【近藤康男・TPPから見える風景】力の入らない?政府のTPP11、日EU・EPAの国内対応2018年5月10日
◆TPP11(CPTPP)ようやく本格? 審議へ
4月17日、TPP11(CPTPP)承認法案が衆院本会議に提出され、5月8日には、やっと関連法案10本も衆院に提出された。今週から外務委員会での承認法案、内閣委員会での関連法案の本格審議も始まるだろう。しかし今国会の会期は6月20日までだ。
条約は衆院での成立後、参院で30日過ぎても採決がされない場合、衆院優越で自動的に承認されるが、関連法案は衆参両院での採決が必要だ。承認案可決だけでも確実にするとすれば、来週にも衆院で採決を強行することにもなりかねない? 野党は農水委員会との連合審査も要求し、丁寧な審査を求めているが、果たして政府はどう出るだろうか?
仮に関連法案が通らなければ、条約は批准されても、それを担保する国内法が整備されるまでは、当該の国に対して条約は発効しないこととなる。各国の状況は、メキシコが4月24日に最初の批准国になったが、NZなどでもやっと5月3日に審議が始まったばかりだ。
◆拙速過ぎないか? CPTPP、新たな日米協議の枠組み
4月23日に市民団体が開催した院内集会でのCPTPPに関する政府とのやり取りについては、前回4月26日のコラムで紹介した。乳製品の低関税枠・牛肉のセ-フガ-ドについて、日本政府が"懸念を担保した"とするCPPP協定6条を巡って、サイドレタ-などでの担保は考えなかったのかとの問いに対しては、各国様々な凍結要求などがある中で、"パンドラの箱を開ける"ようなことになりかねないという回答だった。"通商交渉は壊れやすいガラス細工のようなもの"という表現もよく聞く言葉だ。TPP原協定と併存する中でのCPTPPへの新規の参加国対応や、その場合の米国復帰との兼ね合いなどは未だこれからの課題とされている。TPP原協定の条文に比べるとその粗雑さが目立つし、そもそもガラス細工やパンドラの箱を開けることになるような合意自体あってはならない筈だろう。
そして茂木担当相とライトハイザ-米通商代表をトップとする新たな日米協議の枠組み(通称Free Fair Reciprocal自由で公正な互恵的な??枠組み≒トランプ氏の常套句)についての5月8日の安倍首相の国会答弁。「日米FTAと位置づけられるものではない、その予備協議でもない」と言われても、米国から聞こえて来る発言を聞けば、言い訳としか聞こえないし、何ら客観的な根拠を見つけることも出来ないものだ。
あたかも安倍首相の掛け声とそれに対する官僚の"ソンタク"が通商交渉においても、森友・加計並みに、推進力になっているかのように思われてならない。
◆ところで、今、日EU・EPAはどうなっているのか?
一方日EU・EPAはこのところ何も聞こえてこない? 数ヶ月前に大筋合意されたもののファクトシ-ト等を除けば協定条文の内容は未だ翻訳されないままだ。しかし、EUでは既に法的精査を終えた協定条文が公表され、各国にも翻訳されたものが送致されている。欧州委員会は4月18日に協定文案を採択、6月下旬のEU首脳会議での条文としての正式承認を目指して進んでいる。EUでは、その上で日EU定期首脳会合に合わせて7月11日に合意署名が予定されている(オランダ政府の議会宛て文書)。安倍首相は、7月14日のフランス革命記念日の軍事パレ-ドに招待されている、と日本でも報道されている。
EUの市民団体からは、12月11―13日に欧州議会で承認を巡って採決が行われると伝えられている。
安倍首相が"成長戦略の要"、"最善"と意気込むのであれば、CPTPPは勿論、日EU・EPAについてもこれまでの対応はあまりにもお粗末だ。EUに劣らない、早急な協定条文の翻訳・公表と、丁寧な国会審議の保証を求めたいものだ。
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