【JCA週報】コミュニティ協同組合としてのJAの可能性2019年5月14日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
第5回目は、「コミュニティ協同組合としてのJAの可能性」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年春号に寄稿いただいた、龍谷大学農学部 石田正昭教授の論文冒頭部分を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年春号「コミュニティ協同組合の可能性と課題」
コミュニティ協同組合としてのJAの可能性
石田正昭 龍谷大学農学部教授
1.コミュニティ協同組合はいわば「防貧活動」
イタリアのプーリア州で「コミュニティ協同組合」が法制化された。コミュニティ(地域社会)の、コミュニティの構成員の協働による、コミュニティの発展のための協同組合である。この法制化の背景には、国家・地方財政がひっ迫する中で、相互扶助や近隣相識の関係を基礎にして、コミュニティの構成員たちが自らの暮らしを守るための協働事業に乗り出すことに社会的・経済的・文化的意義を見出したことが挙げられる。
わが国の農村もイタリアのそれと抱える状況はほぼ同じである。国家・地方財政のひっ迫と地域インフラの後退のもとで、人口減少・高齢化が急速に進行している。とりわけ被災地や条件不利地では「人が取り残される」だけではなく、「農地が取り残される」という事態も起こっている。
しかし、協同組合の歴史が教えるように、取り残された人や農地を救うといった、いわば「救貧活動」に取り組むことでは真の成果は上がらない。人や農地が取り残されるのを防ぐといった、いわば「防貧活動」に取り組むことが重要である。本稿の目的は、JAがこの種の「防貧活動」の主体として、あるいは「防貧活動」に取り組むコミュニティの構成員たちを支援する主体として機能しているかどうか、あるいは機能するためにはどのような条件を備えることが必要なのかを明らかにすることである。
もちろん、わが国においても「コミュニティ協同組合」の法律や条例を求める運動を展開することは重要である。しかし、彼の地は彼の地、此の地は此の地であって、法律や条例はなくてもほぼ同様のことは行えるし、実際に行っている。このような基本的認識のもと、以下ではわが国の農村におけるコミュニティ協同組合を「コミュニティの構成員によって組織される協働事業組織」以下コミュニティ・ビジネス)としてとらえ、その動向を検討するとともに、それとJAとの関係を論じていきたいと思う。
以下、2ではイタリアで制定された「コミュニティ協同組合に関する規定」を紹介し、3ではイタリアにおいてコミュニティ協同組合が法制化されるに至った経緯を説明し、4では利用協同組合であるJAがコュニティ協同組合の要件を満たすかどうかを検討し、5ではJAが果たすべき最も重要な役割はコミュニティ・ビジネスを支援するという中間支援組織としての役割にあることを明らかにし、6では中間支援組織としてのJAが具備すべき条件を提示する。
なお、わが国の協同組合法制の現状にかんがみて、コミュニティ・ビジネスの組織形態はこれを問わないこととする。具体的には、農事組合法人、企業組合、株式会社、特定非営利活動法人、任意団体のいずれであってもよいこととする。
(以下 略)
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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