【森島 賢・正義派の農政論】石破氏の善戦2018年9月25日
自民党の総裁選は、安倍晋三氏の圧勝になった。マスコミは、安倍氏の圧勝とは言わずに、石破茂氏の善戦と言っている。
石破氏は、議員票では得票率が18%で少なかった。しかし、党員票では45%の得票率で、たしかに善戦だった。議員票も党員票も、事前に事情通が予想していたより得票率が多かったことも、善戦という評価の理由である。
党員票での石破氏の善戦は、同氏の地方重視の公約が主な原因だろう。
石破陣営は、もしも、選挙期間がもうすこし長かったら、石破氏が抱く地方衰退の危機感と、地方重視の公約が地方に浸透し、党員票では勝っただろう、と言っている。
果たして、そうだろうか。

上の図は、総裁選のうち党員票の得票率を県別に示したものである。
この図をみると、両氏の地元である西日本での激戦と、その中での安倍氏の優位と、京浜圏や阪神圏などの大都市圏での安倍氏の優位が見てとれる。
その一方で石破氏は、ことに東日本の農村県で善戦している。善戦してはいるが、過半数の票を得ている県は、山形、茨城、群馬、富山の4県だけで、それほど多くはない。他の県は半数以下で、西日本と比べると多い、という程度である。
半数以下になったのは、石破氏の農業・地方重視の政策に対する地方部での理解が、十分に浸透しなかったからだろうか。そうではないだろう。十分に浸透し、十分に理解しているが、それに賛成できなかったのではないか。
こうした認識がなく、自分の政策に対する自信だけがあって、地方の人たちに浸透させる、つまり説得する、というのではだめだ。農業者たちの疑問を、また、地方の人たちの疑問を、論理的に、かつ納得するまで丁寧に説明することで、政策は磨かれるし、政治家として成長する。そうして、地方の人たちから信頼され、支持される。
◇
石破氏の主な主張は、地方重視と一強政治の是正だった。ともに地方から支持される主張だった。しかし、これまでの政治で地方が疲弊し、一強政治が横行した原因は何か、という点の分析がない。だから、説明もないし、反省もない。
同氏は、大都市の巨大資本が潤えば、その余滴が中小企業や地方へ滴り落ちる、というトリクルダウンを否定しているし、官邸主導による一強政治も否定している。
これらの点で、農業者など、地方の人たちから支持されている。しかし、半信半疑の人も少なくない。なぜか。
◇
地方の疲弊、農業の衰退は、政治家の政治姿勢や心構えの問題ではない。競争至上主義、市場原理主義という政治の問題である。国家主権を犠牲にした自由貿易が、農業を衰退させたし、過度のいわゆる規制緩和が、地方を疲弊させた。そこまで深く掘り下げた分析と反省がないかぎり、地方重視といっても、熱烈な支持は期待できない。
また、一強政治といっても、それは為政者の政治姿勢や、まして人柄の問題ではない。正直と公正を誓う、という問題ではない。現場で国民の声を真摯に聞いて政策を磨き、政治にどう生かすか、そのための政治体制をどう築くか、という問題である。そしてそれは、少数意見を無視するために、政治主導という名のもとで導入した小選挙区制という選挙制度の問題である。これと比べれば、合区の解消などという選挙制度の変更は些末な提案といえる。
◇
これらの点で、石破氏に対して、今後、より深い分析と、反省と、研鑚を重ね、地方の農村の現場を熟知する政治家として、次の3年後の、あるいは一寸先は闇というから1年後かもしれない総裁選挙に挑戦することを期待する農業者は少なくないだろう。
多くの農業者は、石破氏とは政見が違う農業者を含めて、自民党が一強独裁的な閉塞状況から脱し、ふたたび自由闊達な議論を復活することを期待している。そのことで日本の政治が、ふたたび活性化することを期待している。野党も、うかうかしてはいられないだろう。
(2018.09.25)
(前回 自民党の課題は一強体制の改革)
(前々回 国民民主党の国家像)
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