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【三石誠司 宮城大学教授】

2019.03.29 
【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(125)激増する中国のコメ在庫一覧へ

 1年は早い。気がつくと瞬く間に季節がめぐる。3月は卒業式や定年退職の季節であり、昨日は職場で送別会が開催された。その際、色々な話をしたが、種まきの時期などの話をきっかけにふと気になりコメの在庫について確認してみた。

水稲 以前の職場で過ごした頃は毎年、生産調整という名の「減反」が当然のように行われていた。本格的な生産調整の開始を1970(昭和45)年とすれば、その後の完全終了2018(平成30)年まで、約半世紀にわたり継続した政策である以上、筆者のように農業団体勤務が20年程度の人間は、ちょうどこの政策のど真ん中を経験したことになる。
 大学で教える立場になり驚いたことのひとつは、日本のコメの全生産量がどのくらいなのかということが、意外に知られていない点である。わが国のコメ生産量がピークの1426万トンに達した1967(昭和42)年に小学校に入学した筆者は、その後、中学生か高校生の頃、どこで読んだか記憶にはないが、潜在生産量は約1600万トンというような記述があったことを覚えている。
 今では信じられないような話かもしれないが、コメの在庫が積み上がり、「古米」、「古々米」、「古々々米」...などいう表現と同時に食管会計(食糧管理特別会計)の赤字が連日のように新聞報道を賑わしていたこともある。

 

※  ※  ※

 

 話は変わるが2019年3月の米国農務省見通しによれば、世界のコメ生産量は精米ベースで年間約5億トンである。需要は地場消費が大半で、国際貿易市場に流れてくるのは4785万トン、つまり1割弱である。言い換えれば、コメの大半は良く知られているように国内消費向けであり輸出向けではない。期末在庫は約1.7億トンとされている。

 興味深い点は、この約1.7億トンのうち、7割弱に相当する約1.2億トンが中国にあることだ。過去10年以上にわたり、毎年中国のコメ在庫は積み上がり、現在では世界のコメ在庫の7割を擁するまでに増加している。この結果、5年前には世界のコメ在庫の56%であった中国のコメ在庫は現在では69%にまで上昇したのである。

世界と中国のコメ在庫数量の推移


 中国当局は当然、この蓄積したコメ在庫を効率的に消化しようと考えるであろう。食品需要だけでカバーできないとなれば、次に向かうのは飼料用、そして工業用の需要開拓である。前者は飼料用米、後者はバイオエタノールとなれば、「歴史は繰り返す」とまでは言わなくてもどこかで聞いたような話である。
 中国国内のコメ価格も当然考慮しなければならないし、コメの代替となる可能性のある穀物、つまり輸入トウモロコシの価格についても検討が必要となる。何故なら、現在の中国は年間約2.6億トンを生産する世界第2位のトウモロコシ生産国であり、同時に約500万トンのトウモロコシを輸入しているからだ。このあたりは中国の農業政策に詳しい専門家による詳細な分析を期待したい。
 
 さて、累積する中国のコメ在庫が穀物の国際貿易市場にどのような影響を与えるかについてはまだまだ憶測の域を出ない。ただ、明確なことは中国には日本の年間コメ生産量の約15倍に相当する在庫があること、それは世界のコメ在庫の約7割に達していること、そして、この膨大な在庫数量ですら中国の年間コメ需要(約2.6億トン)の4割強でしかないことである。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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