が最も少なかった2014年選挙のばあいを想定しても、公明党が自主投票だったら、稲嶺氏が当選した。それが表の3列目である。
つまり、この表から分かることは、公明党が基地移転の推進派の渡具知氏を推薦しないで、自主投票にしていたら、基地移転の反対を公約にした稲嶺氏が当選した、と考えられることである。
◇
さて、この市長選は異様な雰囲気のなかで行われたようだ。連日、両派の幹部や人気者が応援にきていて、一部では、翁長雄志知事の「オール沖縄」と、安倍晋三首相の政府与党との代理戦争ともいわれた。そうして、天下分け目の決戦の様相を呈していた。
また、期日前投票の勧誘が激しく行われ、その結果、期日前投票率が44%という異常な多さになり、当日の投票率の33%を大きく超えた。
◇
こうした中で、いったい公明党は、沖縄の基地問題を、どのように考えているのか。立党の精神は平和主義ではなかったか。宗教家の集団らしく、自衛のための武力さえも持たない、という絶対平和主義を理想にしていたのではなかったのか。ここでは、絶対平和主義とまではいわない。情況と世論は、そこまで成熟していない。
しかし、この精神からみるとき、沖縄の基地は平和主義を否定する存在ではないか。あらためて言うまでもないことだが、基地は戦争のための軍事基地なのである。
かつて、沖縄は朝鮮戦争やベトナム戦争でのアメリカ軍の前線基地だった。沖縄基地から海兵隊が出撃し、沖縄基地から爆撃機が飛び立って、朝鮮やベトナムを襲った。
今後も、沖縄基地はこの役割りを強化し続けるだろう。
◇
いまの沖縄基地の第1の役割りは、日本を防衛することだという。だが、そうではない。日本を防衛するためにアメリカ兵が犠牲になることはない。このことは、誰しもが予想していることである。
そうではなくて、アメリカが日本を防衛するといっているのは、アメリカの極東戦略、つまり、極東を武力でアメリカ化するという戦略に、日本を引き付けておく目的で、脅すための建て前にすぎない。
また、沖縄基地は、アメリカの自国防衛のための前線基地だ、ともいう。だが、それも建て前にすぎない。朝鮮戦争やベトナム戦争が、誰がみても自衛戦争でなかったように、沖縄基地はアメリカの自衛のためにあるのではない。
そうではなくて、沖縄基地を今後も、朝鮮戦争やベトナム戦争のときと同じように、アメリカの極東戦略のための前線基地にしておきたいのである。それがアメリカの本音である。
それに安倍政権が追従し、オール沖縄が反対している。
◇
このことを、公明党はどのように考えているのか。
公明党は与党に居座り続け、安倍政権に追随しているのだが、安倍首相は最近、日本周辺に仮想される敵国の軍事基地に対する攻撃能力を強化する、などといっている。
もしもその仮想敵国が、安倍首相に倣って同じように考えるとすれば、どうなるか。その国が、まず第1に考えることは、沖縄の軍事基地に対する攻撃能力の強化だろう。
安倍首相の想定の先にあるのは、沖縄を第2次大戦で、真っ先に犠牲にしたのと同じように、沖縄に今後もアメリカ軍の前線基地をおき続けて、同盟国アメリカの極東戦略のために、沖縄を、まず第1に仮想敵国の標的にして、犠牲にすることである。
◇
このことを、与党である公明党は、どのように考えているのだろうか。平和主義を、宗教家らしくなく、かなぐり捨てたのかどうか。そのことを11月の沖縄知事選で、沖縄の県民だけでなく、全ての国民が厳しく注目している。
そして、多くの国民は、公明党が平和の党として力強く復活し、沖縄の軍事基地を撤廃するため、全力を傾けて懸命に努力することに、大きな期待を寄せている。
公明党が、再び平和主義に立ち返り、血なまぐさい沖縄の軍事基地を、豊穣な母なる大地と、恵み深い群青の海に取り戻すことを、多くの農林漁業者は切実に願っている。
(2018.02.13)
(前回 酪農版自由貿易論の悪夢)
(前々回 第2保守党の媚態)
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