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【坂本進一郎・ムラの角から】第8回 日本の農政はどうなっている!(下)2019年5月15日

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【坂本進一郎】

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★2003年 学生は美輝一人になったので、楽になったかと思って点検したら、逆に貸し越しと短期借入金は500万円増となっていた。冷害と減反のせいだろう。
★2004年 今年は忘れられない年となった。台風15号、16号、18号が連続してやってきて、そのうち15号はものすごい勢いを保ったまま天王町方面の海上から北進し干拓農地に海水の飛沫をまき散らしながら突き抜けていったからである。
 従って、干拓地の南であればあるほど、被害はひどかった。私のところは中程度の被害で終った。ところがやれやれと思っていたところ、今度は18号が西(日本海)の方から飛沫をまき散らして行った。一回だけならこんなに被害は大きくならなかったであろうに、これで私のところは600万円があっと言う間に台風で吹き飛ばされてしまった(大潟村全体で40億円、つまり一軒当たり1000万円の被害)。このため災害資金600万円を借りた。
 この頃講演・原稿の依頼がピタリとこなくなった。もう農民は元気をなくしたのだろうか。
★2005年 戦車並みの足回りのモロオカトラクター(中古)購入。資金繰り相変わらず苦しい。機械化貧乏のせいか。
★2006年 政府は品目横断的安定対策に名前を借りた農民リストラで、基幹産業である農業を捨てようとしている。つまり棄民政策だ。農民側もこれに対して何もしないので、裸で寒風の中に立たされているようなものだ。
★2007年 米価暴落(なんと1俵1万1000円!)で資金繰りは苦しく、考えた末建更共済を担保にお金を借りた。あとは借りる方法なく、米の産直を増やすしかない。10月15日NHKはライスショックを放映。そこに私も登場させられた。あとで多くの人から「見たよ」と声を掛けられ、どういうわけか産直米も売り上げ増えた。
★2008年 依然薄氷を踏む経営状態だ。もう借りるところなく小規模企業共済見合い借り入れを限度額いっぱい借りた。すでに限度額にぎりぎり借りているので、80万円しか借りられなかった。籾摺り機も壊れその借り入れもあった。借入金が多く、利息返済が150万円というのがこの数年続いている。これを早く何とかしなければならない。
★2009年 長期借入金が1000万円。依然として自転車操業は続いている。資金繰りを苦しめているのは自脱コンバインを購入したことと台風災害資金返済のせいだ。来年になれば返済のピークが来るが、そこを乗り越えれば明るい未来も来るであろう。そう自分に言い聞かせている。
★2010年 粒一の結婚式参加費用に70万円、支払利息170万円、自家用車両費150万円。大きなところで出金が目に付く。
 今年はまれにみる凶作。戸別所得補償の補填金で何とか持ちこたえることができた。
★2011年 官有地に立っているハウスは撤去せよとの土地改良区の達しで解体。田んぼを潰してハウスを建てる。これに360万円かかった。思わぬ出費だ。入植者の密告らしい。ところが水田活用交付金130万円、戸別所得補償(固定部分)130万円、同変動分130万円、農地水交付金(県)85万円、それに小規模企業共済満期260万円入金。助かった。ところが面白くないことに、農協にハウス資金を貸してくれと頼んだところ、今までの安い金利の借入金を全部繰り上げ償還させられ、強引に金利3.8%で4000万円を貸し付けられた。結局これで50万円利息を余計払わされたのである。農協の高利貸めと思った。
★2012年 依然として利息200万円、長期借入金200万円返済が経営を窮屈にしている。早くこの二つを何とかしたい。
 美輝の結婚式参加費用に50万円かかった。建て替え払いしていた美輝の高校の奨学金(毎年15万円)は完済した。
 12月前立腺手術のため入院(―13年1月)。手術手遅れ、あるいは治療ミス(担当医師佐藤敬悦)と言っていいのか導尿棒で膀胱の小便を抜いている。
★2013年 今年は入院に始まり入院に終わった感あり。8月に鬱病で入院。その後病院通いが頻繁であった。魁新報で『シリーズ・時代を語る』を本にしてくれることになり、大和田氏たびたび来る。
★2014年 今農民は三重苦の中にある。我が家もその一人である。三重苦とは米価暴落(なんと1俵8500円!?)、1993年のWTO決着(ブレアハウス合意)によるコメの強制輸入。この輸入量は何と国内生産量の1割に相当する77万t。この膨大な輸入量が生産調整強化、米価暴落の一因ともなっている。三つ目の苦しみは大潟村農協の貸付利息が3.8%と高金利なことである。例えば4000万円の経営資金借入返済をこの4年間に元利1500万円も返済したが、高金利ゆえ借入金の返済に追い立てられた。しかし、借入返済に追いつかず昨年夏ころ離農を決意しなければならないかもとふと思ったこともあった。
 この話を昌弘にしたところ、どこで情報を仕入れたのか5年後には離農者が沢山出てくるのではないかとのこと。この話を聞いて思い出したのは、1929年のアメリカ大恐慌を境に、没落農家と大規模農家への上昇農家にと二極分化したことである。
 今、坂本農場に余裕が生じたのは日本政策金融公庫が、利率0.7%、償還25年のスーパーL資金を貸してくれたからである。まさに捨てる神(大潟村農協)あれば、拾う神(日本政策金融公庫)ありである。
 では三重苦の中でどうすればいいのか。それにはまず上述のように外部条件を整えることである。次は内部をどうするかだ。今年の産直販売でも示唆されたのは一つの大きな方法は産直であろう。例えば今年カントリー公社に収めた約10haのコメ代金(生産調整分も含む)は900万円、一方約4ha の産直のコメ代金は700万円(net)。ここに生き延びる道が示唆されているように思う。
★2015年 今年の我が家の三大事件はみほ子の子宮がん入院(10月29日手術)と、私の脱腸での入院(12月18日)、日本政策金融公庫からの借入だろう。
 日本政策金融公庫には5000万円借入を希望したが農協が借入金ゼロなのにヘドロ田8枚すべてに担保権を設定しており、砂地3枚しか担保に提供できず、担保不足で4490万円の借り入れとなった。このお金で農協借り入れの経営資金2926万円、貸し越し1532万円の合計4458万円(いずれも金利3.8%)を返済した。これで金利140万円が安くなった。以前から念じていた金利額に及ばないが140万円とは言えこれで負担軽くなって、離農しないで済んだ。

※4490万円×0.038-4490万円×0.007=170万円―30万円≒140万円

 

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