【城山のぶお・リメイクJA】第20回 協同組合の存在2019年1月11日
協同組合の存在は何によって保証されるのか。それは他の組織がそうであるように、法律によってである。そして、法律の上位概念にあたるのが協同組合原則である。
協同組合原則は、およそ30年ごとに改定されてきているが、その根本的な規定は変わっておらず、その内容はそれぞれの国の法律によって規定されており、協同組合は世の中にその存在が保証されている。
農協法第1条では、農業者の協同組織の発展を促進することを農業振興の手段として位置付けているが、ここでいう協同組織とは組合のことを言っている。
なお、農協法では、協同組合についての概念規定はしていないが、1)小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること、2)任意に設立され、かつ加入・脱退の自由があること、3)各組合員が平等の議決権を有すること、4)組合員に対し利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款で定められていることの要件を満たすものが協同組合ととらえられている(独占禁止法第22条及び第8条参照)。
以上の協同組合についての包括的な規定を受け、一人一票の原則(農協法16条)、加入・脱退の自由(農協法第19条、20条)、配当の制限―利用分量配当と出資配当の利子制限(農協法第52条の第2項)と独占禁止法の適用除外(農協法第8条)などが法律上明確にされている。
また、税制面においても協同組合は特別の優遇措置がとられている(法人税―普通法人が所得の23.2%なのに対して協同組合は20%―平成24年4月以降、普通法人の税率が下げられてきており、その差が縮まってきている)。
付言すれば、今時農協法の改正前の規定では、JA運営の根幹として、旧農協法第8条で「組合は、その行う事業によって、その組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない」とする有名な非営利宣言規定があった。
だが、2015(平27)年の農協法改正でこの規定は削除され、代わりに第7条として「組合は、その行う事業によってその組合員及び会員のために最大の奉仕を目的とする」となり、同時に第7条では、農業所得の増大への最大限の配慮、農畜産物の販売等における高い収益性の実現を謳い、それによって投資・事業分量配当の確保をはかることなど、営農・経済事業については、営利追求も可ともとれる内容を規定した。
今回の農協改革では、競争を第一義とし協同組合否定の考えが強いが、元来、国としても協同組合の存在を認めており、協同組合を否定するのではなく、むしろその役割を積極的に評価し、その特性を生かした経済・社会運営が求められているというべきである。
他方、協同組合の存在が法的に認められているといっても、それだけで協同組合は安泰という訳ではない。協同組合という組織に安住し、それぞれの協同組合で経営努力が行われなければ、協同組合は生き残ることはできないし、経済的・社会的役割を果たしていくことはできない。このことは会社など他の組織についても同様である。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日