【熊野孝文・米マーケット情報】コメの魅力伝える専門展示会・第1回が開催される2019年7月9日
先週、第1回お米産業展がパシフィコ横浜で開催されたので行ってきた。お米の魅力を伝える専門展示会と銘打っているだけあって、新品種から機能性を持ったコメ加工食品まで様々な商品が展示・紹介されていた。
その中のいくつか紹介すると、ユニークな商品としてもち玄米で作ったチーズというものがあった。この商品はもち玄米を米粉にしてそれに酒粕と油を加えてできたもので、試食してみるとチーズのような匂いと味がした。加熱するともち米だけに伸びが良くモッツアレラチーズのようになる。 この商品のウリは価格がチーズよりも安いことと乳製品を使っていないためグルテンフリーを謳えること。グルテンフリーを謳った商品ではライスグラノーラや発芽玄米をパフ化した商品、コメを原料にしたパスタなど多くの商品が袋に「グルテンフリー」を大きく表示して紹介していた。
より簡便性を追求したコメ加工食品ではレンジ対応のパックご飯も紹介されていた。この商品は袋ごとレンジに入れると3分でご飯が食べられるという商品で、長期保存が可能なため災害時の非常食にも向いているという。この他、大手牛丼チェーンが新発売した金のいぶきを使った牛丼缶詰も展示されていた。金のいぶきは胚芽成分が多いことから栄養価が高いという事もウリになっている。逆にタンパクを摂ってはいけない人のために低タンパクごはんのパックライスや低糖質米ごはんという機能性の高いコメ加工食品も紹介されていた。冷凍米飯では離乳食用としてごはんにトウモロコシとサツマイモを混ぜて甘みを出した小さなおにぎりも展示されていた。この商品はこの会社に勤務する子供のいる女性社員が開発したもので、育休中に離乳食として添加物や砂糖を含まない食品が欲しいと自ら考案したもの。
パックご飯では、玄米に小豆や大豆を加えたやわらか玄米ごはんというものもあった。この商品を作っている会社は、女性をターゲットにマスメディアに露出度を高めた結果、一般的なパックご飯に比べ販売価格が2倍以上するにも関わらず、売れ行きが好調で昨年茨城県に月間150万食が製造できる工場まで作った。
セミナー会場では「おにぎりの魅力とビジネス」についての講演会もあった。講演者によると人気のテレビ番組で豊島区のおにぎり店を紹介したところ翌日にはその店でおにぎりを買う人の長蛇の列が出来て6時間待ちになったというエピソードやコンビニで販売されているおにぎりは年間60億個にもなり、1人年間48個食べている計算になり、一大産業になっていることや、海外ではドイツでおにぎり店舗をオープンしたところ毎年5割以上の伸びで、おにぎり製造工場を作り、今ではBtoBビジネスに業態を転換させたという事例やドーハでの展示会ではおにぎり1個1500円でも売れたといった事例を紹介、世界中でおにぎり店が展開される時代になると言っていた。海外の人はおにぎりを知らないが、それを知るきっかけは日本のアニメで、おにぎりを食べるシーンが出て来るので、展示会場等でおにぎりを出すとそれがアニメにでてくる食べ物だったのかとわかる。ミラノ万博では、日本のコメを炊いたごはんでおにぎりを作るというイベントを開催したところ、ごはん粒が手にくっつくのが面白いらしく、その模様をSNSで発信され話題になった。
国内では地域活性化の一環として南魚沼の限界集落を訪れた際、そこに住んでいる方はここには何もないと言われていたが、観るとミョウガがいたるところに自生しており、これを使ったおにぎりを作ったことなども紹介した。ビジネスとして考えた場合のおにぎりのメリットは小スペースで火を使わなくても簡単にでき、しかも様々なバリエーションのある商品が作れるとし、干物店がはじめたおにぎり店の事例も紹介した。ただ、誰でも簡単におにぎりは作れるが、おいしいおにぎりが誰でも作れるわけではない。それはおにぎりが冷めた時に食べることを前提にした世界でも珍しい食べ物で、それを出来るようになるには優しく握ることがコツだとした。さらには食育のコンテンツとして大手家庭用衛生商品メーカーとのコラボでは、おにぎりを握るには必ず手洗いをしなければならず、おにぎりがコミュニケーションツールにもなり、介護施設でなどどんな人にも伝わりやすいとした。
講演会ではワシントンから来たという参加者が質問するなど、おにぎりを通してコメの可能性や世界への広がりを実感できる講演会で、展示会場でのコメの機能性食品やこれまで考えられなかった用途への商品開発の状況がわかり、まさしくコメの魅力が伝わる展示商談会であった。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日