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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2019.03.21 
【近藤康男・TPPから見える風景】日米貿易交渉、自ら袋小路に向かう日本政府一覧へ

◆異形の大統領が世界中を相手に仕掛けた7つの貿易戦争

 異形の大統領トランプ氏は、17年の大統領就任以来、世界を相手に7つの貿易戦争を仕掛けてきた。(1)17年1月23日のTPP離脱、(2)韓米FTAの再交渉(18年9月30日合意署名)とNAFTA再交渉(18年11月30日合意署名)、(3)一連の通商関連法発動の発表に始まる中国狙い撃ちの通商法301条(18年3月22日)と通商拡大法232条=鉄鋼25%とアルミ10%の追加関税(18年3月23日)+自動車関連の追加関税25%検討、(4)対EU貿易交渉、(5)日米欧共闘でのWTO改革での対中牽制と、対EU含む9ヶ国とのWTOを舞台とする提訴合戦、(6)対中貿易戦争とハイテク覇権争い、そして(7)日米貿易交渉だ。

 

◆韓米FTAとNAFTAで、望む"TPP以上"と望む"TPPマイナス"を獲得したトランプ氏

 韓米FTAは、朝鮮半島からの米軍撤退の脅しで、18年3月に実質決着し9月30日に合意署名した。
 カナダとメキシコの粘り強い抵抗を押し切って、17年8月から9回を超える閣僚級協議の末、集中的な協議でメキシコ・カナダそれぞれを撃破し、9月30日に3カ国合意、11月30日合意署名に漕ぎつけた。
 詳細は省くが、共通するのは数量規制(韓国からの鉄鋼、加・墨からの車関連)と為替条項。更に米国からの輸出条件の緩和(韓国産品輸入関税撤廃猶予期間の延長、加・墨との原産地規則と関連する条件の引き上げなど)や特に新NAFTAで著しいブロック経済化やバイアメリカン的な性格が目立つ内容だ。
 新NAFTAでは、自動延長条項撤廃やISDS条項の実施的除外、そして非市場経済国とのFTA交渉の米国への説明責任なども加わった。

 

◆米中貿易協議での対中国の輸出拡大・為替での合意

 中国の"構造的問題"での交渉は難航しているが、これまでに6年間での1兆ドル超の米国産品の対中輸出拡大や為替問題では合意したとみられている。

 

◆対EU対日本の貿易協議は、"TTP越え"と"TPPマイナス"獲得への道

 EUはともかく、既に日本は"これまでの経済連携協定が限度"と交渉前から白旗を掲げ、実質的に"TPP越え+日EU・EPA越え"を受け入れている。米国は現在2つの多国間協定と12ヶ国とのFTAにより20ヶ国とFTAを締結しているが、中国・EUが加われば、物品貿易だけでも今まで以上に輸出拡大の可能性を得ることになるし、貿易相手国としての規模は圧倒的だ。一方、米国とFTAを締結していないTPP参加国はブルネイ・マレ-シア・ニュ-ジーランド・ベトナムだけで、TPP復帰の意味は小さい。
 そして、対日と対EU交渉目的には、新NAFTA(為替は新韓米FTA、米中にも)にある為替条項と非市場経済国とのFTA交渉の米国への説明責任も含まれ、同様にISDSは含まれない。
 これではトランプ流の"America First"にとってTPP復帰は不利益でしかないのは明白だ。

 

◆トランプ再選無かりせば、ならTPP復帰はあるのか?

 それでは、トランプ以外の大統領ならどうだろうか?まず民主党で名乗りを挙げている候補は押しなべて"TPP的なもの"には忌避感が強いし、前回大統領選で民主・共和双方の候補ともTPP反対を掲げたように、米国社会一般にもTPPを懸念する声が強い。
 更に言えば、米国は未だに原協定(TPP12)の署名国であり、復帰すればこれまで獲得、あるいは今後獲得すると思われる"TPP越え"と"TPPマイナス"の多くをメキシコ・カナダ・日本を含むTPP参加国と交渉し直すか失うか、あるいは原署名国としてTPPをそのまま受け入れるか、という状況が待っていると想定される。米国はこれまでもcertification processという一方的な卓袱台返しをして合意署名後に協定内容を変更させてきた。しかし、トランプ以外の大統領が、果たして勝手に離脱した後4年も過ぎてから、原署名国の立場で卓袱台返しという行儀の悪いことをするだろうか?
 日本政府は、トランプに倣って、首脳合意や"これまでの経済連連携での約束が限度"などという白旗を卓袱台返しをするか、あるいはEUに倣って、場合によっては交渉中断くらいをすべきだろう。
 少なくとも、CPTPP(TPP11)第6条の見直し条項発動を各国に呼びかけ、CPTPPと(決着すれば)日米2国間協定並立により元の12ヶ国のTPP以上の市場開放につながる「牛豚肉の緊急発動制限の発動条件」と「乳製品の低関税枠」くらいは、米国不在の実態を反映するものに変更させるのが論理的な道と考えるべきだろう。

 

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