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コラム:リレー談話室・JAの現場から

【藤井晶啓・日本協同組合連携機構常務理事】

2019.05.24 
【リレー談話室・JAの現場から】対話できていますか 組合員の声を2倍聴く一覧へ

◆対話にならない会議

 会議において膨大な資料をもとに長時間説明を受け、最後に「忌憚なきご意見を」と言われても、なかなか意見は出るものではない。しかし、意見が皆無だから参加者が無条件に賛同したわけはなく、休憩中のタバコ部屋や帰り道でいろいろと本音が出るのが日常茶飯事だ。その建設的な意見を活かせないのはもったいないと思うことが少なくない。かように対話をすすめるのは本当に難しい。
 今、JAグループがすすめている組合員との対話運動だけに留まらない。日常的な職場内や家族との関係で対話ができているか、と問われると我ながら全く自信がない。どうすれば対話できるのか、改めて考えたい。

 

◆人の心にある鏡

 よく、会話の中で相手の話に「でも」で受け答える人がいる。ご当人が異なる意見を持っているからだろうが、こちらが一生懸命に伝えたのに、「でも」と言われると話は前にすすまない。ましてや対話はディベートのように勝ち負けではない。正論で勝っても、負けた人には否定されたという負の感情が残る。
 人には承認欲求がある。他人から認められたいし、否定されるのは嫌だ。そのためのアンテナとして人の心には鏡があるという。人間は鏡のように相手から受けた感情と同じ感情を相手に返そうとする。相手から好かれるとこちらも好意を持つし、相手が反発するとこちらも受けた感情を反射する。相手が好意をもっているか否かに人は敏感だ。
 対話は人が安心して話ができる空間、場であることが前提となる。安心とは相手が自分を受け入れていること。そのためには、まずは自分が相手を受け入れることだ。

 

◆ライフスタイルの違い

 人の心に鏡があるとはいえ、人にはどうしても馬が合う、合わないという相性がある。
 アドラー心理学ではその人独自の思考や考え方の傾向をライフスタイルと呼び、2つの軸で4つの事象に分けて説明する。縦軸は対人関係を優先するか、課題(コト)達成を優先するか、横軸は能動的か、受動的か、である。
 4つの事象は、対人優先で受動的な「誰にも好かれたい人」、対人優先で能動的な「リーダーになりたい人」、課題達成優先で能動的な「優秀でありたい人」、課題達成優先で受動的な「安楽でいたい人」に分類できる。
 ライフスタイルによって苦手なことが違う▽「誰にも好かれたい人」は嫌われるのが嫌なので言動が変わりやすい▽「リーダーになりたい人」は自分より上に立たれることが嫌で、自分がある分、まわりへの配慮が足りない▽「優秀でありたい人」は自分が努力家であるために無意味な時間を嫌い、まわりに合わせることができず一人で抱え込みがちだ▽「安楽でいたい人」は苦労が嫌いなので、トラブルを避ける努力はするが、それ以上はしない。
 人のライフスタイルを変えることは相当に難しい。ライフスタイルが違うという多様性にこそ意味がある、と考えて受容するしかない。

 

◆耳は二つ、口は一つ

 喋ってスッキリした、という経験はないだろうか。会話した後に満足度が高く充実感があるのは「話した割合が高い人」だ。会話において相手が満足し充実感をもってもらうコツは、自分が話す2倍だけ、相手の話を熱心に聴くことだ。それを古代ギリシャの哲学者ゼノンは「耳は二つ、口は一つ」と言った。
 自分に関心をもってもらうとうれしい。逆に、いくら説明しても分かってもらえないのは大変さびしい。自分のことをわかってほしいという感情にこたえるよう、対話ではまず「聴く」ことだ。
 ふりかえって職場の会議で、上席者ほど多くをしゃべるという「耳が一つ、口がたくさん」になっていないだろうか。我ながら耳が痛い。
 同様に、対話運動がJAからの一方的な自己改革の説明になっていないだろうか。組合員はJAに意見を言いたいのだ。組合員が我がJAとしての参加意識を得るためには、JA側は「耳は二つ、口は一つ」の気持ちで、まず組合員の声を2倍聴く。そしてその声をフィードバックして組合員・役職員がみんなで考える。そのような対話がすすむことを願ってやまない。
(藤井晶啓 日本協同組合連携機構常務理事)

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